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2020年のわたし「生き方をスタイリングする新しい職業」

インスタグラムのフォロワーは4.5万人。ファッション感度の高い女性に大人気の大田由香梨さんは、ライフスタイリストという新しい肩書きでモデルのローラさんが編集長を務める『R magazine』のクリエーティブディレクターや、アパレルブランドのコンサルティング、中古マンションのリノベーションを担当するなど既存のスタイリストとは一線を画した活躍をされています。大田さんに仕事の神髄や目指すところはなにか、お話を伺いました。

撮影/榊智朗 企画構成・コーディネート/板垣響紀 文/酒泉ふみ 掲載日:2016/12/9

まずは、ファッションのスタイリストとしての始まりを教えてください。

大田さん

漠然とファッションに関係することで生きていきたいと思っていて、洋服屋さんで販売員をしているときに、運よく師匠となる方に出会えたんです。そこから2年間スタイリストアシスタントを勤め、22歳で独立し、雑誌『ViVi』(講談社)を中心にトレンドを発信する仕事からスタートしました。スタイリストになって10年以上経ちます。

ファッションスタイリストは華やかなイメージですが、ハードワークとも聞きます。ご自身ではどんな世界だと思われますか?

大田さん

確かに、スタイリストという仕事はキラキラして見えますよね。でも、実際は地味な作業も多くて、辞めていく人もたくさんいます。「おしゃれだから」と表面的に憧れて、現場を目の当たりにすると、ギャップを感じてしまうようです。人生のミッションが「隣の人を幸せにしたい」だったとして、それはスタイリストでもマッサージ師でも実現可能だと思うんです。
私は初めて撮影現場に行ったときに、めちゃくちゃ幸せを感じました。フォトグラファーもヘアメイクも、そこで働いていた人たちがみんな格好良かった。全員プロフェッショナルで、素敵な方々ばかり。こんなに素晴らしい仕事があるんだ!と感動しました。その幸せな体験があったので、自分の軸が定まったんです。それ以降はどんなに大変でも辛いと思ったことはありません。

大田さんのスタイリングはマニッシュでありながら、女性らしいコーディネートが人気。コーディネート検索アプリ「WEAR」や、インスタグラムなどで、大田さんの着こなしを参考にする女性は多い。
(画像は大田さんの著書『THE LIFESTYLIST』より)

ローラさんとの共同作業やカフェオーナー…
全方位150%で邁進する日々

現在は、モデルのローラさんのフリーペーパー『R magazine』のクリエーティブディレクターも担当されていますね。

大田さん

彼女とはデビュー当時から一緒にお仕事をさせてもらっていて、去年の秋にファンクラブを設立し、会報誌を作りたいと声をかけてもらったのが、このプロジェクトの始まりです。
ファッション以外にも私が、カタログの制作や編集作業をやっていたので、そういうところで声をかけてもらったのかなぁと思います。
スタイルとしては、ローラが編集長で一緒に企画を考えながら、制作全般は私が進めています。作るからには一番いいものを、という強いこだわりが最初からお互いにありました。

いつもは被写体として発信を続けるローラさんが、クリエーターとしての新しい一面を見せる『R magazine』。Vol.5以降を入手したい方は、ローラさんのインスタグラムをチェック(画像は大田さんの著書『THE LIFESTYLIST』より)。

お2人で一緒に取り組むなかでポイントになっていることは、何ですか?

大田さん

彼女と私が似ているところは価値観なんです。人生の歩み方や考え方、仕事に対しての捉え方。一度きりの人生なので、常にチャレンジしたいという気持ちですね。もっと人を幸せにできるんじゃないかって。大きなことを言えば世界が平和であってほしいという気持ちがあります。最初はスタイリストとモデルさんの関係でしたが、今はお互い学びあい、高めあえる仲です。誌面を通じて心を伝える方法を二人で模索しています。そういう人と一緒に仕事ができることはとても幸せです。

働いている人に共通することですが、「またあなたと一緒に仕事をしたい」と思ってもらうには何が大切だと思われますか?

大田さん

私のやりかたで言えば、すごくシンプルなことですが、妥協しないこと。すべをぶち当てます(笑)。全身全霊で、150%で仕事をすることにつきます。

いつも150%発揮ですか!

大田さん

ずっとそうやってきました(笑)。仕事を受けたら、そのすべてに心を向けるのがデフォルトというか。言葉にすると150%という表現になるのかな。それが結果として自分に返ってくるし、自分の生き方になると思っています。自分にとって中途半端な仕事になるのであれば、したくはないですね。

ご自身がオーナーを務めるカフェ事業は、どんな思いで取り組まれているのですか?

大田さん

2011年に家具や雑貨を扱うライフスタイルショップをオープンしていました。そのスペースでカフェを始めたんですが、未経験だったので、カフェの経験があるスタッフに運営方法を教えてもらいながらスタートしました。その時の食材の仕入れ方法は、カタログに載っている食材の品番を書いて注文すると、次の日に届くというものでしたが、食材の産地や生産者の情報が不確かなものでした。
それまで、ファッションの仕事をしてきた私には、この発注システムに違和感を覚えました。ファッションでたとえると、デザイナーは誰か、なぜこの洋服がこの金額で私の手に届いたのか、そういう背景を知ることはとても大事なことだと思います。それを知らずに飲食店を経営していることに気づき、大変なことをはじめてしまったと責任を感じました。

そこからマクロビコーチの西邨マユミさんからいろいろ教えていただきました。2014年、移転をきっかけに、より「食」にフォーカスしたお店へリニューアルしたんです。信頼する生産者のオーガニック食材を使う。化学調味料を使わない。食べる人を想い、丁寧に調理して、提供する。そういう信条で運営しています。

神宮前にある大田さんがプロデュースしたORGANIC TABLE BY LAPAZ。体と心に嬉しいオーガニックの食事を提供している。DIYしたこだわりの内装やおしゃれなインテリアも必見です(画像はLAPAZのサイトより)。

「食」というジャンルのスタイリングのはじまりですね。

大田さん

スタイリストをやっていると、キレイなモデルさんに大勢会いますが、顔が整っているから美人というだけでなく、本当に素敵な人は、内面から輝くモノをもっていると感じます。人は見えない力で輝くと思うんです。たとえば、食に関心を持ち、学んだその知識が自信になります。人は食べたもので細胞が作られますし、その人自身を形成する意識もそこから生まれると思います。ファッションは表面的なことに見られがちですが、服を着る人のマインドを変えると思います。食物も食べた人の心に作用して、アウトプットが変わる気がします。相反するように思えるかもしれませんが、お互いに影響すると考えてるんです。

働き方も大きく変わられたのではないでしょうか?

大田さん

服もやるし、食の発信やカフェもやっているし、インテリアや内装のスタイリングもしているので、自分が関わっていることは「衣食住」全部になって、28歳からライフスタイリストと名乗りはじめました。生活する上でのベーシックなところを輝かせたい。そこに価値をつけることが自分の仕事だと思っています。

新しく肩書きを作り、それを掲げていくことに迷いがない感じですね。

大田さん

私自身は、迷ったらやらないですね。洋服も同じで、迷ったら買いません。イメージが見えたら実行します。迷うということは、なにか原因があると思うので、「迷ったらやってみろ」と書いてある本もありますけど、私自身はできるだけゴール地点をイメージしてから取り組むように心がけています。

付加価値をプラスをする
魂を入れる仕事

大田さん

私は、販売員の経験があるので、ビジネスの最終地点は「お客様と販売員のやりとり」だと思っています。販売員の方たちに勇気や自信をつけてもらうことが、行き着くところの最後の大切な部分。販売員の方たちがお客様とうまくコミュニケーションできるようになるまでのお手伝いが自分の仕事と捉えています。商品作りに関しては、プロフェッショナルな方々が沢山いらっしゃるので、そこはプロにお任せして、自分はできた商品やお店に魂を入れていく役目だと思っています。

魂を入れる作業とは?

大田さん

スタイリストは、自分でモノを作る仕事ではありません。デザイナーさんが作ったお洋服があって、その服にはそれぞれにみんなの想いがあります。たった1枚の白いTシャツを価値あるものにすることが、スタイリング。それを見て「欲しい」と思ってもらえるよう、既にあるものに付加価値をつけることですね。

デザイナーからの意思を受け取って、そこに大田さんの想いものせて消費者にバトンを渡すようなイメージですね。さて、あと4年で2020年ですが、そこにはどんな展望・思いを繋げていかれますか?

大田さん

あえて自分自身の未来を語らないようにしているんです。大きな夢はあるんですけど、その夢の途中の方法論を先に決めたくなくて。
まずは、当たり前の毎日が輝けるように、お手伝いができればいいな、ということ。毎日朝起きて、服を1着選ぶ。ご飯をいただくときの選択、毎日帰って、次の日を迎えるためのお家がどういうものであるか。日々を過ごすための選択の手助けをしたいです。
トレンドを発信することは、もう自分の仕事ではないのかなと思っています。服を着ることの意味だったり、生き方につながるような発信をしていきたいと思っています。
ライフスタイリストという仕事自体、今までなかったものなので、もっとディテールをはっきりさせて、いろんな人がライフスタイリストを目指してくれるような職業にできたらいいなと思います。

大田由香梨さんの推薦図書

『GO WILD 野生の体を取り戻せ!』 (NHK出版)
著/ジョンJ.レイティ、リチャード・マニング  翻訳/野中香方子

本書は食事、運動、睡眠、思考、自然の中での暮らしを通して、読者のライフスタイルを再び野生化する指南書。「友人が読んでいて手に取った本です。低炭水化物食やマインドフルネスなど、以前から興味がありました。この本によると、ジムで走れば体に筋肉はつくかもしれないけど、脳は全く動いてない、と。でも、トレイルランと呼ばれる自然の中で走れば、滑るといけないから注意しようとか、ジャンプするときの足の裏の感覚を実感しようと。そういう感覚を取り戻さないと人間としての健康や幸福にはつながらない。読んで突き動かされるものがありました」。

INFORMATION

『THE LIFESTYLIST』

大田さん初の書籍。「私のコーディネートやインテリアを真似してくださいという本ではありません。誰かの家に遊びに行くと、次の日に自分の家を模様替えしたくなったり、誰かのインタビューを読むと“そんなこと、考えたこともなかった”と気づきがあったり。そんなきっかけになるといいなと思って作った本です」。大田さんの衣食住に関する考えをビジュアルと文章でまとめたスタイリッシュな1冊。自費出版なので、欲しい方は大田さんのサイトへ。

THE LIFESTYLIST | Yukari Ota | 大田由香梨 ライフスタイリスト

この記事を読んだ人にオススメしたい、かんき出版の1冊

大田さんのお話には「選択する」というキーワードが度々登場しました。わたしたちは身の回りのものをきちんと選択しているでしょうか? 本書はミニマリズム運動を代表する著者による「新ミニマリズム」旋風を巻き起こした話題の翻訳書。ただ断捨離するのではなく、「ものを手放して豊かになる」方法を説きます。

より少ない生き方 ものを手放して豊かになる
定価 1,620円(税込)
判型 46判
体裁 並製
頁数 320頁
ISBN 978-4-7612-7227-2
発行日 2016年12月14日
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