学ぶ。みがく。変わる。
HOME セミナー・イベント開催レポート 【実施報告】ビデオOFF会議が組織にもたらす危険性~即生産性が上がるオンラインコミュニケーション~
2022.12.02

【実施報告】ビデオOFF会議が組織にもたらす危険性~即生産性が上がるオンラインコミュニケーション~


AKI(野口 正明)氏(とんがりチーム(R)研究所 主宰/イノベーション創発デザイナー)
宍戸 拓人氏(武蔵野大学経営学部准教授)
初谷 純 (一般社団法人 オンラインコミュニケーション協会 代表理事)

12月2日(金)に人事・研修ご担当者を対象に「ビデオOFF会議が組織にもたらす危険性~即生産性が上がるオンラインコミュニケーション~」と題したオンライン無料デモセミナーを実施しました。オンラインコミュニケーション協会と宍戸拓人先生(武蔵野大学 経営学部 経営学科 准教授)が共同で研修した「オンラインコミュニケーションにおけるビデオONとビデオOFFの影響検証結果」や、オンライン会議運営の良策や、ハイブリッドワークでの組織づくりに関するポイントなどをお伝えしました。当セミナーの内容の一部をご紹介します。

オンライン会議の現状と研究の背景

初谷 純 (一般社団法人 オンラインコミュニケーション協会 代表理事)

テレワークが進み、オンラインで会議が行うことが増えました。ただでさえ、参加者から意見を引き出し、まとめ、結果を出すことが難しい会議ですが、オンライン化により相手の反応が分かりづらく、さらに難しくなっています。
2021年10月にオンラインコミュニケーション協会で実施した「オンライン会議に関する実態調査」でも、約7割が対面会議時に比べ「コミュニケーションの質の低下」を実感しているという結果が出ました。だからといって、テレワークをやめるのではなく、約8割の企業がテレワークを継続する方針であると回答しています(2022年4月実施「テレワークに関する実態調査」より)。
オンライン会議の課題として、「話が長い」「伝わらない」「意見がでない」ということがあります。そもそも、人間は感情の70%を表情や仕草から読み取ります。特に日本人は「顔色をうかがう」「空気を読む」という言葉があるように、非言語のコミュニケーションが主流です。つまり、画面をOFFにして会議に参加していると、相手の感情が読み取れなくなり、会議が非効率になるので、画面をONにすることはとても重要なことなのです。

ビデオONとOFFの違い 研究結果の発表

宍戸 拓人氏(武蔵野大学経営学部准教授)

2022年9月に、武蔵野大学 経営学部 経営学科の宍戸拓人先生とオンラインコミュニケーション協会共同で、オンラインコミュニケーションにおけるビデオONとビデオOFFの影響を検証しました。宍戸先生から研究結果を説明します。
カメラONとカメラOFFのチームをそれぞれ7チームつくり、性別・年齢・コミュニケーションスタイルが混合になるようにチームメンバーを振り分け、コンセンサスゲームを行いました。ビデオOFFのチームでは、メンバーの多様性を原因とする意見対立を避けるようになり、合意まで時間がかかり、その結果、意思決定の質が悪化するという結論が得られました。
この研究結果から、
・多様性が生み出す対立をイノベーションにつなげるためには、意見の内容だけではなく、表情や仕草といった非言語情報を最大限活用する必要がある
・ビデオOFFでは、声のみを頼りに対立解消を進める必要が生じるため、対立に真正面から向き合わず、意思決定の質改善に貢献しないことへと時間が浪費される
・イノベーションを追求する組織においては、ビデオをONにすることは、プライバシー等の面でのコストやリスクを上回るだけの価値を持つ
・逆に、多様性や意見対立を軽視し、創造性発揮を目的としない組織であれば、ビデオをOFFにしても問題は生じない
ということが導き出されました。

【パネルディスカッション】カメラOFF文化の組織に忍び寄る最悪のシナリオ

AKI氏(とんがりチーム(R)研究所 主宰/イノベーション創発デザイナー)

(初谷)ところで、いい会議とは何でしょう。
(AKI氏)今までは、なんとなく答えが見えていたので、その答えに向かって議論を進めていけばよかったのですが、いまはVUCAと言われているように、確からしい答えが見えない時代です。情報伝達ではなく、会議の中でアイデアを出していく必要があります。創造性の要素が強い会議が、今の時代の「良い会議」と言えでしょう。オンライン会議で創造性を高めるポイントとして、「会議の仕立てそのものを変える」「冗長率を意図的に高める」「ツールを有効に活用する」という点があります。冗長率というのは、話の本題に直接的に関わらない情報をどのくらい含んでいるかということです。「遊び」「余白」のような周辺領域の話の中には、重要な要素が含まれています。また、普段の会議でもチャットを活用しましょう。あまり発言しない人がチャットには書き込みやすく、こんなことを考えていたんだという発見があるので、チャットによる発散機能は絶大です。
(宍戸氏)ある論文で雑談が効果あるかないかという研究がありました。その研究者は、スクリプトというコンセプトを使っていて、場には「誰が、いつ、何の話をしていいか」という書かれていないルールがあって、それを変えない組織は変わらないという結論がまとめてありました。会議と切り離された場で雑談を行っても、スクリプトは変わらず、会議の場に戻っても何も変わらない、ということが起こってしまいます。「誰が、いつ、何の話をしていいか」を壊していくような働きかけが大切です。それをビデオOFFでは難しいだろうなと思います。
(AKI氏)オンラインの中に雑談的要素を埋め込むのは結構意図的な工夫が必要です。従来のスクリプトをどのように変えていくのか、意図的にリーダーが仕掛けていく、崩していくことが大事なことです。立場が上の方が率先して変えていくことが効果的です。
(宍戸氏)全体方針としても実行しないということはよく聞く話。ちょっと実験して、ちゃんとできなかったという結果を見せて変えていくとうまくいくという研究がありました。トップダウンで改善するときに、トップは号令するけれども、なかなか現場に浸透しない。部門を限定して実行してみて、失敗させて改善していく組織変革の事例がありました。
(AKI氏)別の方向して考えられるのは、オンラインはフラット性が確保されやすい特性です。リアルの場で一人ひとりが発言していくと、上の方を意識して、委縮したり、遠慮したりすることがあります。チャットのような一斉に書き込めるものはまさにフラット性です。オンラインホワイトボードを使うことがあるのですが、役職とか関係なく、書き込んでいく傾向があり、物理的にフラット性が確保できる。上の人への慮りを外す目的としてもテクノロジーをうまく使っていくことはあり得ると思います。
(宍戸氏)例えば、座る場所、姿勢など細かいシグナルでパワーバランスをみています。オンラインはそのシグナルがなく、チャットにしても部長からしか書き込めないような仕様にはなっていません。テクノロジーの持つカジュアル感はポテンシャルに繋がるのではないかと思います。
(AKI氏)ツールとしての特性を活かすことは、それ単体だけではなく、心理的安全性、環境づくりを組み合わせて、創造的な場をつくっていくかが大切ですね。
会議も画面をONにする/OFFにするではなく、目的に応じて、しっかりとした体験から振り返り、基準をつくり、「こういう理由だからONがいい」などと考えていくといい使い分けができていきます。

今、組織が取るべきアクションとは?

いきなり社員に対して「画面ONにしなさい」と強制することは非常に難しいことです。オンライン会議やテレワークのテクニックと併せて、社員に画面ONの必要性を伝えることが良いでしょう。2022年4月に実施した「テレワークに関する実態調査」で、リモートワーク導入前と導入後で、エンゲージメントサーベイや従業員満足度は変化したかを調査していますが、「アジェンダを共有しながら進行する」「会議・ミーティング以外でメンバー同士のコミュニケーションが図れる雑談時間を設けている」「勉強会・セミナー実施」を行っている組織は、ポジティブな変化あることがわかりました。
オンラインコミュニケーション協会では、「オンライン会議ファシリテーション術」「Zoom、Teams超活用研修」「画面共有機能をつかった戦略的対話術」などの社員向けの研修を提供していますので、ぜひご相談ください。

ご参加者の声

・少人数では全員マイクONでのリモート会議を積極的にやってみます!
・会議の目的によって、カメラのON/OFFを使い分けていきたい。
・早速、今日のデータを広めようと思います。
・2020年4月からコロナでテレワークが半強制になり、ネット回線が脆弱だったのでカメラOFFが推奨されました。その流れで現在もカメラOFFなので、回線の増強とともに見直したい。
・カメラOFFだと場の雰囲気がわからない。
・社内でカメラOFF派とON派が分かれているので、なかなかルールとして強制するのが難しいです。他社でどのように対策を取られているのか具体的に知りたいです。
・オンラインに向いている会議目的と対面の方が向いている会議を整理せずに実施されていることが会議生産性の低下の大きな要因だと思います。 その上で、オン/オフを考えたいと思いました。
・オンの場合とオフの場合の会議に関するデータについて、参考になった。
・健全な対立を避ける傾向にあること。意思決定の質が低下することが印象に残った。
・ビデオONが統計的に効果ありとわかった。
・何となく感じていたカメラON・OFFの印象を実態調査を基に統計として結果が出たのが非常に説得力がありました。部内会議などでカメラOFFのお通夜会議の部署もあるので、調査結果を社内に公開してカメラONでコミュニケーションが活性化することを期待してます。
・ハラスメントとの兼ね合いです。強制はできないが、推奨はしたいところで押し付けがましく感じない、うまい案内方法があれば知りたいです。
・「ビデオOFFがデフォルトになっている組織は、話し合っているフリが常態化している」と言われたとき、かなりドキッとしました。
・皆さまがおっしゃられていたように、カメラON/OFFはそもそもの問題ではなく、他の根本的な組織課題があることは感じていました。その壮大な問題に向き合わないと何も変わらないなと強く感じながら、そこに向き合うことは大変だなと不安もあります。
・カメラのONOFF問題はZOOMなどを導入時からありました。よほどのことがない限りはカメラONにする必要性の説得材料が現段階足りなさがあったので、この機会の内容でより説得することができそうです。

講師プロフィール

初谷 純 (はつがい じゅん)

一般社団法人 オンラインコミュニケーション協会 代表理事

<経歴>
大学卒業後、株式会社成城石井に入社。輸入ワイン、洋酒の仕入れおよび営業部門を担当。
JSA認定ワインソムリエ資格を取得し高い実績をあげ、当時最年少で管理職へ抜擢される。
その後、ビジネスパーソンのスキルアップ支援ビジネスを展開する、株式会社かんき出版に参画。コンサルタントとして、クライアント企業の組織開発や風土改革、社員教育等の支援に携わる。
一方で、一般社団法人オンラインコミュニケーション協会を設立。
ZoomやTeams等に代表されるオンライン会議ツールや、Slack等のチャットツールを活用したオンラインコミュニケーションに関する調査、研究を行う。また、昨今はアバターやメタバースを活用した会議や組織コミュニケーションの新たな可能性を探っている。働き方改革やリモートワーク推進を図る組織向けに、オンライン会議術やチャットコミュニケーション術等の研修やコンサルティングを提供している。豊富な調査データに裏打ちされた“画面越しのコミュニケーションメソッド”は、生産性向上や、組織内外のコミュニケーション活性化に有効であると高く評価されている。
これまでサポートしてきた法人企業、公共団体向けの、オンラインツール活用の支援実績は300社、画面越しで出会ったビジネスパーソンの数は1万人を超える。協会のミッションは『画面越しのコミュニケーションをよりスマートに、より豊かに』

<著書>
『直接会わなくても最高の成果が出る オンラインコミュニケーションの教科書』(かんき出版)

<メディア掲載>
東洋経済オンライン、@DIME、現代ビジネス、プレジデントOnline、FNNプライムオンライン、Yahoo!ニュース、その他多数(敬称略)

<調査実績>
・オンラインコミュニケーションにおけるストレスに関する実態調査
・取引先とのオンラインコミュニケーションに関する実態調査
・テレワークに関する実態調査
・オンラインコミュニケーションにおけるビデオONとビデオOFFの影響検証 など

<導入実績>
・大手SIer N社:リモートコミュニケーション術講座
・大手医薬メーカー J社:Teams、Office365活用講座
・エネルギー H社:テレワーク術講座
・大手建設 N社:オンライン会議術講座 など多数

https://onlinecommunication.jp/

close
pagetop