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2020年のわたし「鳥肌が立つような最初の衝動を最後まで信じられるか」小橋賢児

俳優、映画監督、音楽フェスのクリエイティブディレクターなど、才能溢れるマルチな活動に注目が集まる小橋賢児さん。その時々で「やりたい、伝えたい」というピュアな初期衝動に真っ向から対峙し、その純度を保ちながら最後まで仕事をやり抜く。そんな小橋さんのクリエイションの哲学、ライフスタイルについて伺いました。

文/土谷沙織 撮影/徳永徹 企画構成・コーディネート/板垣響紀 掲載日:2017/10/26

自分の好きな世界観を知ることが人生のモチベーションになる

アメリカ・マイアミで始まって、現在は世界23ヶ国で開催されているダンスミュージックフェスティバルULTRA。小橋さんが立ち上げから関わる日本のULTRA JAPANも今年で4回目ですね(※2017年は9月16〜18日に開催されました)。

小橋さん

日本におけるULTRAではこれまでDJによる電子音楽をベースとしてましたが、今回からライブステージも提供したのが新しい試みです。エネルギッシュに踊りたい時、まったりチルアウトしたい時、音楽に浸りたい時など、1日の中で生まれる感情の流れに合わせて、過ごす場所を選べるような環境づくりに取り組みました。

なるほど。フェスのお客さんにとって、過ごし方の選択肢が増えるのはすごくいいことですね。来場者はどのくらいの年齢層が多いのですか?

小橋さん

20代を中心に、60代くらいまで本当に幅広い年齢層の方がいらっしゃいます。特徴的なのは中国、韓国、台湾などアジア諸国からのお客さんが2割程度いること。そしてアメリカや遠く南米などからも。海外へのプロモーションは、僕たちで直接はしていません。ULTRA自体がすでに確立されたブランドなので、世界中にファンがいるのです。実際にULTRA JAPANがきっかけで海外開催のULTRAに出かけたという若者が1万人以上いると言われています。僕自身もたまたまマイアミを訪れた時にULTRAに出会って人生が変わったのですが、イベントというものを通して世界に繋がるきっかけを得るというのは、すごく大きなこと。自分の好きな世界観を知ると“want to”が生まれ、その先の人生のモチベーションにもなると思います。

お台場で開催されたダンスミュージックフェス「ULTRA JAPAN 2017」の様子。
@ULTRA JAPAN 2017

それは、小橋さん自身もイベントから得た体験、感動を今の仕事に生かしているということですか?

小橋さん

そうですね。チケット1枚を買うことへのワクワク感も含めて、自分が体験してきたことを踏まえて、お客さんの目線に立って考えることをしています。最初にULTRAが日本に上陸するとなった時に、僕がまず作ったのは主催者側とお客さんがコミュニケーションを図るSNSと、おしゃれをして行ける場を提供するファッションのチームでした。音楽好きな人にももちろんですが、もともと音楽に興味がない人に新しい自分・新しい感情に出会って欲しくて、そういったアプローチを考えたのです。

SNSをビジネスツールとして活用する際、イベント前の告知がメインになると思いますが、なぜULTRA JAPANは年間を通してコミュニケーションを続けているのですか?

小橋さん

ビジネスである以上、チケットを売るということはもちろん大切なのですが、時には全く関係ないことを呟いたりしています。「良い週末を! 」とか、「夏が始まったから、みんなでおしゃれして出かけよう! 」とか。そういう投稿を疲れている時なんかに見たら、ちょっと気分が上がりますよね。そんな風に年間を通して友達みたいなソーシャルコミュニケーションをしています。イベント直前だけ盛り上がればいいのではなく、主催者と観客という垣根を越えて、一緒にイベントを作り上げて、一緒にワクワクしていく仲間のような関係性を意識しています。

クリエイションの源は、自分自身が感じた何かしらの違和感

小橋さんは、クリエイションの動機をどういうところから得ているのですか?

小橋さん

ものを作る時、何かしらの違和感みたいなものがきっかけになることが多いです。例えばマイアミのULTRAは、青空の下で人々が解放されて世界中の人が音楽を通じてつながる、すごく明るくてハッピーな場でした。かたや日本では、ダンスミュージックやクラブイベントは、かつて悪い奴らが集まる場所みたいなネガティブなイメージが強かった。この差って何だろう? もし、みんなが不可能だと思っているULTRAを東京のど真ん中で起こしたら、それを体験した人たちの未来が変わるかもしれない。そう思ったのが、僕の「このイベントを日本でやりたい」という最初の衝動になりました。

インタビューは小橋さんの素敵な事務所で行われました。アート作品や、土足厳禁なスペース、屋外にはベンチもあり、クリエティブな発想が生まれる空間。

イベントを開催すると、省庁を始め、他分野との関わりも多いと思います。そういったものをまとめ上げていく中で苦労もあるのではないでしょうか?

小橋さん

日本は世界の中でも規制や法律が厳しいです。もちろんルールを勝手に変えることはできないけれど、何か打開策があるんじゃないか、ということで、2年目から消防庁とか公安と僕も直接話すようになったんです。やっぱり対面して心と心で話をすると、「実はこういうやり方もある」と向こうからも提案してくれるようになる。お互いに少しずつ歩み寄っていくことが大事ですね。
実は、規制のすべてがネガティブなわけじゃなくて、逆に新しいアイディアが生まれるきっかけにもなっています。例えば今年やった花火イベントSTAR ISLANDでは、花火を打ち上げる場所と観客との間に300m以上の保安距離が必要ということで、その空間を埋める要素として3Dサウンド、ファイヤーパフォーマンス、ウォーターパフォーマンスを組み合わせるという、新しい発想につなげることができました。それはやはり、行政の方と直接対話してできることの可能性を探ったからだと思います。

日本が世界に誇る“花火”と最先端のテクノロジースが融合した世界初の未来型花火エンターテインメント「STAR ISLAND」。

諦めずに、できることの可能性を探ることが大事なんですね。逆に、失敗した時の小橋さん流の乗り越え方があれば教えてください。

小橋さん

僕は、基本的に諦めた時点が失敗だと思います。ゴールをどこに設定するかですよね。きついことがあっても、それは過程に過ぎない。この先に起きる新しい自分になるためのプロセス、新しいステージに上がるためのきっかけだと思うようにしています。嫌なことが起きると、むしろ「来た、来た、来た〜!」みたいな(笑)。最初の「やりたい! 」という鳥肌が立つような衝動を最後まで信じられるかどうかです。諦めそうになった時、そこにいつも立ち返るようにしています。ビジネスも、冒険も、自分でブレーキをかけることさえしなければ、自分の想像を超えるところに行ける可能性があると思っています。

人生のターニングポイントで旅をされていますが、小橋さんはなぜ旅をするのでしょうか?

小橋さん

僕の中で大事にしている“中道”という言葉は、両極を知って真ん中にある本質を知るという意味です。ひとつのコミュニティにいると、知らず知らずのうちに自分たちの常識に凝り固まってしまいがち。旅をして新しい価値に出会うことによって、人に流された考えではなく、自分自身の中心にある本質を知ることができる。そういう意味では、自分が苦手だと思って避けていた人と対話してみることも旅なんです。固定概念でやめていることや諦めていることの先には、実は自分の大事な部分に気づけるチャンスがある。だから旅は、物理的に距離を移動することだけではないと思います。

今年お子さんが生まれたそうですが、それによってご自身のライフスタイルは変わりましたか?

小橋さん

今まで週末は結構自由に遊んでいたのですが、息子が生まれてからは家族デーになりました。自分が父親になってすごく思ったのは、自分の軸は仕事じゃなくて家族にあるということ。家族を知るって、結局“愛”を知ると言うことなんです。愛を知らなければ、本当に世界に届くものやサービスを作れないと思います。そういう意味では、もっともっと家族と向き合わなきゃいけないと思っています。仕事が忙しいから家族と過ごせないなんて、本末転倒ですからね。

「今は、毎日の子どもの変化、成長を見守るのが楽しい!」

それでは最後に、東京オリンピックが開催される2020年頃の未来展望を教えてください。

小橋さん

2020年をきっかけに、世界の人が日本を知り、日本人が日本を知ることが大事だと思います。だから2020年までに僕たちが世界の人たちにどう日本を伝えるかということを考えていかないといけない。僕は日本が一番伝えるべき精神は、調和の“和”の心だと思っています。どんな思想も文化も否定するのはなくみんなで手をつなぎましょうという、受け入れる心というのを本質的に伝えられれば、世界がいい方向に向かうきっかけになれるのではないでしょうか。おもてなしの心も、日本人が見えないものを感じる感覚を持っているからこそですよね。そういうのをもっと大事にして、2020年をみんなで迎えられたらすごくいいな、と思います。


小橋賢児さんの推薦図書

『超人の秘密 エクストリームスポーツとフロー体験』(早川書房)
スティーヴン・コトラー/著, 熊谷玲美/翻訳

超人的な偉業を成し遂げた世界のエクストリームアスリートに取材して、その超人的能力の秘密をさぐるノンフィクション。彼らがその能力を発揮するのは、“フロー”という、外界を遮断した完璧に集中した状態になれるからだと言われています。「友達に紹介されて最近読んだのですが、すごく面白かったです。フローってどういうことかと言うと、究極の忘我の状態。例えばエクストリームアスリートの人たちって、骨折していてもさらに飛べたりするんです。人間の可能性の極限を超えていることをできる状態って何なのか。瞑想でもそのフロー状態に入れるのですが、この究極の忘我の境地に注目してます。
僕も厳しい山に登った時に自我が取れて、何かとつながって想像していなかった力が湧いてくる感覚を味わったこともあり、すごく興味のあるテーマなんです」

©映画「Noise」製作委員会

INFORMATION

映画「Noise」

小橋さんが久しぶりに役者として映画に出演! 秋葉原で起こった無差別殺傷事件の真相は何であったのか、犯人は何故事件を起こしたのか…。事件の被害者にも、加害者にも成りえた「普通」の人々が織り成す、狂気と混乱そして再生への物語。監督・脚本は松本優作、出演は篠崎こころ 安城うららほか。2018年初旬、全国公開予定。モントリオール世界映画祭、レインダンス映画祭にノミネート。

映画「Noise」公式サイト

この記事を読んだ人にオススメしたい、かんき出版の1冊

ワクワクしながら仕事を楽しんでいる小橋さん。小橋さんのように「楽しみながら結果を出す考え方」と「実践的ビジネス技術」を公開した本が『心が自由になる働き方』です。著者はエンターテイメント技術の世界のトップ企業である米国ドルビー社・日本法人代表取締役社長にヘッドハントされ(※映画館でおなじみのドルビーサウンドのドルビー)、自由な心で仕事を楽しみ「仕事のプロ」と呼ばれる世界のエリートたちに数多く接してきました。彼らから学んだ極意をぜひ体感してみてください。

心が自由になる働き方
心が自由になる働き方
大沢 幸弘 /著 
定価 1,404円(税込)
判型 46判
体裁 並製
頁数 208頁
ISBN 978-4-7612-7026-1
発行日 2014年9月1日
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