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2020年のわたし「「多幸感」が創作の大切なキーワード」

ひと目見ただけで色濃く記憶に刻まれるキム・ソンへさんの「シャンデリアアート」は、どこか懐かしく、それでいて前衛的な魅力があります。発想の源、そして、アーティストであり母である自分の在り方について伺いました。

文/両角晴香 撮影/榊智朗 企画構成・コーディネート/板垣響紀 掲載日:2015/11/30

シャンデリアというとクリスタルや鉄をイメージしますが、キムさんの作品はぬいぐるみやオモチャなどをコラージュされてます。この作風は、どうやって生まれたんですか?

キムさん

専門学校卒業後に入ったファッションブランド『ノゾミイシグロ』での経験がきっかけでした。もともとファッションに興味があったんですが、なぜか入社後すぐ洋服ではなくディスプレイなどの部署に配属されて。その現場で、ユニークな演出家さんに出会ったんです。壁にミラーを一枚一枚貼ったり、石でライトを作ったり、とにかく発想がぶっ飛んでました。それを見て、ライトでも自分で作れるんだと思って、腕試しにはじめて作ったのが、ぬいぐるみのシャンデリアでした。

なぜ、光を通さないぬいぐるみだったんですか?

キムさん

子どもの頃からぬいぐるみが大好きで、自宅に売るほどあったからです(笑)。
シャンデリアは家族みんなが集まる場所にあるものですよね。明るい光を灯してくれるものが見た目にも可愛かったら、心も癒されるんじゃないかと思いました。それと、誰も思いつかない新しいことがやりたかったんです。いずれは捨てられる運命の廃材やオモチャをパーツにすることで、日の目をみることができるなと思いました。燃えやすいものは配線を考慮して組み合わせています。

近年は、熊手など多幸感あふれる縁起物を作品に取り入れることが多いそう。

デザインはどうやってされていますか?

キムさん

実は設計図もラフもない状態で、思いつくままに手を動かしていきます。完成型は、自分でも最後の最後までわからない、未知の世界です。

キムさんは、3児のママだと伺いました。どんな風に制作とのバランスをとっているんですか?

キムさん

今回の個展の準備では、小学一年生の長女は手先が器用なので、タグをつけたり、袋からパーツを出してくれたりして立派な戦力になってくれました。子どもたちが、いつも力をくれるんです。母親になる前は、昼夜問わず作品づくりに没頭していたので、環境がそうさせると言いますか、中にはグロテスクな作品もあったんです。子どもが生まれてからは朝日をあびて健全な時間帯に作業しているせいか、「作風が変わった」と言われるようになりました。良くも悪くも毒が抜けたんでしょうね(笑)。遊び心は持ち続けたいですけどね。
子どもたちと密にコミュニケーションをとれるのは、子どもが小さいうちだけでしょうから、ワークライフバランスをきちんとはかりたいですね。今はなんとか一人で制作していますが、今後大きなプロジェクトを担っていくためには、信頼できるスタッフさんに頼ることを視野に入れていい時期かもと思ってます。
あとはもう、近くに住んでいて手伝ってくれる母に感謝しかありません!





のりやペンなどの文房具をコラージュした作品はボリュームを出すのに苦労したとか。
一番下は木村カエラとのコラボ作品。

どのアーティストとも違う
自分らしい美を追求していく

今回開かれた個展は、活動10周年記念ということですが、この10年、走り続けてきた中で、葛藤などはありましたか? またどのようにして切り抜けたのでしょうか。

キムさん

実はここ1〜2年、自分の作風についてすごく悩みました。もともとシャンデリアアートは、人と違うことがしたい一心ではじめたことです。それが最近はどことなく似た作品を、たくさん見るようになりました。そうなると初期の頃のような新鮮さは薄れますし、他のアーティストさんと作品を間違えられることも……。とても切ないことです。一時はひどく落ち込んだけれど、立ち止まるわけにはいきませんので、もう一度クリアな視点で作風を見直してみることにしたんです。

具体的にどのような方向にシフトされたのですか?

キムさん
個展会場では、熊手づくりのワークショップを開催。ファンにはたまらない贅沢な時となった。

たとえば、私はジャンクなものが大好きです。オモチャや、ぬいぐるみなどですね。それらを使うこと自体は変わらないのだけど、単なるカワイイ・カルチャーからは一線を画したいという思いがありました。アートとしての美をちゃんと追求したい。
フォトグラファーの市橋織江さんにお願いして、学校や公共の場を使って作品撮りをしたのも、そんなことが理由でした。表現の幅をどんどん広げていきたいですね。

表現の幅ということでいうと、縁起物などもたくさん使われるようになったそうですね。

キムさん

そうですね、最近、悲惨な事件が多いですが、制作するときの自分のなかのキーワードは“多幸感”なんです。たとえば見るだけでハッピーな気持ちになってもらえるような作品。シャンデリアって存在感がありますし、目で見て楽しめるものです。企業様からコラボレーションのオファーをいただくときも、そのブランドの個性を出しつつ、見る人が笑顔になるような幸せになるような作品作りを心がけています。なので、最近は熊手や招き猫など和の縁起物などもデコレーションに使って、私にしか作れない存在そのものがパワースポット(笑)になるような作品を制作しています。

和のアイテムを使ったものは、まさに2020年に開催されるビッグイベントでもぴったりですね。

キムさん

もし叶うなら東京オリンピックのメイン会場で作品を展示してみたいですね。大胆なコラージュ作品で五輪を描くのも素敵ですし、巨大なオブジェにも挑戦してみたいです。
いろいろなことがあるご時世ですが、自分のキーワードである“多幸感”を大切にして、作品を通して世界中の人を笑顔にしたいです。
今回、木村カエラさんとのコラボ作品も発表させてもらいましたが、あれは昨年書籍でご一緒させて頂いた縁で、お声がけをさせてもらって実現したんです。必死にラブコールとアピールをしたら快諾頂けて、同時に別のところからテディベアのご協賛のお話ももらえて、撮影場所もイメージにぴったりの場所にすぐOKも頂けて。これは、店主の方がカエラさんのファンだったことが大きいのですが(笑)。
自分の気持ちをぶらさず行動していけば、色々なご縁が繋がって形にすることができることも改めて体感できたので、また進化した作品をたくさんの人に見て頂けるように進んでいきたいと思います。

キム・ソンヘさんの推薦図書

『アルケミスト―夢を旅した少年』(角川文庫)
著/パウロ・コエーリョ 翻訳/山川紘矢

世界的ベストセラー小説。羊飼いの少年は夢を叶えるためにピラミッドへ向かう。旅の道中、幾多の壁を乗り越えながら人生を生き抜く知恵を身につけていく愛と勇気の物語。「やりたいとおもったことを実現するためには、自分の心を信じること。でもそれが一番大変だから、信じきる力を鍛えたいんです」。二十歳のころ友人から「ぜひ読んで欲しい」とプレゼントされて以来座右の書となった。「物語を通して、人としてのあり方を学びました。意識付けのために常に心にとめています」。迷いが生じたときに原点に立ち返るためのおまじないだ。

PROFILE

キム・ソンヘ
シャンデリア・アーティスト

織田デザイン専門学校卒業後、デザイン活動をスタート。2005年、セレクトショップ「LOVELESS」にて展示したシャンデリア作品が注目を集める。11月に活動10周年を記念して初の自費出版作品集『Trophy』を発売。購入はキムさんのサイトへ。

http://www.kimsonghe.com/

この記事を読んだ人にオススメしたい、かんき出版の1冊

“幸せ”という言葉を何度も口にされたキムさん。幸せの形は人それぞれだからこそ、幸福とはなにか考えてみると気づきがある。本書はショーペンハウアーによる幸福論。ニーチェ、トルストイ、トーマス・マンに影響を与えた「異端の哲学者」が贈る、心のお守り。

ショーペンハウアー 自分を救う幸福論
ショーペンハウアー 自分を救う幸福論
定価 1,512円(税込)
判型 46判
体裁 並製
頁数 256頁
ISBN 978-4-7612-6878-7
発行日 2012年12月6日
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