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宇山卓栄先生

著者インタビュー『世界史で学べ! 間違いだらけの民主主義』著者 宇山卓栄先生に聞きました!

更新:2016.4.28

学ぶ、働く、納税する、物を買う、レジャーに行く……現代の私たちが当たり前のように行っている生活のあれこれは、すべて政治に結びついています。そんな政治への関心が高まっている今、国民が主権を持つ「民主主義」というものは一体何なのか、もう一度きちんと見直してみませんか。物語として読んでも面白い「世界史で学べ! 間違いだらけの民主主義」著者の宇山卓栄さんにお話を伺いました。

本書を執筆するきっかけを教えていただけますか。

2015年に行われた大阪府議会議員選挙に、自民党から出馬した経験がひとつのきっかけです。残念ながら落選しましたが、実際に選挙活動を行った中で、以前から感じていた民主主義に対する様々な矛盾や現実などを強く実感しました。この実体験から得たものを、体験談のようなものではなく、もっと一般法則として導き出せるような形で表現したいと思ったんです。選挙に出る前まで、私は予備校で世界史の講師をしており、世界史に関する著書も数冊執筆していました。
そこで本書では、世界の民主主義の歴史をひも解きながら、全世界、全時代に共通するような政治的一般法則を導き出すという構成にしました。

「民主主義」という切り口で書かれたのは初めてですね。

はい。企画を提案したころ、安保法制に対する大きなデモなどが盛んに行われていました。
民主政治に対して一般の方々の関心が高まっています。また、この夏の参議院議員選挙では、選挙権が18歳に引き下げられますし、衆参ダブル選挙が行われる可能性も出ています。このタイミングに、ぜひ皆さんに本書を手に取っていただきたいですね。

著者の写真

本書で特に読んでほしいページ、または章はどこでしょうか?

第5章の「日本と民主主義」です。日本人というのは歴史的に、欧米諸国のような民主主義を勝ち取るための流血の民主主義革命、市民革命を経験していないんですね。日本では、特権階級である武士たち自らが特権を手放す覚悟で改革を断行して、血を流すことなく万民平等の世が実現し、近代化できた。これは非常に特殊なことなんです。
そんな日本人が、果たして民主主義というものをどこまで発展させることができたのか、そしてこれからできるのか……。欧米の歴史が経験しなかった観点の中での、日本独自の歩み方を分析できればと思いました。
また、近代化、民主化が比較的穏健に進んだからこそ、「民主主義」というものに対して理解が不足している面もあるかもしれません。そんな、日本人と民主主義との歴史を読み解いているのが第5章なんですね。日本人がこれからどうすべきかという課題も提示しています。

歴史や政治・経済の本というと難しく感じがちですが、本書は、これらの分野に疎い私でもとても楽しく読むことができました。中でも5章は、日本の近代をつくった政治家の物語に興奮し、わくわくしました。

そうですね。かつて日本には、明治維新を起こした大久保利通や伊藤博文といった、傑出した政治家がいました。
しかし、現在は、必ずしもそのような強い志を持った偉大な政治家がいるとは言えないかもしれません。これは、普通選挙がもたらす弊害のひとつであり、こういった問題点も本書では指摘しています。
もちろん、日本だけでなく世界でも同じような課題を背負っています。やはり、民主主義というのは、民衆が選択を誤ってしまう危険と常に隣り合わせにあるわけです。

(担当編集者・荒上)麹町にある弊社のすぐ近くには、大久保利通氏が暗殺された紀尾井坂があり、感慨深いものがありました。また、4章を読んでドイツの政治家・ビスマルクの本当の姿を知り、ファンになりました。

ビスマルクは悪辣な独裁者のようなイメージがありますが、実のところ、彼は民衆の幸せを一番に願っていたんですね。独裁的政治が非民主主義的であるとは必ずしも言えず、場合によっては、民衆の幸せに適っていれば民主主義的であることもある。ただ、それがナチスドイツというものを生んだ歴史も教訓としてあるわけです。まさに民主主義のバランスの難しいところですよね。

著者の写真

本書をどんな方に読んでほしいですか?

特に高校生、大学生といった若い人たちに、ぜひ読んでもらいたいです。高校までの授業ではひととおり政治・経済、歴史などを勉強してきたと思いますが、せっかく学んだその知識が、自分の“一票”という行動につながるかどうかということが非常に大切なことだと思います。本書が政治を考えるひとつのきっかけになればいいなと思います。

日本の投票率はどんどん下がっています。国民は“1億分の1の主権”の重みを実感しにくいという普通選挙の難点も本書で指摘されています。

投票率の低下は世界的な問題です。国民の多くが、1票という権利を最初から放棄してしまっている。これこそ民主主義の危機なんですね。
この貴重な1票というものが、何百年という歴史の中でどのように作られてきたのかということを知ることが、民主主義に真剣に向き合う材料になるのではないでしょうか。

今、私たちひとりひとりがやるべきこと、できることは何でしょうか。

やっぱり、どんな形でもいいので政治に関心を持つことです。日本人は、政治と自分たちの生活というものがかけ離れているイメージを持っていますが、もっともっと政治に対して身近な要求をぶつけていくべきだと思います。
たとえば今、首都圏の保育園待機問題などが挙げられていますが、「○○がこの地域に足らないよ!」といった要求などを、市会議員や国会議員、誰でもいいから政治家に遠慮せずにぶつけてみる。そこから政治は育っていき、民主主義の発展が生まれます。政治や政治家を動かすのは我々ひとりひとりなんだという当事者意識を持ちたいですね。

では、本書の制作中に苦労したこと、または担当編集者とのやりとりで印象深いエピソードなどありますか?

やはり、著者の目線として理念的な抽象論に走ってしまいがちなところを、「ここをもっと具体的に教えてください」というように、担当編集の方にバランスを取ってもらったと思います。
たとえば、8章はいわゆる経済論なのですが、当初はかなり抽象的で理念的になっていたものを、「“格差“という視点で捉えてはどうですか」という提言をもらって。その切り口で、今日のブラック企業の問題、シングルマザーや教育格差といった色々な格差問題と重ね合わせながら、具体的に読者の方々がイメージしやすい内容にまとめていきました。また、全体としてあくまで中立的な視点で偏りのない内容にまとめるのも苦労した点です。

歴史上の人物たちのイラストも秀逸ですね。

はい。イラストレーターの加藤タカシさんが、表現力のある素晴らしいイラストを作成してくださいました。彼らが、いきいきと語りかけてくるような、臨場感のある誌面になったのではないかと思います。

最後に、宇山先生オススメの本を1冊教えてください。

ロシア革命の指導者であるレーニンが1917年に執筆した『国家と革命』(講談社学術文庫)を挙げたいですね。彼はこの中で「資本主義の中における民主主義というのは、常に金持ちだけのためにある」と述べている。結局、金持ち優先の政治になることが宿命だと言っているんですね。その宿命を断ち切り、すべての人たちが本当に平等で理想的な社会を築くためには、資本主義そのものをつぶす必要があるということで、ロシア革命を起こした。単なる学者ではなく、自分の理想を行動に移した人間なんです。その説得力、リアリティというものがレーニンの言葉には溢れています。
このテーゼは、まさに現代にも当てはまりますよね。弱者が救済されることが民主主義の大きな理念であるはずなのに、実際にはそうはなっていない。今、民主主義という仕組み自体が機能不全に陥っています。その矛盾を100年も前に、レーニンは鋭く突いていたわけで、民主主義の根本を深く考えさせる一冊です。


著者プロフィール

宇山 卓栄 (うやまたくえい)

著作家<br />予備校講師

1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。著作家。代々木ゼミナールで世界史の教鞭を執る。
2015年、自民党から大阪府議会議員選挙に出馬するも、次点落選。
民主主義の選挙に出て実感したことをテーマとし、執筆活動を行う傍ら、テレビやラジオにも多数出演。歴史をベースとした視点から、時事問題や国際情勢を解説する切り口には定評がある。
個人投資家として新興国の株式・債券に投資し、「自分の目で見て歩く」をモットーに世界各国を旅する。

おもな著書に、『経済を読み解くための宗教史』『世界一おもしろい世界史の授業』(いずれも、KADOKAWA)、『日本の今の問題はすでに{世界史}が解決している。』『イラスト大図解世界史』(いずれも、学研教育出版)などがある。

著作一覧

世界史で学べ! 間違いだらけの民主主義

定価 1,728円(税込)
判型 46判
体裁 並製
頁数 304頁
ISBN 978-4-7612-7162-6
発行日 2016年4月4日

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