学ぶ。みがく。変わる。
HOME 育成のプロに聞く!人材育成とは

育成のプロに聞く!人材育成とは

2016.11.01

コミュニケーションを追及するうちに
様々な専門スキルを学ぶことに(前編)

アドット・コミュニケーション株式会社 代表取締役
一般社団法人日本アンガーマネジメント協会理事
日本アンガーマネジメント協会認定アンガーマネジメントコンサルタント
戸田久実氏

「コミュニケーション」を軸として、様々なスキル、専門分野を取り入れた研修やセミナー、コンサルタント活動を行う戸田さん。多角的な視点からの的確な指導、理論を実践に落とし込むプログラム内容には定評があります。20年以上にわたり講師を務められてきた戸田さんの経歴や、求められるコミュニケーションスキルの変容など、広くお話を伺いました。前・後編でお届けします。

文/山岸美夕紀 撮影/榊智朗

――戸田先生は長年にわたり、研修講師のスペシャリストとして第一線で活躍されていますが、講師業をはじめられた最初のきっかけをお教えください。

大学卒業後に、民間企業で営業職や社長秘書などを務めていたのですが、縁あってあるコミュニケーションの講座に通うことになったんです。そこで認定インストラクター資格を取得し、土日や有給を活用しながら先生のアシスタントを務めたり登壇のお手伝いをするようになる中で、たった数時間の研修であっても受講者が何か気づきを得て変わっていく姿を目の当たりにして、講師という仕事の面白さを感じるようになったんですね。

その後、結婚して地方への移住をきっかけに民間企業を退職したのですが、出産・育児を経て仕事復帰をする際に、民間企業に勤めるという選択肢ではなく、研修講師という道を選びました。

――コミュニケーション全般に関する様々な知識やスキルをお持ちですが、最初はどのようなところからスタートされたのでしょうか。

交流分析や心理学など広く学びましたが、当初、集中的に学んだのがアサーティブコミュニケーションです。アサーティブの直訳は、「自己主張する」なのですが、アサーティブコミュニケーションとは、「相手も自分も大切にしたコミュニケーション」。年齢や立場が違おうとも対等に向き合って、率直に正直に自分の伝えたいことを表現でき、相手の話しにも耳を傾けながら問題解決に向けて話し合うことができる、というものです。

私がアメリカ発祥のこの考え方に出会ったのは20年ほど前で、その頃ってまだ日本企業では縦の関係性が強かったり、グローバルでは「NOが言えない日本人」などと言われる時代だったんですね。コミュニケーション全般の研修やセミナーを行う中で、それらに関する相談を多く受けていたので、このアサーティブコミュニケーションの考え方が有効だと強く感じました。

アサーティブコミュニケーションのいい点は、伝え方の“スキル”はもちろんですが、「相手と心の中でどう向き合うのか」という“マインド面”にも触れているところ。

たとえば、「私なんかがこんなこと言っていいのかな」と自分を卑下したり、「なんとか相手をねじ伏せてやろう」という高圧的な心の姿勢でいれば、どんな言葉を選んでも、結局、言語外の部分で心の声が聞こえてしまいますので、こういった内面にもアプローチしていきます。

――その後、アドラー心理学も取り入れられており、著書も書かれています。

実はこのアドラー心理学に出会うきっかけを作ってくださったのが、お世話になっているクライアントの部長さんでした。ありがたいことに、「たくさんの研修を見てきた中で、あなたの研修は3本の指に入る。次のステージに進むためには、岩井さんの“勇気づけの心理学”を学ぶといいよ」とおっしゃってくださって。そこから、30年以上前からアドラー心理学の講座を開かれている岩井俊憲先生のもとで学びはじめたんですね。

アサーティブコミュニケーションの中に、相手と対等に向き合うためには自分自身を信頼することが大切だという「自己信頼」の考え方があるのですが、アドラー心理学の中にも「自己受容」という考え方があり、また、横のコミュニケーションを推奨しています。まさに、アドラー心理学の考え方を活用したコミュニケーションが、アサーティブコミュニケーションなのだと理解しました。

――2011年には、新設された日本アンガーマネジメント協会の理事に就任されていますが、どのような流れだったのでしょうか?

ひょんなことから現・協会代表理事の安藤と出会い、「アメリカから持ってきたアンガーマネジメントの協会を日本で作ろうと思ってるんだ。たぶん、久実さんがやっていることと重なるところがあると思うので、学んでみない?」という話になったんです。

そうしてアンガーマネジメントについて学ぶうちに、これがまさに今私が求めているものだと感じました。これまで、コミュニケーションの原理原則を学び、会話、説明、説得、クレーム対応、交流分析、アサーティブコミュニケーション、アドラー心理学など発展的に学んできた中で、これが、私が仕上げたいと思うものの最後のピースなんだなと。それまで私は、コミュニケーションの方法として「怒りを相手にうまく伝える話し方」などをお伝えすることはできたのですが、そもそも怒り自体を上手にコントロールするというアプローチを学ぶことができたのは大きな収穫でした。

そうして、現在は理事として安藤と共にアンガーマネジメントを広める役割を務めています。

――改めて、アンガーマネジメントの考え方・トレーニングがどのようなものかを教えていただけますか。

誤解されがちなのですが、アンガーマネジメントは「怒らない人間になる」方法ではありません。怒りを感じることは自然なことであり、怒ってはいけないのではなく、自分の怒りの感情を把握してうまく付き合っていくためのトレーニングです。

「あんな怒り方しなければよかった」もしくは「あのときちゃんと怒っておけばよかった」というように「怒りで後悔しないようになれる」ことを目指すもので、大きな柱としては、「怒りによる反射的、衝動的な行動を抑える」方法と、「心の器を大きくする」長期的な心理トレーニングの2つになります。

アメリカでは、以前より司法などの場でも取り入れられていて、ジャスティン・ビーバーやチャーリー・シーンほか多くの著名人がトレーニングを受けていることも知られています。

ここ10年くらいで、仕事に関してもプライベートに関しても怒りに関わる相談が非常に多く、皆さんがとてもストレスを抱えていらっしゃることを身をもって感じていましたので、現代の日本でも必要な考え方・トレーニング法だと思います。

――おっしゃるとおり、近年は「ストレス社会」などとも称されますが、生の声をたくさん聞かれる中で、それはなぜだと分析されますか?

これは私の主観になりますが、大きく2つあるのではないかと思っています。

1つは、スピード。連絡ツールが固定電話しかなかった昔と違って、現代では、飛行機の中でも海外でも携帯電話やメールなどで捕まえられますよね。そのように即座の対応を求められるうえ、人員を削減している企業も多く、一人ひとりの負担が大きくなる傾向にあります。

2つ目には、「ダイバーシティ」という言葉が浸透しているように、人々の価値観の多様化が進んでいることも考えられます。

たとえば、私が新入社員のころは「これは言わなくてもわかるよね」といった形である程度コミュニケーションが成立していましたが、最近は「言わなければわからない」どころか、「言ってもわからない」ことすら多いと感じます。

クレーム対応の研修で現場の事例報告を聞いていると驚くことが多々ありますし、NHKの「不寛容社会」という特集もありましたが、個人や組織の不祥事に過剰反応してSNSで一斉に攻撃する傾向もあり、人々のストレスのはけ口になっているパターンも見られます。

アンガーマネジメントの手法がもっと日本でも取り入れられ、怒りによるストレスを軽減でき、怒りをバネに建設的な行動を起こすモチベーションにできる方向に向かうことが理想ですね。

前編はここまでとなります。後編では、実際の研修依頼や、具体的な研修内容などについてお聞きします。

お問い合わせ

講師プロフィール

バックナンバー