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育成のプロに聞く!人材育成とは

2017.08.01

企業のAIほかテクノロジーの導入は
2020年までの2年半が勝負(前編)

株式会社働きごこち研究所 代表取締役
ワークスタイルクリエイター
藤野 貴教氏

長年、企業の内外で“人の働き方”に携わってきた藤野さん。2007年に「株式会社働きごこち研究所」を設立し、これからの時代にマッチした働き方を提案する中で、AIをはじめとしたテクノロジーがこれからのワークスタイルに欠かせないツールとなることを確信したそうです。『2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方』を出版され、「人工知能時代の働き方」についての研修プログラムを持つ藤野さんにお話を伺いました。

文/山岸美夕紀 撮影/榊智朗

――長年にわたり“人が働く”ということに携わってこられた藤野さんが、近年「人工知能時代の働き方」をテーマに研究されるようになったのはどうしてでしょうか?

人の働き方を研究する中で、今後の私たちのワークスタイル、ライフスタイルにおいて、人工知能(AI)の存在は避けては通れないものだとわかってきたからです。インターネットやスマートフォンなどが一気に浸透したように、これからの仕事や生活にIoTや人工知能は欠かせない“人工知能時代”がすぐにやってくるでしょう。

インターネットやスマホの例でわかるように、世の中のすべてのテクノロジーは「生まれて5年から7年で人々の生活の当たり前になる」と言われています。今後の世界は間違いなくテクノロジーが引っ張っていく、それを「テクノロジードリブン」と呼ぶのですが、まさに今からの数年でビジネスの現場も劇的に変化していきます。

このAIの進化と世界におけるテクノロジーの潮流を知ったときに、私は不安よりも「これは面白い!もっと知りたい!」と感じました。以降、勉強会や人工知能学会に参加し、最先端のテクノロジーの流れを学び続け、研修やセミナーなどで皆さんにお伝えしています。

――AIなどのテクノロジーがビジネスの場に浸透するのは、遠い先の話しではないのですね。

2016年4月に経済産業省がまとめた「新産業構造ビジョン~第4次産業革命をリードする日本の戦略~」というレポート中で、政府はテクノロジーの進化が及ぼす日本の産業の変化について詳しく分析しています。当然この情報は経団連も共有しているので、産業界のトップたちも急速に進化するテクノロジーの潮流について知っているわけです。

特に2020年には東京オリンピックがありますから、これに向けて各企業はAI、IoT、ブロックチェーン、VR、AR、MR、ロボットなどなど、テクノロジーの進化を間に合わせてくるでしょう。この2年半ほどの大きな潮流に乗り遅れてしまうと、企業間格差が大きく開くことになります。今まさに、個人や組織は、働き方をどう変えていくべきか真剣に考えなければいけないステージが来ているんです。

――なるほど、喫緊の課題なのですね。大企業のトップはテクノロジーの潮流を知っているということですが、個人では、興味がある人とまったくない人、かなり差があるように感じます。

そうですね。囲碁AIが人に勝ったという話題は知っていても、自分ごととなると身近ではなく、「将来、AIに仕事を取られるかも」というぼんやりとした不安や焦りだけを抱いている、という人も多いでしょう。

特に、企業の中でも30代後半から50代くらいの人々が、テクノロジーと働き方に関してのアンテナが立っていないことが多いと感じます。トップ層と若い世代が変化しようと考えていても、中間管理職層がボトルネックになってその流れをせき止めてしまう。

でもこれは彼らが悪いのでは決してなく、逆に誰よりも忙しく仕事をしているからこそ起こることなんです。目の前にある膨大な仕事をこなすのに懸命になればなるほど、周りが見えなくなるというジレンマに陥っているのでしょう。だからこそ、主にこの世代に対して視野を広げ、テクノロジー情報格差をなくすという機会が必要なのだと思います。

――まずは、現在のテクノロジーの進化について正しい知識を持つべきなのですね。

たとえば、あなたが現在のAIテクノロジーについてどれくらい理解しているかを、3つの質問で測ることができます。「女子高生AIりんな」「ディープラーニング」「NVIDIA(エヌビディア)という企業」、この3つをきちんと知っていて、かつ自分の言葉で人に説明できますか? これができれば「テクノロジーリテラシー(AIリテラシー)」がある状態だと言え、できなければAIの知識が不足していると考えていいでしょう。

また、現在の世界のテクノロジーをけん引している、先述の「NVIDIA」、件のアルファ碁を開発した「DeepMind(ディープマインド)」、日本においては「Preferred Networks(プリファードネットワークス)」、「LeapMind(リープマインド)」、「EXAINTELLIGENCE(エクサインテリジェンス)」といった新興企業をご存知ですか?

研修などで尋ねると、やはりまだまだ知らない人の方が多いのが現状です。ですから、刻々と移り変わっている時代とテクノロジーについて「知る」ことがすべてのスタート。きちんと知ることによって、漠然とした不安は払拭され、知れば知るほど、AIは人間を脅かす敵ではなく、人間を人間らしい本来の働き方へ戻してくれる救世主になり得ることがわかると思います。

――AIは敵ではなく、人間をラクにしてくれるテクノロジーになるのでしょうか。

はい、これは著書『2020年人工知能時代 僕たちの幸せな働き方』でも強調しているところなのですが、20世紀は、人間を“ロボット的にさせる”時代でした。しかし、同じことをただただ繰り返す仕事や効率だけが求められる仕事は人間に苦痛を与えますし、情報が爆発的に増え続ける現代では人間の努力だけでは追いつけなくなってしまっています。その歪みとして、過重労働などの問題が噴出しているわけです。

これを解消してくれ得るのが、AIテクノロジーです。「疲れ」も「飽き」もないAIは、大量の情報を高速回転で何度も何度も繰り返すことが得意。これらの人間がやらなくてもいい仕事をAIに任せることができれば、人の仕事は「ラク」に「楽しく」なるはずです。

――AIの導入が「働き方改革」につながるということですね。

そうですね。ただ重要なのは、AIによって人間が“休めるようになる”ことが大切なのではなく、人間がやらなくていいこと、やるべきではないことをテクノロジーに任せていき、人は人間らしい仕事に戻ること。つまり「ヒトの仕事を楽しくする」ためのテクノロジーであるという考え方でしょう。

テクノロジーをただの時短ツールとして考えるのではなく、テクノロジーの利用によって生まれる時間と心の余裕のなかで、人間にしかできない新たな発想で新たな価値をつくっていく。それが、生産性の向上と仕事の楽しさに繋がるのだと思います。

この新たな価値創造というものは、“AIが苦手な、人間にしかできないこと”を考える中で見えてきます。セミナーや研修では、このAIが苦手で人間が得意な分野という切り口から、人や企業の働き方の進化の仕方を考えていきます。

突き詰めて「AIとは何か」を考えるということは、「人間とは何か」を考えることと同じです。AIの台頭は、改めて「人」というものを見つめ直すきっかけを与えてくれるものではないかと感じます。

前編はここまでとなります。後編では、研修の具体的な内容などをお伝えします。

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