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育成のプロに聞く!人材育成とは

2017.10.16

空気をつくるには言葉に頼らず
“プラスのアクション”を加えていく(後編)

コミュニケーション・プロデューサー
夏川立也氏

元祖・京都大学卒のお笑い芸人。桂三枝師匠に師事し、あの国民的長寿番組「新婚さんいらっしゃい!」で10年ほど前説を務めるなどの経験を経た後、起業家に転身された夏川さん。現在は年間200件以上の講演・セミナーの依頼を受ける売れっ子のビジネス・コミュニケーション講師です。ご自身の経験と心理学的な見地から分析された、その場の“空気”をつくる極意などについて伺います。前編に続き、後編をお届けします。

文/山岸美夕紀 撮影/榊智朗

――前編では空気づくりには“プラスのアクションを入れ込む”ことが有効だとお話しされました。

はい、“言葉7%”“言葉以外93%”というメラビアンの法則のとおり、コミュニケーションにおいて言葉がすべてではありません。

たとえば明石家さんまさんが昨日テレビで大爆笑をとっていた話を一言一句覚えて友人に話しても、同じように笑いはとれませんよね。

私が師事していた桂三枝師匠いわく「言葉に頼るな」。言葉というのは、言ってみれば“入れ物”みたいなもので、そこにどれだけの“言葉以外の情報”を詰め込むことができるのかが大事だということです。

それを実感してもらうために、研修では2人一組になってたとえばこんな小芝居をしてもらいます。まず、Aさんが消しゴムを落とすフリをして、Bさんが拾ってあげ、Aさんは感謝を伝える。このとき、皆さんほぼ例外なく「ありがとう」という言葉を発します。

次に、「言葉を使わずに感謝を伝えてみましょう」と言うと、みんなジェスチャーで手を合わせたり、頭を下げたり、握手を求めたり、頑張って伝えようとする。

最後に「では、今の両方を合わせてやってみましょう」と言って、言葉とジェスチャーを同時にやってもらうんです。すると、言葉に“プラスのアクション”を加えることではるかに思いが伝わることが実感できます。実に簡単で単純なワークですが、“言葉だけに頼らない”という感覚が体でわかり、腑に落ちるわけです。

――夏川さんの研修は、こういった小さなワークが多く盛り込まれているのが特徴ですね。

ほかにもこんなワークがあります。「おはようございます」「オハヨウゴザイマス」「おはようございます❤(ハート)」という3パターンのセリフを読んでもらいます。すると、私が「話し方のトーンを変えてください」などと指示しなくても、自然とカタカナのセリフはロボットのような話し方になるでしょうし、“ハート”のニュアンスを表現しようとトーンを変えますよね。「言葉に感情を込めましょう」と言われてもいまいちピンときませんが、「語尾に❤(ハート)を付けるイメージで話すと感情がこもる」ということが実体験でわかるわけです。

こういった、1分ほどの軽いワークを90分の講演や研修でも5個から10個も入れていきます。これは、身をもって体験してもらうのと同時に、「全員で一斉にプラスのアクションを起こしてもらう」ことで、場の空気づくりにも一役買うので、研修の場がどんどん盛り上がっていくのです。

――研修では、“空気”とはどういうものか、それをつくるにはどうすればいいのか、という土台を解説してから、一般的に使える実際のノウハウなどを展開されます。

はい。たとえば、「予測と期待の法則」という漫才の法則などは日常的に使えるノウハウですね。人は誰でも常に予測をしながら生きています。たとえば、「さあ帰ろう」と思ってオフィスのドアを開けたときそこがジャングルだったらビックリするでしょう。これは、「いつもと変わらず廊下があるはず」という予測が裏切られるからです。

人は、自分の予測をいい意味で裏切られたとき、「面白い」という感情を抱くようにできているんですね。

漫才でこんなネタがあります。「今日は寒いですね。こんな寒い日には、家に帰ってこたつにでも入って、かき氷でも食べたいね」「なんでやねん!」。

このネタが成立するのは、予測をいい意味で裏切っているからですよね。

お笑いではマイナスのことを言う芸もありますが、コミュニケーション、空気づくりという観点で見れば“プラスの言動”を取ることが望ましいんですね。

――なるほど、ビジネスシーンで予測を裏切るというのは、たとえばどんな例がありますか?

そうですね、実際にこんな猛者がいました。

名刺交換のシーンで「すいません、今、名刺を切らしておりまして……」と言っておいてから、「……代わりに、名前入りのボールペンをお配りしてるんですよ」と差し出す。これには「えっ?そうきたか」と意表を突かれてビックリしますし、印象に強く残りますよね。

一方、先ほどの漫才の中の「なんでやねん」は“共感の働きかけ”です。相手が思っていることを代わりに言うだけで、好感を持たれるというメカニズムが人にはあるんです。

これもコミュニケーションの場に応用できるのですが、たとえば誰かと話していて「今ちょっとわかりにくいと思われたかな?」と自分で感じたら、それをそのまま「すみません、今ちょっとわかりにくかったですよね」と言ってしまう。それだけで相手は「そうそう。この人わかってくれているわ」となる。こういうことを積み重ねていくんです。

この「予測の裏切り」と「共感」を使って実際に空気づくりを体験してみようということで、受講者に短い漫才を作ってもらうワークを行うこともあります。

――このほかにも、「緊張と緩和の大原則」「5つのSという方法論」など、たくさんのノウハウをテーマに応じてお話しされますが、研修の熱量に比例して、受講者の方々からの反響も非常に熱いものが多いですね。

会長や管理職など年配の方からは「自分の経験から“こうするといい”とわかっていながら、うまく部下に伝えられなかったことを、わかりやすく言葉にしてくれた」という感想をいただくことが多いです。

若い人からは、「笑いあふれるあっという間の2時間でした」「なるほど!と思える内容でした」といった声。それから、「今日の日のことを一生忘れません」という感想はシンプルに嬉しかったですね。

――それでは最後に、今後の展望をお聞かせください。

そうですね、モチベーションやコミュニケーションというものは、やはりいまだに感覚的なところが多い分野。これを、より分析して体系立て、ある程度、測定ができるようにしたいというのが野望です。

時代は変わっても、やはりface to faceのコミュニケーションはなくならないでしょう。そのコミュニケーションを改善する努力の方向性の一助とするため、「コミュニケーション能力」というものを客観的に測定できた方が、企業としても個人としても便利だと思うんです。

なかなか困難ではありますが、数値にするのは難しい「EQ(心の知能指数)」も、目に見える形に体系立てることに成功しましたよね。あのような形を参考にすれば、やれないことはないかなと。

「コミュニケーション能力」というざっくりしたものを、「話す」「聞く」「笑う」ほかどんな要素がどう絡みついているのか、一つ一つしっかりわけて分析し、誰もが「じゃあこの部分をちょっと改善しよう」とできるようになればと考えていて、現在、大学教授の友人たちを巻き込んで研究していこうと画策中です。

――大きな野望ですね! それが実現することを願っています。本日はありがとうございました。

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