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育成のプロに聞く!人材育成とは

2017.12.01

「自分の価値観」を知ることが
リーダーシップを養う第一歩(前編)

ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト/Yahoo!アカデミア学長
株式会社ウェイウェイ代表取締役
伊藤羊一氏

東京大学経済学部を卒業後、新卒で日本興業銀行に入行し華々しい実績を残しながらも、家具・文具メーカーであるプラス株式会社の物流部門に転職された伊藤羊一さん。さらにその後ヤフー株式会社に転職し、現在はYahoo!アカデミア学長を務められています。そんな異色の経歴を持つ伊藤さんに、お話を伺いました。前・後編でお届けします。

文/山岸美夕紀 撮影/榊智朗

――14年ほど勤務された日本興業銀行から、オフィス家具・文具メーカーであるプラス株式会社へと転職されていますが、なぜ最初、物流部門に行くことを選ばれたのでしょうか。

そうですね、銀行出身ですと財務部や経営企画部へ行くのが一般的だとは思うのですが、それでは「物が動かない世界」しか知らないままになると思い、まず物流の現場を体験したいと考えたんです。そこで様々な経験を積み、新規事業開発やマーケティング、グループ内の事業再編などの担当を経て、2012年にヴァイスプレジデントに就任しました。

――プラスにご在籍中にはグロービス経営大学院で学ばれ、後にグロービスの講師にもなるなど精力的に活動されています。さらに、孫正義氏の後継者を発掘・育成するソフトバンクアカデミア国内CEOコースの第一期生として、卓越したプレゼン能力で年間1位の成績を修められました。

そのつながりで、ソフトバンクユニバーシティというソフトバンクのビジネススクールの講師も務めたのですが、そのころ、現在のヤフー社長である宮坂に「Yahoo!アカデミアという社内大学を立ち上げたのだが、その責任者になってくれないか」と打診されて。悩んだ末に引き受けることに決め、2015年4月にヤフー株式会社に転職しました。ですから、人材開発の仕事に携わるようになって、まだ2年半なんです。

もちろん、以前の会社で経営などに携わっているときにも人材については常に考えていましたし、グロービスやソフトバンクユニバーシティの講師としてキャリア・能力開発に関わってはいましたが。

というわけで、現在の私の活動は、Yahoo!アカデミアの学長、グロービスの講師、自社経営という、大きく3つになります。ただ、行っていることは同じ“人材育成”で、対象者が違うだけという形です。

私が行う「人材育成」の柱は3つあります。1つがリーダー開発、2つ目が事業開発、3つ目がコミュニケーション。

事業開発は、「伊藤さん、事業開発のサポートやってるの? じゃあうちでもやってよ」という感じでどんどん広がっていって、現在は、KDDIやIBM、三菱東京UFJ、朝日放送、東京都(ASAC)、経産省(始動)、Code Republic(east venturesとYJキャピタル)など様々なインキュベーションプログラムを、メンターやアドバイザーとしてサポートしています。

リーダー開発にしても、コミュニケーション、プレゼンなどにしても、自身がやってきたことが人に求められて、それに応えていった結果、知らず知らずのうちに仕事になっていました。

――最初から明確に「これをやろう」と目指してきたわけではないのですね。

そうなんです。振り返ってみると「いつの間にかここにたどり着いていたな」と自分でも不思議な感じがしますね。

ただ、職種としては全く違う会社を渡り歩いてきたわけですが、そもそも私の中では同じ感覚なんです。興銀やプラスでは“事業を通じて人々を幸せに”と思ってやってきましたし、今のヤフーでは“人材育成を通じて人々を幸せに”と思ってやっている。

事業を経営するのも人を育てるのも手法が違うだけで、「人を幸せにしたい」という根本の想いはまったく変わりません。

だから今この場所を選んでいると思うんです。逆に言うと、今やっていることを「そうじゃないな」と感じたときには、また違うところで仕事をするでしょう。

――そんな、伊藤さんご自身の豊富な経験をもとにした講演や研修を行ってほしいという依頼が後を絶ちません。

ありがたいことに、たくさんご依頼をいただいています。

学歴や職歴からは見えにくいかもしれないのですが、私は順風満帆な人生を歩んできたという意識は全くありません。麻布中学校から東京大学、日本興業銀行と進んでいく中で、常に優秀な人間たちに囲まれてコンプレックスだらけ。周りの人々と自分を比べてずっと劣等感を抱いていました。

銀行マンだった26歳のときには、「自分はダメな人間なんだ」とメンタルがやられて会社に行けなくなった経験もありました。

でも、そこをなんとか乗り越え、ひとつひとつの仕事でもがき続ける中で、ほかの人と比べるのは意味がないことなんだとわかってきて。ただ実際にそう思えるようになったのはここ5~6年、わりと最近のことです。

――ここ5~6年ということは、あの東日本大震災のご経験が大きかったのでしょうか? 震災当時、プラス株式会社の流通部門にいらした伊藤さんは、災害対策本部を設置してその陣頭指揮に当たり、混乱の中で被災地に必要な物資を届けることに尽力されましたよね。

はい、完全にその経験からですね。極限状態の中、自分の意志で次々と重要な判断を下していかなければならない。その判断のベースは、自分の“価値観”だったんです。

それまでは、自分で何かを考えるのではなく、会社員として、自分が属している組織のニーズや、上司の指示に沿って仕事をこなしていたんですね。もちろんその中でも自主性といったものはあるのですが、やっぱり無自覚に他人の(指示に基づく)人生を生きていた。

しかし、あの震災で、様々なことを自分で決めざるをえず、「自分の人生を生きるというのは、こういうことなんだ」と知ったんです。そこから、新しい人生が開けました。

みなさんには、そんな自分の経験から培ってきたこと、「誰でも、きっかけさえあれば変わることができるんだ」ということを伝えています。

「悩んでいたっていい」んだよ、と。でもちょっと前に進むために、講演や研修などを通じてきっかけをつかんでもらえればと思っています。

――伊藤さんYahoo!アカデミアでは、「スキル」はもちろん、今お話しされたような「マインド」を養うトレーニング研修に重点を置いているとお聞きしています。

そうですね。必要条件と十分条件のようなもので、スキルもマインドも両方必要です。ただ、スキルは勉強することで習得できます。身につけるまでに時間はかかりますが、方法論が確立されているのでやればできる、ということなんです。

ところがマインドの鍛え方というのはよくわからない。本を読んだりセミナーに通ったり、マインドフルネスで瞑想したり、みなさん思い思いに模索されているでしょう。

よくないのは、思考を停止させてしまうこと。そうではなく、私たちが行うプログラムでは、自分自身を見つめながら、マインドを鍛えるきっかけをつかんでいきます。

――そのマインド研修の大きな柱の1つが、弊社でも提供していただいている『Lead the self~自分を導くリーダーシップ研修』ですね。

リーダーシップを発揮できる人は、まず自分をリードできなくてはなりません。「Lead the People」の前に「Lead the self」が必要なのです。そこで、自分を深く知り、自分自身を掘り下げるためのワークショップを行います。

「自分が大切にしている価値観はなにか」「自分の譲れない思いは何か」「自分が何をやりたいか」を知ることが、リーダーとして大切な「強烈な意志」にも繋がるのです。

全員で同じことを言ったり、同じところに向かっていくのではなく、それぞれの個性・価値観を掘り出してそれを活かしていく方法を考える。まさに“みんな違ってみんないい”んです。

マインドは、スキルと違って、きっかけさえあれば一瞬で覚醒することができるものでもあります。気づいた瞬間から大きく変わることができる可能性を秘めているんです。

前編はここまでとなります。後編では、研修の内容などについてお伺いしていきます。

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