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育成のプロに聞く!人材育成とは

2017.03.13

海外赴任のプラス面をお伝えすることで
不安をなくしモチベーションを高めてあげたい
(後編)

株式会社M'sコミュニケーション 代表取締役
大部美知子氏

JALでCAとして活躍し、パーサー職としてファーストクラスの客室サービス責任者を経たあと、接遇インストラクターとしてキャリアを再スタートされた大部さん。結婚、育児、ご主人の転勤に伴う海外生活といった経験のなかで培われた確かな国際的なコミュニケーション力、マナースキルを、研修にて提供していらっしゃいます。そんな大部さんの経歴や研修内容などをお聞きしました。後編をお届けします。

文/山岸美夕紀 撮影/榊智朗

――グローバル展開をする企業が増えるに伴い、『グローバルビジネスマナー研修』のニーズも増えています。しかし、グローバルなエグゼクティブ作法の研修を提供できる先生はまだ少なく、大部さんのようにきちんと本にまとめられ、体系立てて教えられる講師は非常に希少だと思います。

はい、ありがたいことに、『グローバルビジネスマナー研修』は、多くのご依頼をいただくようになっています。

この研修の前身は、私が居住している名古屋でお教えしていた「異文化コミュニケーション」です。名古屋地区というのは自動車関係やIT関係など海外進出をしている企業が多い土地柄なので、これから海外に赴任されるビジネスパーソンやその奥様向けに、赴任前研修のニーズが多くあったのです。

そのように、転勤先の国が決まっている場合は、その国に関する文化やマナー、しきたり、生活習慣についてお伝えし、自己紹介の仕方などをお教えすることができますが、近年増えている「世界のどの国に行っても通用するグローバルマナー」を教えてほしいというご依頼となるとなかなか難しく、内容については試行錯誤を重ねてきました。

――世界共通で通用するマナーといっても、各国で言語も文化もバラバラですものね。

そうなのです。世界は広く、国ごとはもちろん、ひとつの国の中でも地域ごとに大きく文化が異なることも珍しくありません。ですから、厳密にいえば「全世界共通のマナー」というものはないのです。ある国でいいとされているマナーがほかの国では悪いとされる、ひとつのジェスチャーが国によって正反対の意味を伝えることになる、ということも往々にしてありますから。

ただ、海外へ出る際に持っておきたい考え方、心構えというものはあります。それが、プロトコール(国際儀礼)というものです。

プロトコールとは、それぞれの国によって歴史や文化、宗教の違いがあることを認めたうえで、互いの習慣やしきたりの違いを尊重し合う国際間の交流基準、儀礼上のルールのこと。つまり、「国によって考え方や文化はそれぞれ違うんだ」「その国に行ったらその文化を知り、合わせることが必要なんだ」ということです。

その各国の文化というものは、「コンテクスト」「民族」「宗教」「歴史」などの要素が複雑に関係し合って生まれています。その国がどういった要素の組み合わせで成り立っているのかを知ることが、文化を理解するためには必要です。

――たとえば「コンテクスト」に関して言うと、日本人はかなり高いのだそうですね。

はい。コンテクストというのは、「コミュニケーションに言葉を必要としない度合い」のことですね。言葉を使わずに以心伝心でコミュニケーションがとれる文化を「ハイコンテクスト」、言葉できちんと気持ちを伝えないとわかってもらえない文化を「ローコンテクスト」と呼んでいます。

少し古いデータですが、アメリカの文化人類学者による1976年のデータでは、主な12の民族のうち、もっともハイコンテクストな文化を持つ民族は日本人とされています。そして、もっともローコンテクストな文化を持つ民族はスイス人だそうです。

どちらかがいい悪いというわけではなく、コンテクストの低い国であれば「言った言わない」を避けるために逐一契約書を交わすよう心がけたり、反対にコンテクストの高い国では言外に含まれた意味にも注意するなど、その国ごとの特色を知って対応しましょう、ということですね。

――日本人としてほかにも気をつけるべきことはなんですか?

タブー(禁忌)に触れない、ということも必須ですね。日本にはほぼ存在しないのでピンとこないかもしれませんが、外国ではその国ごとにタブーといわれるものごとが存在し、決してそこには不用意に触れてはいけません。それをきちんと知っておくことが必要です。

また、日本人は、英語を話すにしても何にしても100%きちんとやらなければいけないと思ってしまうところがネックのようです。

言葉も「道具」のひとつなんですね。プレゼンのシーンでも、完璧な英語を話せているのに、表情が硬くてハートが伝わらないというようなこともよく見られます。そうではなく、“正しい英語”ではなくてもいいので自分の言葉で話し、ジェスチャーや豊かな表情など交えることによって、気持ちを伝えようとすることが大切です。

日本の方は外国語を「書く」のはとても得意。ですが、実際に話すとなると失敗を恐れて尻込みしてしまいがちです。完璧ではなくて全然いいのです。研修によって、そのハードルを少しでも低くできればいいなと思っています。

――大部さんの研修は、コミュニケーション研修でもマナー研修でも、必ず個人目標を「PREP法」で書いてもらうというワークを入れられるのが特徴的ですね。

PREP法はプレゼンスキルですが、非常に簡単に身について国際ビジネスでもどこでも活用できるスキルです。日本人は、結論からズバリと話すことがあまり得意ではないですよね。PREP法では「結論」から話して、「理由」「裏付け」と続き、最後に「結論」を繰り返す。そして、自分の意見は分けて話す。これはどの国においても、コミュニケーションの基本となります。様々なスキルを学んできましたが、その中でもっとも簡単で汎用度が高いものではないかと個人的には思っています。

欧米人は、こういったプレゼンスキルを徹底的にトレーニングしています。日本でもこの部分をもっともっとトレーニングしたほうがいいですね。

――『グローバルビジネスマナー』プログラムを受講された方々の反響はいかがですか?

「海外に行くという気持ちのハードルが下がった」「事前に聞いたおかげで、ある程度の覚悟ができた」「何がわかっていなくて、何が必要なのかがわかった」といった声をいただいています。

実際に海外に行かれた方は、「心構えと準備ができていたので不安がなかった」「赴任することが楽しみになった」とおっしゃっていました。

――最近は、海外勤務をしたくないという人も増えていて、商社が採用に困っているという話も聞きますから、グローバル教育というものは非常に求められるプログラムだと感じます。

そうですね、海外に行った社員には会社はあまり関わることができず、その個人の資質にお任せになる部分が多いですよね。企業にとっても個人にとっても不安な点だと思います。

ですから、それをサポートできるよう、赴任される方には「こんな楽しいこともたくさんありますよ」というプラス面をお伝えし、モチベーションを高めてあげたいですね。

――大部さんは、これまでのご経験から「この会社には、このコンテンツを取り入れたプログラムが効果的だ」というアンテナが非常に高いと感じます。クライアントのご要望にストレートにお応えでき、それが「受ければかならず結果が出る」といった評判や、リピート率などの数字に裏付けられていると思っています。

とてもありがたいことに、現在もほぼすべて口コミで新規の依頼をいただいていております。お客様に恵まれているおかげで、研修内容をこちらにかなり任せていただけていて、ゴールさえぶれなければ山の登り方は任せてもらえる、といった形は、とてもやりがいがありますね。「どうすればより良くなるか」を考えてチャレンジするのが好きなんです。

――では最後に、今後の抱負・展望をお教えください。

本当に恵まれた講師生活を送ることができまして、これからは集大成の時期に入っていくべきかなと思っています。

今、研修業界では、スキルだけでなく自分の持っている経験を併せ、お客様のニーズに沿って提供する形が求められてきています。私も近年では、たとえば女性活躍推進の流れで「キャリアデザイン」というテーマのご依頼などを受けることも多くなりました。

前編でお話ししたように、結婚、名古屋への移住、子育て、アメリカ駐在、親の介護といった場面を経てきた中で、私自身は「キャリアをつくろう」などという意識はなく、試行錯誤の中で生きてきました。ですが、振り返ってみれば、「与えられたその環境の中でどうしたいか」という、選択というよりは「折り合い」という発想でつないできたように感じています。そういった経験や考え方を、私自身が道を決める際にも大いに役立ったコーチングスキルなどを交えてお伝えしていければ幸いです。

また、その私の培ってきた経験の部分などを後輩講師に引き継いでいきたいですね。

――大変勉強になりました。本日はありがとうございました。

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