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育成のプロに聞く!人材育成とは

2017.07.18

人の内発的な動機に働きかけることが
新たな企業の課題となっている(後編)

株式会社モリヤコンサルティング 代表
リーダーシップコンサルタント
守屋智敬氏

2万人以上のリーダーにリーダーシップを磨く研修を実施し、現場で起きている課題を解決する組織開発コンサルティングも数多く手がけてきた守屋さん。一昨年に独立した守屋さんが数年前から手掛けている、「アンコンシャス・バイアス」や「復興地岩手に学ぶ『リーダーシップ』研修」などについてお聞きしました。

撮影/榊智朗

――前編では、10年前といまでは企業の課題がガラリと変わっているというお話をされました。

はい。10年前までの時代は、企業の発展のために新しいものをどんどん取り入れていくことが課題でした。新しい技術を他社から取り入れる、新しい会社の仕組みを欧米のベストプラクティス(最適な実践例)から取り入れる、人材育成であれば新たなスキルをどんどん取り入れてゴールに近づいていくという発想がベースでした。目標管理や成果主義といったアメリカ発のマネジメント手法が多く取り入れられた例はその最たるものでしょう。

新たなものを取り入れること自体は方法として間違ってないとおもいますが、この発想はどうしても新たなものを加えていくというものなので、時間もお金もかかります。低成長が続く今の時代ではこの発想で課題を解決していくことがかなり難しくなってきています。何より、そうやって新たに取り入れてきた仕組みがだんだん制度疲労を起こしてきている現状を目の当たりにすることもあります。社員たちが新たに加わっていく様々な仕組みやルールによってがんじがらめになっているという現実です。

こうした時代に有効なのは、加えていくのとは逆に、なるべくシンプルに、なるべく抱えている荷物を減らして、モノではなく、無限の可能性を唯一秘めている “人”がイキイキと仕事ができる状況をつくることに着目することが大切だと思うんです。それは、どの企業も気づき始めているのではないか思います。

――新たに何かを加えていくのではなく、いまあるもの、特に人の可能性を最大限に引き出すという発想ですね。

「人の能力」以上に「人のあり方」が大切だと思います。

これまでは、社会の趨勢や市場を分析し、伸びている領域を見つけ、そのチャンスに入っていくというやり方でした。いわゆる「正解を見つけて行動を決める」という考え方です。これを「外発的動機」と呼んでいます。

しかしこれからは、自分のやりたいことを通していかに市場をつくっていくか、社会を変えていくか、という「決めたことをいかに正解にできるか」という考え方がとても大切です。つまり、「内発的動機」に働きかけることが企業発展のカギをにぎるということです。そのためには、社員がやりがいを持って周りに働きかけていき、その行動によって組織が活性化し、結果としてイノベーションが起きることにつながると思うんです。

外部環境によって動くのではなく、個人個人が「お客様に喜んでほしい」「仲間を大切にしたい」という想いを持って「そのためにどうすればいいか」ということを現場で考え、その結果として仕事の効率化や顧客満足を生んでいく。まさにこの「内発的動機づけ」、つまり個人がやりがいを持ちポテンシャルを最大化させるということが、これからの企業の課題なのだというのです。

――そうなのですね。守屋さんが近年取り組まれている「アンコンシャス・バイアス」のプログラムも、その流れに共通するものでしょうか。

はい。メンバーの内発的な動機を高めることを私が実施している「リーダーシップ研修」では特に大切にしています。

ただ、そうはいっても人はそう簡単には変われないし、そう簡単には自分からやってみようという意欲がわくものでもありません。号令をかけるだけでは人は動きません。そこで私が特に力を入れているのが誰にでもある「アンコンシャス・バイアス(無意識の囚われ)を知る」ということです。近年、この無意識の領域に目を向けるプログラムが世界的に注目を集めるようになってきました。

例えば、「シニアはパソコンが苦手」「最近の若者は根性がない」など、根拠なく人々の心に根付いている無意識の偏見が誰しもにあることに気づくことが大きな第一歩であり、その偏見が相手の存在価値を無意識に下げているということを知ることです。

気が利かない人は、自分は「気が利かない人」ということに気づいていません。気づいていたら気が利くはずです。気がついていない自分に気がつく、それがまさにアンコンシャス・バイアスのポイントです。そういう自分に「気づく」こと、つまり自己認知が大切なのです。個人の能力を十分に発揮する職場環境づくりにはかかせないプログラムだと確信しています。

――このプログラムのニーズは日本でも増えてきているのでしょうか? 

ご依頼は、昨年あたりから急激に増えてきました。ただ、アンコンシャス・バイアスのプログラム単体というよりは、「部下をもつ管理職向けのリーダーシップ研修」との組み合わせや、企業が抱えている課題のキーワードとしていま最も上がることの多い「働き方改革」「ダイバーシティ&インクルージョン」といったテーマに付随してのご依頼が多いですね。

このアンコンシャス・バイアスというのは、ベテランになればなるほど、年齢を重ねれば重ねるほど持っている可能性が高い傾向があります。これには、他人に対する思い込みだけでなく、「~しなければいけない」「~はどうせ無理だ」といった自分に対する思い込みも含まれます。それらに対して「本当にそうなのだろうか?」と改めて疑問を持ち、これまで「無意識」に続けていた自分のやり方を考え直してみる。たとえば、いままでの働き方を意識的に変えることで、個人の働き方改革につながっていくことにもなるものです。

――「アンコンシャス・バイアス」は、これからますます注目されるプログラムだと思います。加えて、守屋さんは「復興地岩手に学ぶ『リーダーシップ』研修」というプログラムも精力的に行われています。

はい。私自身も阪神淡路大震災のときにたくさんの人に助けていただいたというご恩があります。ですから、東日本大震災の際には会社を休ませていただいてボランティアに行き、その後も継続的に東北を訪れて様々な方とのご縁をつないできました。

その中で、大切な人を亡くし、仕事も家もお金も失ったという人々が、それでも希望をもって立ち上がり、周りの人々と共に仕事や街を立て直そうとする姿を見てきました。これこそが真のリーダーシップだと感銘を受けました。そして、実際に現地に訪れて学びの場として体験してもらいたいという使命を感じ、復興地東北の方々と共に立ち上げたのが「復興地岩手に学ぶ『リーダーシップ』研修」です。

参加される方は、40代~50代の部長以上の方が多いですが、皆さん非常に心に響くものがあるようです。参加された方々は口々に、「リーダーにとっての志がどういうものかを改めて強く理解できた」「決断しなければ前に進めないということを再認識した」「何のため?誰の為?かいま一度原点にたちかえりたい」といった、リーダーの本質を心から理解できたという声をとても多くいただきます。

――今の日本企業の現状と通じるものがありますね。この、危機的状況からどのように立ち上がっていくか、という。

そうですね、東日本大震災で甚大な被害をうけた場所に足を運び、復興地に生きるリーダーと出会うことによる学びは本当に大きいと思います。

ちなみに、このプログラムは法人企業むけの研修としてだけでなく、個人向けツアーとしても年に数回行っています。私は2015年の10月に独立したのですが、実は独立を決断するに至った目的のひとつは、このプログラム「復興地東北に学ぶ、いのちてんでんこツアー」を個人向けに行いたい、という想いがありました。やはり、会社の仕事の一環としてやるには時間的な制約がありましたので。

このプログラムは“リーダーシップ研修”と銘打ってはいますが、実際は、「生き方、働き方、あり方、ミッションをみつける」など、あらゆる人に有用なものだと思っているんです。

というのも、誰もが、自分の人生のリーダーであり、支援してくれる周りの人々はそのメンバーです。このように、リーダーシップという言葉は、幅広い意味合いを持っていると考えています。

――新たな道をどんどん開拓している守屋さんですが、今後の展望をお教えください。

「無意識バイアス」という人間の深層心理に着目して、リーダーシップを高めるお手伝いをしていますが、現場で起きている課題を解決する組織開発コンサルティングも引き続きどんどん行っていきたいですね。まだまだ過去のやり方に囚われて苦しんでいたり、自分の可能性を活かしきれていなかったりする企業の現場やリーダーは多いと思います。そうしたリーダーに、変わる勇気を培う支援をさらに続けていきたいです。

――本日はお忙しい中、ありがとうございました。

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