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愛されるサービス
定価 1,650円(税込)
判型 46判
頁数 224頁
ISBN 978-4-7612-6317-1
発行日 2006年3月6日

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ホスピタリティは50:50の関係から生まれる

愛されるサービス

新川義弘 /著 

内容紹介

■相手が大統領でも、いつもどおりのサービス
 二〇〇二年二月一八日は、私にとって特別な日となりました。その日、私は小泉首相とブッシュ大統領を接客したのです。レストランのウエイターとして、これほどのVIPにサービスをする機会は、そうあるものではありませ。
 場所は、当時私がコンセプトリーダーを務めていた、港区の西麻布にある和風居酒屋「権八」でした。日米首脳会談のために来日していたブッシュ大統領が、小泉首相と気楽に夕食をともにしたいと企画されたものです。インフォーマルな会食ということで、ブッシュ大統領も小泉首相もノーネクタイ姿で来店されました。
 一行は、小泉首相、ブッシュ大統領夫妻、ベーカー駐日アメリカ大使夫妻、福田元官房長官夫妻の七名です。来店の二時間くらい前から、物々しい警戒態勢が敷かれました。しかし、お店には普段どおり一般のお客さまも入れていました。そのお客さまたちは、異常な警戒ぶりを不審に思いながらも、まさかブッシュ大統領が来るとは考えていなかったはずです。
 この超VIP会食のことは、私には二週間前に伝えられていましたが、極秘扱いだったため、そのことを知っているのは店長や料理長など数人に限られていたのです。お店のスタッフでさえ、知らされたのは当日のことでした。
 ブッシュ大統領や小泉首相にサービスするにあたって、私が考えたのは「とにかく、いつもどおりにやる」ということでした。普段どおりのサービスを提供するということです。私も緊張するでしょうが、これまで一般のお客さまにサービスしてきたのと同じように、大統領にも接しようと決めました。
 お店自体も、できるだけ通常どおり営業しようと考えました。ブッシュ大統領たちが会食する二階はともかくとして、一階は普段どおりお客さまを入れることにしたのです。予約のお客さまには「申し訳ありませんが、当日はうちのオーナーのプライベートパーティがありますので、ご迷惑をおかけすることがあるかもしれません」と、あらかじめお断りの電話を入れておきました。
 当日、突如現れたブッシュ大統領や小泉首相を見て、一階のお客さまたちから歓声が上がったものです。また、ブッシュ大統領もそれに応えて、ローラ夫人を連れて一階のテーブル席を回りました。実に上機嫌そうでした。
私は、今回のホストである小泉首相に挨拶をして、次に、ゲストであるブッシュ大統領夫妻に挨拶をし、飲み物のオーダーを聞いていきました。
「Mr. President」と呼びかけてから、こう言葉を続けました。
「Would you like something to drink ?(どのような飲み物がよろしいですか)」
特別な敬語を使うわけでも、妙にへり下るわけでもありません。普段、外国人のお客さまに尋ねるのと同じ言い方です。
 これで、その場の雰囲気がガラッと変わりました。あえて言うなら「あっ、こいつ。我々の望むサービスがわかっているな」という空気が流れたという感じです。「肩肘張らないプライベートな食事を楽しみたい」という願いがかなえられそうだと察していただけたのではないでしょうか。このお店では「わがままを言ってもいいんだ」と感じていただけたかもしれません。
 そして「My name is Yoshihiro Shinkawa. Please call me HIRO」と、これもいつもどおりのことを言い添えました。それからは大統領から「HIRO」「HIRO」と気さくに声をかけていただき、非常にスムーズに事が運びました。

■べーカー大使からの感謝状
結局この日、ブッシュ大統領は出された料理をすべて残さずに食べました。後で大統領の随行のスタッフに聞いたところ、これは大変珍しいことだそうです。小泉首相も、ビールを二杯おかわりするなど、いつにもまして会食を楽しんでいた様子でした。
 その日の会食は予定を二〇分もオーバーして終わりました。こんなにオーバーすることも、また珍しいことだそうです。みなさん楽しい時間を過ごされたようで、どなたの顔にも満足そうな表情が浮かんでいました。そして最後に、私を真ん中にして小泉首相とブッシュ大統領に挟まれた写真を撮ろうと言われたことは、誇らしくもあり、恐縮でもありました。
 後日、ベーカー駐日アメリカ大使から頂いた礼状には、こう記されていました。
「あの場の雰囲気はこの上なく良いもので、サービスは完全無欠。料理はシンプルにして美味しいものでした。大統領は、優雅でリラックスした中で、友人たちの会食をとても楽しまれました」
 この時のサービスは、私だけで提供できたものではありません。すばらしい料理を作ってくれた料理人たち。キッチンとホールをつないで適切な時間に適切な料理や飲み物が出るように気を配ってくれたアシスタント。他のお客さまの様子も含めて、お店全体の雰囲気をコントロールしてくれた店長。こうした人たちのチームワークがあってこそ、最高のサービスを提供することができたのです。
 私たちはブッシュ大統領の接客を滞りなく成し遂げたことで、私たちが目指していたサービスが正しかったこと、世界に通用することを確認することができました。そして私自身も「サービスに国境はない」ということに、ますます確信を深めたのです。

■これからはサービスの時代
外食産業は、お客さまに対して三つの価値を提供しています。一つ目は「味」です。いかに美味しい食べ物や飲み物をお出しできるか。二つ目は「雰囲気」です。いかに日常と違う空間を演出して、お客さまに楽しんで頂けるか。そして、三つ目が「サービス」です。
 これまでの飲食店は、「味」と「雰囲気」にはものすごく気を使ってきましたし、投資もしています。しかし、「サービス」についてはどうでしょうか。とかく「サービス」は後回しにされてきたのではないでしょうか。これが日本の外食産業をチープなものにしてきたと私は思います。
 これからはサービスの時代です。ただ美味しい料理を出して、「さあ、食べなさい」と言われても、お客さまは満足しません。どんなに内装の良いお店でも、従業員の接客態度が悪ければ台無しです。やはり「味、雰囲気、サービス」のトライアングルの質を上げていかなければ、お客さまに支持されるお店にはならないのです。
 そしてこれは、何もレストランに限ったことではありません。町のラーメン屋でも同じことが言えます。
 私はおよそ二四年間、サービスの世界を見てきました。両親が食堂を営んでいて、それを手伝っていたこともあり、物心ついた時にはすでに「こういう時にお水を持っていったらお客さまに喜ばれた」とか「こういう時にお皿を下げたら褒められた」ということを体験していました。
 その後調理師学校に通い、アルバイト先でウエイターの仕事に目覚め、その後ずっと外食産業でサービスに従事してきました。そしてその中で学んださまざまな考え方、テクニックが、決して間違ってはいなかったということの証の一つが、ブッシュ大統領へのサービスを滞りなくやり遂げたことであり、大使から感謝状をいただいたことではないかと思います。
 本書では、私がこれまでに学んだこと、役に立つと思ったこと、失敗したことを、思い出せる範囲でまとめてみました。サービスは無形の技術なので、なかなか体系立てて学ぶことは難しいのですが、本書が外食産業に携わる多くの方々、あるいは接客に携わる方々、ひいては、人を喜ばせたり、楽しませたりすることに関心をお持ちの方々にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。

著者について

1963年生まれ。株式会社リンク・ワン常務取締役。株式会社Huge代表取締役。
1982年、福島商業高校卒業。福島商業高校卒業後、新宿東京会館(現ダイナック)を経て、1984年に長谷川実業(現グローバルダイニング)入社。88 年、取締役に就任。「グローバルのサービスの確立者」といわれ、No.2として99年東証2部上場など同社が日本の外食の代表企業へと躍進するステップに大きく貢献する。
2002年の日米首脳会議の際、米国ブッシュ大統領と小泉首相を接客したことで「サービスの神様」とまでいわれる。日米首脳が会食した「権八」のほか「モンスーンカフェ」など数多くの店舗運営を統括し、代官山のタブローズでのレストラン経営では海外の著名人が多数訪れるほどの手腕を見せた。同時にスタッフ教育に力を入れ、独立して成功した社員は多い。
2005年、同社を退職して株式会社リンク・ワン常務取締役に就任。また同子会社でレストラン運営を担う株式会社Hugeの代表取締役に就任。新事業構想の第一弾として“新川ブランド店"「DAZZLE」を2006年春に銀座ミキモトビルにオープンさせる。

目次詳細

はじめに

PART1
サービスの基本はフィフティ・フィフティ
「下僕のサービス」ではなく「愛おしいサービス」を


1 サービスの基本は「フィフティ・フィフティ」
2 第一声から、信頼関係は生まれる
3 日本に多い「下僕のサービス」
4 「フィフティ・フィフティ」であれば攻められる
5 「お運びさん」から「エンターテイナー」へ
6 サービスマンは映画のディレクターでもある
7 サービスには色気も必要

PART2
お客さまに感動を与えるサービスの三要素
アンティシペイション・リコグニション・オペレーション

1 お客さまのしてほしいことを察知する「アンティシペイション」
2 アンティシペイションは、お客さま目線で接客ストーリーを作る事から始まる
3 身のまわりのアンティシペイションにアンテナを張る
4 相手のことを覚え、理解する「リコグニション」
5 リコグニションがあれば3万円のワインも高くない
6 リコグニションを補完する顧客ノート
7 人に興味を持つことがリコグニションのスタート地点
8 店を回す力「オペレーション」
9 スタンダードなサービスこそ重要
10 お店を回すのはいいが、お客を回してはいけない
11 3つの要素が組み合わされば「愛おしいサービス」になる


PART3
サービスが行き届く店は何が違うのか?
テーブル担当制と座席番号制で店が生まれ変わる

1 そのサービスは「幼稚園の運動会」になっていないか?
2 「自分の商店」という意識を持たせる
3 テーブル担当制で、ウエイターが全体を見渡せるように
4 「自分のお客さま」を持て
5 自分がいなくてもリピーターが高い店が本当の繁盛店
6 シェフとのコミュニケーションもサービスの一つ
7 シェフとの関係もフィフティ・フィフティ
8 店のためではなく、町のために掃除をする


PART4
お客さまがまた店に来たくなるサービスとは?
リピーターの来店動機を増やすヒント

1 お客さまとの歓談は一分以内
2 サービスは全力ではなく50%くらいでちょうどいい
3 お客さまの「お任せ」はサービスの発揮しどころ
4 その場の売り上げよりも、顧客の来店動機を増やす
5 お金が無くても、若い人ほど味方に付ける
6 わがままには応える、期待は越える
7 電話の受付けからサービスは始まっている
8 言い方一つで、お客さまの印象は180度違う
9 目は口ほどにものを言う
10 七大用語さえおさえておけば英語は怖くない
11 自分の体調管理もサービスの一環だ


PART5
サービスのプロ集団を育てる
部下の接し方と育て方

1 優秀なサービスマンが優秀なマネージャーとは限らない
2 スタッフとのコミュニケーションの頻度を高める
3 褒める時も叱る時もオープンに
4 「なんで?」攻撃でウエイターのサービスの質は上がる
5 シミュレーションでサービスの質を底上げ
6 シミュレーションの鉄則は「褒めないこと」
7 抜き打ちテストで、緊張感と向上心を持続させる
8 賄いは、安価でおいしいトレーニング
9 実績に応じた賃金で報いる
10 スタッフにキャリアアップの目標を持たせるのがリーダーの仕事


PART6
とっさの時のリスクマネジメント
ピンチの時こそ本当のサービスが問われる。

1 人生最大のピンチだった「火炎放射器事件」
2 不祥事はその後の対応で明暗が分かれる
3 お客さまの視線でリスク対応ができているか?
4 謝罪を拒否されても、できることはある
5 アクシデントを乗り越えて、サービスマンは成長する
6 招かれざる客には毅然とした態度で挑む
7  トラブルは、逃げるたら負け

ドリームレストランを作る?あとがきにかえて