私は、外資系企業に就職して海外を中心に働いていたのですが、帰国してからあるとき、英語に困っている人にお教えする機会があって。そのときに覚え方次第でいとも簡単に話せるようになることに気づいたんです。その後、多くの人にレッスンをする機会に恵まれ、その中で、どんな語学にも共通する普遍的な方法を見つけていきました。そのメソッドをまとめたのが本書です。この実践的なやり方を世の中の人に知ってもらえたらと思って制作しました。
著者インタビュー

独学で8カ国の言語を習得し、さらに、イギリス英語、アメリカ英語、オーストラリア英語などを使い分けて仕事をしてきた新条正恵さん。多くの人々にレッスンし口コミで評判となった英会話メソッドは、単語も文法も勉強せず、日本人の私たちがこれまで覚えてきた英語を“思い出す”だけで話せるようになるという斬新なものです! 売れ行き好調の著書『30日で英語が話せるマルチリンガルメソッド』について伺いました。
本書を執筆するきっかけを教えていただけますか。
本書で特に読んでほしいページ、または章はどこでしょうか?
最後の第7章「一生英語を身につけておくための継続レッスン」ですね。30日間のレッスンの内容は第6章までで終わりなのですが、あえてこの章を設けました。
なぜかというと、やっぱり、英語を覚えても使わないと忘れてしまうという人が多いんです。本書の中にも書いたのですが、海外に留学や長年在住した経験を持つ私自身も、帰国している間に2回ほど英語を忘れてしまったことがあります。完全に忘れてしまうわけではないんですが、使う場面がなくなると、使い方を忘れてしまう。運動やスポーツと同じように感覚が鈍ってしまうんですよね。
そうならないために、英語力をキープするための工夫もお伝えしようと思ったんです。
すでにある程度英語ができる方にも、7章を読んでからパラパラと前の実践編をさかのぼって読んでいただいて、今の自分に必要なところをもう一度復習しよう、という感じで使っていただきたいです。

ただの英語学習ではなく、“マルチリンガル”メソッドなのですね。
まだ少ないかもしれませんが、私はこれから多言語を話せる“マルチリンガル”の時代が来ると思っているんです。このマルチリンガルというものが世の中に広がるといいなと思って活動をしているので、この言葉を本書にも入れたいと思いました。
ですので、「英語はもう話せるのでほかの言語をやりたい」という方から、「この本は応用が利きますか?」と質問をいただくこともあります。もちろん、まずは数字を覚える、自己紹介からはじめる、600単語を習得する、といった基本的なメソッドは、どの言語の習得にも応用が利きます。
ただ、1000文チャレンジなど難易度が高いワークもあるので、そこは少し変えていかなくてはいけませんね。そのあたりも、今後、何らかの形で発信していければいいなと思っています。
どんな方に読んでいただきたいですか?
もちろん幅広い層の方に読んでいただきたいですが、特に私と同じ30代~40代くらいの方でしょうか。
私は2020年の東京オリンピックよりももっと先の、2050年、2100年の日本がどうなるかということを考えているんですね。日本がどう舵を切っていくかによりますが、ひょっとしたらドバイやシンガポールのように、労働力を外国からの輸入に頼らざるを得なくなるかもしれない。そういう世界にこれから徐々になっていくとすると、いま経済をけん引して頑張っている30代40代が、ハッと気づいたら周りが外国人だらけになっていて、「俺、英語できないんだけど……」なんて言っていたら英語の話せる自分より10歳年下の部長がやってきて……ということにもなりかねないわけです。
でも、1ヵ月くらいで英語が話せるようになるんだったら、とりあえずやってみてはいかが? と。そういう気持ちで語学をオススメしています。
制作中に苦労したことはありましたか?
あまりなかったですね。まず、「全体のスケジュールを教えてください」と聞いて、自分で1章ごとの締め切りを設定し、そのとおりに必死で原稿を書き上げていって。あとで聞くとそんなに早くなくてもよかったようなんですが(笑)。
それから、“英語トラウマをはずす”というテーマの「はじめに」の文章を「長すぎるのでカットしてください」と言われて、「どれも大切なので私にはカットできません!」と、担当編集者の渡部さんにバッサリ削ってもらったんですよね。当初のままだだったら、どこまで読み進めてもレッスンの章がはじまらないという事態に(笑)。
初の著書で執筆が順調だなんてすごいです!
本書を作るうえで、意識していたことが数点あります。
ひとつは、類書である英語本を一切読まなかったこと。英語教材はすでにたくさん出ていて、ある程度情報も出そろっていると思うので、どこかで見聞きしたものが間違って自分の本に入り込んでしまうといけないと思いました。ですので、1冊目はあえて参考文献なども入れませんでした。同じ理由で、普段よく読んでいるビジネス書も読まないようにしていました。
その代わりに、ベストセラー小説を2、3ヵ月の間に20冊~30冊くらい読みました。というのも、初めて本を書くので、普段本を読まない人でも引き込まれるような読みやすい文体を取り入れようと考えたんです。
たとえば、ドラマ化もされた「探偵の探偵」などの松岡圭祐さん。「千里眼シリーズ」という本が非常にたくさん出ているのですが、私はシリーズ本すべて読まないと気が済まないタイプなので、すべて読破してしまいました。

それもすごいです。本書のもうひとつの特長として、ダウンロードできる音声教材と毎日届く応援メールが新しいと感じました。
そうですね。何かしら“誰もやっていないことを入れたい”というのがありました。
音声教材は、自分で作った原稿を自分の声で吹き込んだのですが、それにはいくつかの理由があります。
私は帰国子女でもなく、日本で生まれ育ち、みなさんと同じように中学から英語学習をスタートした日本人です。そんな私でもここまでできたよ、とみなさんにお伝えするために、恥をさらす覚悟でのぞみました。それに、英語脳にスイッチしているときでもやっぱり思考は日本人なので、日本人の耳に馴染みやすいのではないでしょうか。
また、イギリス英語、アメリカ英語、オーストラリア英語、それぞれ全然違うので、“ネイティブ”の基準も難しいところですよね。私はそれらの英語をすべて使ってきたために、ベーシックに使う英語は、発音記号に最も近いアイルランド英語に似たカタチになっていると思います。
もうひとつの見どころは、音声教材の内容にストーリーがあるというところ。登場人物の太郎さんと夢子さんのモデルは、実際にレッスンを受けてくださった何人かが混ざり合っているのですが、彼らが英語を学ぶうちに、その目標が高いところに変わっていく……といったリアルな成長ストーリーも盛り込んでいるんです。この教材を使うみなさんにも、英語と共に自分のキャリアや将来を考えていただければ、という思いを込めました。
「あとがき」にも書いたのですが、私は「先生」ではなく、これから語学を学ぼうとしているみなさんの少し「先輩」くらいのイメージを持っています。一緒に走りながら「頑張れ」と応援とアドバイスを送るマネジャーのようなものだと思っているんです。
最後に、新条さんオススメの本を1冊教えてください。
日本語版も出ているベストセラーですが、現在フェイスブックのCOOであるシェリル・サンドバーグの『Lean In: Women, Work, and the Will to Lead』(※日本語版『 LEAN IN(リーン・イン)女性、仕事、リーダーへの意欲』は日本経済新聞出版社から発売中)ですね。私の独立のきっかけのひとつになった本で、独立してから初めて開催した読書会に使った1冊です。
TEDのスピーチを元にした本書のテーマは「自分に自信を持とう」。これは、私の伝えたいメッセージと共通しているんです。また、彼女は名門女子大学・バーナードカレッジの卒業式でスピーチしているのですが、その中でも印象的だった言葉が「You are awesome!(あなたたちはすでにとても素晴らしいのよ!)」。これも「みなさんはすでに英語ができるんですよ!」と言う私の気持ちとまったく同じだと感じています!
ちょっと気持ちがダウンしているときなどに彼女のスピーチを見たり本を読んだりすると、本当に力が湧きます。基本的に女性向けの内容ではありますが、男性も勇気をもらえる本だと思います。