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2020年のわたし「可能性を拡張して心のバリアを解消したい」須藤シンジ/NPO法人代表理事

ハイセンスな障害者用スニーカーや、これまでの電動車イスの常識を覆すようなカッコいいモビリティが並ぶ「 2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展」(通称:超福祉展)。このイベントを主催しているのが、須藤シンジ氏だ。福祉の概念を変える須藤氏の考えとは?

文/大山くまお 撮影/榊智朗 企画構成・コーディネート/板垣響紀 掲載日:2016/04/05

まずは須藤さんの現在の取り組みについて教えてください。

須藤さん

僕が立ち上げた会社がふたつありまして、ひとつはマーケティングのコンサルティング会社のフジヤマストア、もうひとつが世界中のアーティストと一緒に「心のバリアを自由にしていこうよ」「ダイバーシティ(多様性)を実現していこうよ」ということを打ち出したネクスタイド・エヴォリューション。このネクスタイド・エヴォリューションでの活動から生まれてきたのが「ピープルデザイン」という概念です。

本インタビューは、来る2020年の未来予想図がテーマです。須藤さんは、すでに「超福祉展」で未来の形を提示されています。「超福祉展」の軸にもなっているピープルデザインとは、どのような考え方なのでしょうか?

須藤さん

“心のバリアフリー”を実現し、ダイバーシティ(多様性に寛容)な未来を創ることがゴールです。主義主張ではなく、「これ、いいんじゃない?」と楽しく、面白く、カッコよく、可愛く、クリエイティブに自由に表現していくのが私たちの特徴です。そのために、世界中のデザイナーらと組んで、障害者や高齢者などのハンディを持った人たちが街に楽しく繰り出していけるようなスニーカーなどのアイテムを作っていきました。

2012年に公開されたTEDxKids@Chiyoda での須藤さんのプレゼン。
アシックスとコラボしたネクスタイド・エヴォリューションのスニーカーも紹介している。

心のバリアがキーワードなんですね。

須藤さん

そうです。人々が当たり前に混じりあえない原因は、心にバリアがあるからと気がつきました。物理的なバリアは、自然界にもありますが、あって当たり前なんですよね。それをなくすのは不可能です。でも、心のバリアがなくなれば、多少の段差があっても困っている人を手伝ったり、「手伝ってもらえますか?」と言ったりできる。その先に、当たり前に人々が混ざり合っているダイバーシティな世の中があると思います。
金子みすゞさんの「みんなちがって、みんないい」という詩を何十年来、心に留めています。タンポポもあればバラもあれば竹もあればチューリップもあるわけじゃないですか。みんな違っていることに寛容であることこそが、人や国や生物その他が長く生きられる要因になります。それがダイバーシティとともに、世界での主文脈となっているサスティナビリティ(持続可能性)です。そんなシステム作りをMade in Japanでやろうと思っています。

「日本のダイバーシティ化は海外の先進国に比べて遅れている」と断言する須藤さん。
「このままでは日本はヤバイ!」という危機意識が須藤さんを行動に駆り立てている。

息子が障害者として生まれたことから活動をスタート

このような活動を始めたきっかけを教えてください。

須藤さん

きっかけになったのは、自分の息子が脳性麻痺の障害者として生まれたことです。福祉の行政サービスの受益者となったときに感じた違和感から始まっています。最初の頃は、息子と同じような身体障害者、知的障害者に関する活動から枝葉を広げていきました。
ただ、活動をしていくうちに、障害者とはまた違ったカテゴリーの少数派の人たちが存在していることが見えてきたんです。たとえば、子育て中のお母さん。小さな子どもがいつもママの足にじゃれてくっついてきますよね。これってその時間は、常に片足が”不自由”な状態です。エレベーターやエスカレーターのない駅のホームで、子どもを抱っこしながらベビーカーを持って移動したり大変です。ほかにも旅行中、あるいは就労中の外国人は、言語が通じないという意味で”期間限定の障害者”と言っていいと思います。あるいはLGBTといった性的マイノリティの人々。さらに、今後はマジョリティとなっていく高齢者……。
数の上では少数派であるこの人たちの困りごとを、クリエイティブに解決し、元気に社会で混ざってもらうための活動を行っています。そのためには、やっぱり心のバリアを取り去る必要があるんですよね。

その活動の一つが、「超福祉展」につながるんですね。

須藤さん

そうです。最初は、従来の福祉機器にイノベーションを起こそうと思ったんです。かわいそうな福祉機器ではなくて、かっこいい乗り物・モビリティというものに置き換えることで、心のバリアを壊していこうとしたんです。 たとえば、車イス。保険が適用される車イスには、なんだか地味でダサいものしか選択肢にはないんだけど、世界を見渡せば、かっこいいものがいっぱいあるわけです。その選択肢を増やしたいと思ったんです。
その一環で、2014年から渋谷のヒカリエで「 2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展」というイベントを行っています。思わず“カッコいい”“かわいい”と使ってみたくなるデザイン、“ヤバい”テクノロジーを備えた福祉機器を提案し、福祉の枠に収まらないシンポジウムやトークセッションも開催しています。2014年は「テクノロジーのイノべーション」、2015年は「ダイバーシティ」を主文脈にしていましたが、今年は「高齢者」という要素を付加していきます。

僕らが2020年に目指しているゴールは、マイノリティの人たちが抱える問題についての解決策を、テクノロジーのイノベーションによって解決していくことです。僕たちは経済をとても重要視しているのですが、マイノリティのみを対象にした解決策では、マーケットが成立しません。
「超福祉」の取り組みは障害を補うだけでなく、それが市場を活性化して、社会的コストを抑え、納税者を増やし、日本社会の人口減少とそれに伴う税収減を補うことまでを見据えています。クリエイティブなイノベーションとして産業化されれば、内需は拡大し、社会保障を享受する側だったマイノリティが、納税者へと変わっていくのです。

須藤さんは、息子をニュージーランドの学校で育てている。「障害のある子を同学年の子たちと分けてしまう日本の教育制度は健全じゃない。やっぱり混ざってないんですよね」

次なる活動には、どんなものがありますか?

須藤さん

現在、取り組んでいるのは「認知症をコアにした高齢者との共生社会の実現」。日本の大学とオランダの大学と組んで、最終的には課題解決型の製品とサービスの開発、政策提言を行っていく予定です。現在、川崎市と渋谷区のふたつの行政とタイアップしており、来年以降、こちらからのアイデアをもとに社会実験していきます。社会実験の結果から得られたロールモデルを、日本の地方都市や世界に向けて無償で提供していきます。

そして、障害者の社会参画を促す「働くカタチ」というものの提案ですね。
現在は、スポーツや音楽などのエンターテイメントの領域において、障害者と健常者が混ざり合いながら楽しく仕事を体験してもらう、「就労体験」を行っています。来年度からは完全な就労スキームとして、今までにないカタチの「15分単位のアルバイト」で、最低賃金を保障するという施策をローンチさせようとしています。これらは、東大の先生方や行政などに協力を頂いて、定量化できるよう取り組んでいきます。
この2つと、超福祉展という活動。これを混ぜていくのが、いまとこれからの僕たちのダイバーシティ化の取り組み提案ですね。

2020年までにやることがいっぱいですね!

須藤さん

時間が全然足りないですよね(笑)。今後4年の間は世の中の風が前に向かって吹いています。この風が吹いているうちに、いくつもの選択肢を打ち出して、具現化していけるかどうかが勝負だと思っています。2020年まで、あっという間だと思います。その時間を大事に使いたいですね。

須藤シンジさんの推薦図書

『多数決を疑う―社会的選択理論とは何か』 (岩波新書)
坂井豊貴/著

年間100冊以上の本を読むという須藤さん。最近は民主主義や国の成り立ち、哲学などの本に興味があるとのこと。現在の愛読書は『多数決を疑う――社会的選択理論とは何か』。選挙制度をはじめとして、我々の生活の根幹を支える“多数決”という仕組みが抱える問題点をあぶり出し、改善策を提案していく話題の本だ。「原発事故以来、この国では市民の声がまったく届かなくなってしまいました。最近の時勢を反映している内容の本です」と須藤さん。著者の坂井豊貴氏は、慶応大学で社会的選択理論とマーケットデザインを専門に研究している人物。「この方のように、領域をまたいで研究することで新たな発見が生まれる時代だと思います。僕たちも領域をまたいで福祉や経済の問題に取り組んでいきたいですね」。

PRESENT

須藤さんの著書とコミュニケーションチャームをセットで1名様にプレゼント

「息子が履ける、カッコいい靴がない!」を原点にファッションの力で福祉を変えてきた須藤さんの想いが詰まった1冊。表紙に使われているのは、NPO法人ピープルデザイン研究所が制作したコミュニケーションチャーム。これは街中で「困っていたら私に声をかけてください!」、「ハンディがある方をサポートをします!」という意思表明のサインとして身に付けるチャームです。
プレゼントご希望の方は、お問い合わせより「その他」をチェックし、プレゼント希望の旨をお書き添えください。締切は2016年5月31日24時まで。当選者にはこちらからご連絡を差し上げます。

この記事を読んだ人にオススメしたい、かんき出版の1冊

取材中、何度も出てきた「ピープルデザイン」という言葉。実は『すごいメモ。』著者であるコピーライターの小西さんが命名。「自分の取り組みをひと言でわかりやすく伝える言葉があれば…」と思っていたときに小西さんと出会い、依頼したそう。ネクスタイド・エヴォリューションのキャッチコピー「違いは、個性。ハンディは、可能性。」も小西さん作。「わかりやすい言葉は最強の武器なんですよ!」と笑顔の須藤さん。詳しいやりとりは須藤さんの著書に書かれているのでぜひ『すごいメモ。』とセットでご一読を。

仕事のスピード・質が劇的に上がる すごいメモ。
仕事のスピード・質が劇的に上がる すごいメモ。
小西 利行 /著 
定価 1,512円(税込)
判型 46判
体裁 並製
頁数 256頁
ISBN 978-4-7612-7142-8
発行日 2016年1月18日
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