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あなたの街の本屋さん vol.14 CHIENOWA BOOK STORE 朝霞店 塩澤広一店長

池袋から東武東上線、朝霞駅ナカにある「CHIENOWA BOOK STORE」は、赤と黒を基調とした落ち着いた内装に、ギフトとしての本や雑貨などを提案する個性のある書店。リニューアル以降、5年連続で収益増を続けている同店の強みと工夫について、塩澤広一店長にお聞きしました。

アパレル業から書店業に転身。未経験で店長に大抜擢

塩澤店長は、もともとアパレル業界出身という異色の経歴をお持ちだとか。CHIENOWA BOOK STOREに入社されたきっかけを教えてください。

塩澤さん

本当に“縁があって”としか言えないのですが……そうですね、もともと書店関係で働いていたわけではなく、アパレルの企画・営業の仕事をしていました。売る商品があるというのではなく「顧客に合わせて商品を企画し、売る」といったスタイルの会社でした。なので、企画して営業して、ということをやっていましたね。でも次第に、そこから先の「お客様まで届ける」仕事をしたいなと思って。そんな気持ちから他の仕事を探しているとき、とある転職サイトで一進堂、後のCHIENOWA BOOK STOREに出会ったんです。

以前は60年以上の歴史を持つ老舗の「一進堂」という書店でした。2010年のリニューアルとともに店名も内装も一新されたという―。

塩澤さん
店名の由来
お店の壁面には店名の由来が書かれています。

はい。僕はそのリニューアル時の募集で入社したんです。店長としての採用でした。5年前ですから、31歳のときですね。

異業種からの大抜擢ですね。

塩澤さん

大抜擢……なんですかね? その辺の感覚も僕はわからなくて。本はもともと好きでしたが、本に関する仕事を、というこだわりがあったわけでもないんです。面接でいろいろ話す中で、ここだったらこれまでの経験を活かしながら新しいお店づくりができるのではないか、と思いました。それで採用になって……。異業種だという抵抗感は特にありませんでした。

アパレル業界出身の塩澤店長のアイデアがあって、赤と黒の内装や、ギフトコーナーの導入といった、オリジナリティのある店舗が生まれたんですね。

塩澤さん

お店全体のコンセプトとして「ギフトも選べる街の書店」というのをひとつのキーワードとしています。お店の右奥の方に「ZAKKA」「GIFT」「STATIONERY」などのシチュエーションコーナーを設け、文具や雑貨、そしてギフトにぴったりな“モノとしての価値のある本”をセレクトして置いているんです。雑貨のひとつとして本を見てほしいなという感覚で売り場づくりをしているので、あまり一般の書店に置いていないような本もありますし、うちでしか扱っていないような雑貨もあります。

ほかにはない書店のレイアウトとセレクトですよね。

塩澤さん

はい。日常使いにしてもらいつつ、ギフトも選べる書店というのがお客様にとって一番良いのではないかなと思っています。
ですから、NHKのテキストや文庫本を1冊、それと一緒に「これ、ギフトでお願いします」と1アイテム買ってくださる、というお客様が一番グッときますね。

シチュエーションコーナー
「シチュエーションコーナー」にはプレゼントにぴったりな選書された本と文具雑貨が並びます。書店とお洒落な雑貨屋さんのいいとこ取り、といった素敵な雰囲気。

当初、いきなり店長を担うというプレッシャーはなかったのですか?

塩澤さん

プレッシャーは全くなかったですね。というか、何もかもはじめてで、あまりこの業界のことをわかっていなかったのが逆に良かったのかもしれません。本屋さんのことをよく知っていたら、もしかしたら働かなかったかもしれないです(笑)。

前知識がないからこそ、斬新な発想ができたのかもしれませんね。CHIENOWAさんの前身の一進堂さんにはよく行かれていたんですか?

塩澤さん

いえ、実は一度も行ったことがなかったんです。住んでいる場所が朝霞の近くではなかったので。
ですから、前のお店のことを知らないんですよ。僕が働き始めたのが4月1日で、リニューアルオープンが4月28日。その段階で決まっていたのは、リニューアルする、ということと、なんとなくの店舗レイアウト、それだけでした。そこから一週間くらいでスタッフの採用をして、その後一週間で研修をして、商品を仕入れて並べて……と、あまり記憶がないんですが、怒涛の展開でしたね。ぜんぜん時間がありませんでした。

聞いているだけで恐ろしくなります。

塩澤さん

商品の入庫や棚入れ作業などは取次の方々も手伝ってくれたので、とても助かりました。ただ、最初は本当に書店の仕組み自体がわからなくて、「取次ってなに?」「委託販売ってなに?」っていう世界だったので、そこは苦労しましたね。

業界独特の部分ですね。

塩澤さん

そうですね。スタッフ教育といった部分も大変でした。レジでかけるブックカバーを折るといったことも僕はできないので、新人スタッフと一緒に練習するといった感じで。本当にゼロからでしたね。ただ幸いにも、アパレルや雑貨店の売り方といったものは知っていたので、その売り方と本屋さんの売り方との違いを擦り合わせていくという作業をしていって。それは今も継続中ですが、どちらも良い点も悪い点もあって、それを良い形にまとめていくというのがすごく難しいところでもあり、楽しいところでもあります。

アパレルからいらして、この業界をどう思いましたか?

塩澤さん

なんというか、お客様もスタッフも版元の方もすごくいい人が多いな、と。アパレル業界は、良くも悪くも自己主張が強い人が多かった気がします。出版業界は別のチェーン店でもスタッフ同士が仲良かったり、版元さんも仲が良かったりするじゃないですか。横のつながりがあるのがすごいなと思いますね。
それから、とにかく作業量が多い。なので、最初のころは、品出し作業を終えたら「仕事が終わった」という雰囲気になりがちでした。配本が毎日あるので、まずはそれを出さなきゃいけないわけですよね。これは良いところでもあり悪い所でもあると思うのですが、色々と新しい企画を考えなくても、配本のおかげでお店がある程度まわってしまうんです。なので、日々の作業に追われてあまり頭を使わなくなってしまう、というリスクがあるかなと思いました。

でも、そこをやっていかないと伸びないですよね。

塩澤さん

はい。本がバンバン売れている時代はそれで良かったのかもしれませんが、そうではなくなったときに、プラスアルファの何かを店がしていかないといけないのでは、と思っています。

本屋のクオリティの基準とは何か

リニューアルして、手ごたえを感じたところは?

塩澤さん

お店のレイアウトをガラリと変えたのですが、駅ナカのこういった店舗を普通に作ったら、たぶんもう一本、棚を入れるはずなんです。そこを、あえて入れずに、ベビーカーが通りやすいお店にしました。そうしたら、やはり子連れのお客様が増えたんです。夕方、お子さんを保育園や幼稚園に迎えに行った帰りにこの店に寄ってくださり、お知り合いと出会って「あらどうも」と会話がはじまったり。そういう光景を目にすると、手前味噌ですがなんだかいいな、と思いますね。

地域密着で地元の方を大切にした店づくりをいらっしゃいますが、様々なイベントも催されたりしていると伺ってます。

塩澤さん

そうですね。たとえば、地元の絵本作家さんとコラボしたり、朝霞カレーという地元の商品を販売したりしています。また「ブックコミュボード」を設けて、地元の方々がおすすめの本の情報交換をする掲示板を設けるということもやっています。「チエノワブックカバーコンテスト」も盛り上がりますよ。一般から作品を募集して投票を呼びかけ、大賞作品は実際にブックカバーとして製作し、店舗で使用します。先日、第三回の大賞受賞者と作成した絵本やTシャツ、ポストカードなどの商品もできあったので、展示販売を行っています。

「第三回チエノワブックカバーコンテスト」の受賞作品
「第三回チエノワブックカバーコンテスト」の受賞作品。大賞受賞作は、読書家の男の子と絵描きの女の子のイラストが散りばめられた、ラッピングペーパーのような可愛らしいデザインです。

店長として心がけていることはありますか?

塩澤さん

視野が狭くならないように、と思っています。先日、ブックフェアでお会いした熊本の長崎書店の長崎さんが、「お店の“クオリティコントロール”をしています」とおっしゃっていて。すっと胸に落ちました。
ただ、このクオリティという言葉もけっこう曲者ですよね。ではその基準は何か、というと、自分の感覚しかないので。そのクオリティを自分の中で下げないために色々な店や物を見るようにしています。書店以外でも雑貨店だったり服屋だったり。もともとお店を見るのが好きなんですよ。旅行先でも、観光地に行くより地元のお店を見るほうが好きなタイプです。

なるほど、そうやってご自身の中の感度を高めているんですね。ところで、お店でよく売れている本のジャンルはなんですか?

塩澤さん

やっぱり駅ナカなので、いわゆるベストセラーと呼ばれるものは反応がいいですね。あとはコミックの新刊。客層としては、老若男女、幅広いです。
ビジネス書だと、たとえば、女性も読めるような軽い自己啓発書は売れます。かなり間口を広げたつくりの店なので、本当に様々な層が読めるものが人気です。
ジャンルとしては、けっこう万遍なく売れていてあまり偏りはありません。しいて言えば雑誌全体の売り上げは落ちてきてはいますが、育児関係の雑誌や、児童書はずっと伸びています。

学習参考書やドリルなどは?

塩澤さん

学生さんも多いのですが、うちは学参はほとんど取り扱っていないんですよ。置いてしまうとかなり棚のスパンを取ってしまうので、あえて外しています。

そういう戦略もあるんですね。ところで弊社の本で印象に残っているものはありますか?

塩澤さん

やっぱり、『頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?』ですね。本もヒットしましたが、文具、筆記具とノートを一緒に展開して、めちゃくちゃ売れました。

ありがとうございます! CHIENOWAさんは、2015年5月に発売した『方眼ノート』のセット展開を一番最初にやってくださいました。「LIFE」社の方眼ノートと「PILOT Vコーン」ボールペン黒、赤、青のセットと、本の中で紹介していたアイテムを完璧な展開で併売していただきました。CHIENOWAさんだからこそできた企画ではないかと思います。

塩澤さん
『頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?』のワゴン展開の様子
2014年5月当時の『頭がいい人はなぜ、方眼ノートを使うのか?』のワゴン展開の様子。発売当初、どの書店様よりも早く仕掛け販売をやってくださいました。

売場もすごくいい感じにハマったんですよ。自分でも作っていてとても気持ち良かった。きっとお客様にもバチッとハマったんでしょうね。このときの「Vコーン」の売れ行きは尋常じゃなかったですね。本と文具がしっかり売れた、理想的な内容でした。

最近は、文具も取り扱っている書店さんが増えました。

塩澤さん

そうですね。取次が提案するパッケージをそのまま仕入れて並べている文具売り場も多いですよね。それは良い部分もあるのでしょうが、うちでは独自でセレクトすることにこだわっています。
うちはもともと一般文具の仕入ルートがありました。それに加え、雑貨や文具の展示会などに行き新しい仕入先を開拓したり、メーカーと直接取引もしていて、色々商品を組み合わせて売場を作っています。
もちろん手間もかかりますがお店の特徴の一つになっていると思います。

異業種の壁を越え、共に街を活性化していきたい

ご自身はひと月何冊くらい本を読まれますか?

塩澤さん
塩澤店長
アパレル時代の経験を活かした個性ある店づくりで、業界誌でもたびたび取り上げられている塩澤店長。

同時に5冊ほどを読む乱読タイプです。ジャンルでいうと幅広く、ビジネス書も小説もノンフィクションも読みます。コミックはあまり読みません。ビジネス書ばっかり読んでいると自分の中でバランスが悪くなってくるので、小説を読んで中和する、といった感じですね。

では、これからの展望を聞かせてください。

塩澤さん

初めて行った街で観光スポットに行くより書店に行った方が楽しいと思う僕としては、街に書店がなくなることがすごく寂しいんです。ナショナルチェーンというよりは、街の書店が地域に残っていってほしいなと思っているので、そのために何かできないかなと考えています。
おかげさまで、リニューアルしてから5年間、CHIENOWA BOOK STOREは売上増を続けています。この店舗づくりのノウハウを活かして、他書店さんのリニューアルのお手伝いをするプロジェクトを立ち上げました。また、雑貨屋、カフェ、アパレル、美容院など異業種の店舗へも、グッズや本やイベントを提案しリニューアルする総合プロデュースを行っています。
そのほかにも、民間企業を対象に、福利厚生の観点からオフィスに休憩のできる社内図書館を作る「企業内ライブラリー」なども。これは毎月定額でその会社に合った新刊をセレクトしてお届けするというプロジェクトで、社員のやる気やコミュニケーションが向上した、と好評をいただいています。なかなか会社を超えて……というのは難しいところもあるのですが、一緒に書店と街を活性化できればいいなと思っています。


CHIENOWA BOOK STORE 朝霞店

月~金 7:00~22:00
土日祝日 8:00~22:00
定休日 元旦
〒351-0011
埼玉県朝霞市本町2-13-1
EQUiA朝霞2F
TEL:048-450-6760

店舗外観

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