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2020年のわたし「 “今日を最高に楽しく”6年後もそんな自分でいたい」

連載第7回目は歌手の一青窈さんが登場。ほとんどの作品の歌詞を手がけ、歌人としての評価も高い実力派アーティストの近況と未来図を語っていただきました。

文/両角晴香 撮影/榊智朗 掲載日:2015/01/05

2020年に東京オリンピックの開催が決まっていますが、オリンピックの思い出はありますか?

一青さん

私は台湾と日本の2つに故郷を持つので、どこか一つの国だけをひいきに応援する感覚はなく、どの国が勝っても嬉しいし、みんなの父親になった気持ちで観戦しています。どちらかというと、圧倒的な強さを誇る選手よりも、何度トライしてもバーが落ちてしまうような陸上選手を応援しちゃいますね。性格的に厳しい状況に置かれれば置かれるほど、「やった! 難関やってきた、乗り越えるぞ!」と燃えちゃうタイプなので、もがきながら前に進もうとする勇士にエールを送りたくなるんです。オリンピックは、戦争ではなくスポーツで国と国とが戦う素晴らしい国際交流だと思っています。

なるほど。台湾と日本の居住経験を持つ一青窈さんならではのグローバルな視点ですね。開催まで6年をきりましたが、ご自身の未来予想図を教えてください。

一青さん
考えるより先に行動するという一青窈さん。「恋愛も同じで一目惚れしたらすぐに気持ちを伝えます」とキッパリ。

今日を精一杯楽しむことに全力をそそいでいるので、6年後は想像できないかも……。大学生のときに「10年後の私」というテーマでレポートを書かされたのですが、とにかくつらかったのを記憶しています。だって1時間後の予定ですら、こっちのほうがおもしろいと思えば場所も時間も即決で変えていって、楽しい方向に突き進むタチなんです。だから、あえて未来予想図を語るとするなら、「6年後も明日死んでもいい」くらいの気持ちで行動していたいですね。

子どもの頃から思い切りの良い性格だったのですか?

一青さん

いいえ。高校生で母を亡くしたときに「人は死ぬんだ」と実感してからだと思います。命には限りがあるのだから、後悔する選択だけは絶対にしたくないと思ったんです。だから、これだ! と感じたら、リスクを負ってでも前に進みたい。そこにキラキラした何かがあるのなら迷わず私はいきたいのです。そうと気がついた高校一年生の夏休みは、当時所属していたバスケ部の部員みんなの反対を押し切って渡米しました。「部活より大切なことがある。英語は将来絶対必要になるからホームステイしてくる」ってね。

自分の気持ちにまっすぐな一青窈さんの生き方は、音楽性にも表れているような気がします。挑戦されることも多く、たとえば昭和の歌謡曲を“一青窈節”に歌い継いでいらっしゃいますね。

一青さん

昭和の曲は男性の作家さんが書いていることが多いので、自分が書くよりも、より女でいられるんです。たとえば、「小指を噛んであなたが帰るのを待ってるの…」なんて自分じゃまず書きませんね。だから、面白いんですよ。柄にもなく、「私弱いの、一人じゃ生きていけない……」みたいなかよわいモードになるのは不思議ですね。ほら、カラオケで松田聖子さんの名曲を歌えば、誰もが一途な女になれるじゃないですか。中森明菜さんを歌うと、可愛くやさぐれてみたりね。

いま世の中が欲しているメッセージは何かを
分析して丁寧に言葉を紡いでいく。

最新アルバム「私重奏」に収録されている「他人の関係」のステージも圧巻ですね! オリジナルの金井克子さんとはまた違う魅力があって聞き惚れてしまいます。

一青さん
早くに両親を亡くし寂しい気持ちを詩にぶつけたという。そうして技術は磨かれていった。

ありがとうございます。「他人の関係」は女豹になったような気分で歌えるナンバーですね。今回ラテンジャズのアレンジを加えたのですが、そうやって新たな世界観を作り上げていくのは楽しいですよ。最新アルバムでは、亡き父が好きだった台湾民謡の名曲をカバーしていますし、その他の楽曲も家族、台湾、恋愛など今の感情をありのままに綴っていますので、ぜひ聴いていただきたいです。

一青窈さんは、歌唱力はもちろんのこと詩にも定評があります。美しい言葉の数々はどこから想起されるのでしょうか。

一青さん

感情の赴くままに描くのではなく、いま世の中で何が求められているのかを自分なりに分析しています。雑学から色々なジャンルやテーマを扱っている書店に行けば、小説から週刊誌、ビジネス書まで、目についたものを片っ端からかっさらっていきます。女性誌も自分好みのテイストと、あえてタイプじゃない雑誌を買うこともあります。ビジネス本は、思考力を身につけるという意味で自己啓発本と似ていると思うんです。わかってはいるけど、あえてもう一度言われたい! なんてときに手が伸びますね。『小学一年生』や、『なかよし』を購読していた時期もあるんですよ。そうすると、「ガングロの小学生が主人公」みたいな、自分の世代とかけ離れた新しい感覚を養うことができます。今はコミュニケーションツールがLINEなどのSNSですので、本人と直接やりとりできますよね。ですから、昭和の歌謡曲のように、想像力をかりたてる美しい情景描写をするというよりは、ストレートに心情を描く方が好まれるかなと。そんなことを日々試行錯誤しています。

研究熱心ですね! 緻密な分析のもと作品が作り出されているとは驚きです。

一青さん

でも、その分析が当たったことは一度もないんですよ、残念ながら。「ハナミズキ」も「もらい泣き」も、想定外のヒットでしたので。だから自分の感覚を信じすぎず、でも物事はちゃんと俯瞰して一歩一歩成長していきたいなと思っています

目標にしているアーティストさんはいらっしゃいますか?

一青さん

同期である森山直太朗さんを尊敬しています。彼とは腐れ縁で、音楽番組もよくご一緒するのですが、やはり歌唱力が抜群に素晴らしいなと思います。6年後、彼に「うまいじゃん」と思ってもらえる位、歌えるようになっていたいですね。

一青さんの推薦図書

『世界音痴』(小学館文庫)
著/穂村 弘

歌人・穂村弘のエッセイ集。もうすぐ40歳を迎えるというのに独身、実家で両親と暮らすなさけないサラリーマンの日常をユーモラスかつ自虐的に描く。ホームランボールが怖くて野球観戦ができず、ベッドで菓子パンをかじり、寝すぎで頭を痛めてはバファリンを飲み、また横になる……そんな怠惰な生活を送りつつ、それでも「素敵な人」を目指す男。「自分が世界のスタンダードからズレていると認識している穂村さんが、ボクはこんなことにつまずいています、と綴るのがとにかくおもしろい」と一青窈さん。「私も似た人種なんで、あ〜生きてていいんだとホッとする」のだとか。エッセイ一話ごとに添えられる短歌も必読。

PROFILE

一青窈
歌手

1976年、東京都出身。歌手。慶応義塾大学環境情報学部卒業。2002年に「もらい泣き」でデビュー。代表曲に「ハナミズキ」、「影踏み」など。2004年に映画『珈琲時光』、2008年に音楽劇「箱の中の女」で主演を務めるなど女優としても活躍。近著に『一青窈詩集 みんな楽しそう』(ナナロク社)がある。2014年10月22日に最新アルバム「私重奏」をリリース。2014年11月29日(土)から全国ツアー「一青窈TOUR 2014-2015 ~私重奏~」がスタート。

一青窈オフィシャルサイト

この記事を読んだ人にオススメしたい、かんき出版の1冊

トリリンガルでもある一青窈さんのように、世界中を旅したい方にオススメなのが、世界の絶景と名言を集めた本書。読んだら旅に出たくなる1冊です。

世界の果てで大切なことに気づく100の言葉
宮永千恵 /著 
定価 1,404円(税込)
判型 46判
体裁 並製
頁数 208頁
ISBN 978-4-7612-7045-2
発行日 2014年11月20日
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