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2022.06.13

【実施報告】若手社員の早期離職防止のために、企業・マネジャーが行うべき具体的対策


世古 詞一氏/株式会社サーバントコーチ 代表取締役
井上 洋市朗氏/株式会社カイラボ 代表取締役

6月16日(木)に「若手社員の早期離職防止のために、企業・マネジャーが行うべき具体的対策~離職の三大原因からみる対話の効果性~」と題した無料セミナーを開催しました。“離職防止の専門家”である株式会社カイラボの井上洋市朗氏と、1on1の第一人者である株式会社サーバントコーチの世古詞一氏をお迎えし、若手人材が離職に至る理由の本質と、離職防止のために企業・マネジャーが行うべき具体的な対策についてお伝えしました。セミナーの一部をご紹介します。

早期離職白書から見る若手社員の早期離職の3大原因(井上洋市朗氏)

カイラボでは、新卒で入社し、3年以内に早期離職した人へのインタビューやアンケートを行い、「早期離職白書」を発行しています。2012年から行い、今年の5月末に2022年版を出しました。本日は、これまでのインタビュー調査から、企業が行うべき若手社員の離職対策5つの対策と具体的な進め方7つのステップをご紹介します。

3年以内の離職者に対して、どんな理由で退職したのかをヒアリングしたところ、「尊敬できる上司がいなかった」「会社の制度などに理念は反映されていなくて、飾りだけの理念に失望した」「自分の成長のスピードに限界を感じた」「パワハラがあった」「自社の商品がお客様にとって魅力的ではないと思った」という声があがりました。
辞める理由には「きっかけ」と「決め手」があり、モヤモヤ期には会社の欠点ばかりが目に入っていしまいます。
辞める理由は大きく3つ。
会社において自分の存在が認められているかという「存在承認」、仕事を通じて社会・職場で貢献できていると本人が感じている「貢献実感」、今の仕事を続けることで将来なりたい自分になれる予感がある「成長予感」が満たされていないと早期離職に繋がることが分かりました。

厚生労働省が発表している離職者の推移をみると、過去20年間の大卒者の3年以内の離職率はほぼ横ばいの傾向です。「最近の若い人は昔よりも辞めている」わけではありません。もし、早期離職が多いという課題があるのであれば、その原因は本人ではなく、会社側にある可能性がありますので、上司やOJT担当者など若手社員の育成に携わる人のアップデートが求められます。

若手社員のエンゲージメントを高める対話の必要性とは(世古詞一氏)

エンゲージメントというのがそもそも何なのか?について整理していきたいと思います。似たような言葉に「従業員満足度」「組織ロイヤリティ」「従業員エンゲージメント」がありますが、その違いを解説します。
・従業員満足度(ES):「満足」→今の環境や待遇に満足しているか?
・組織へのロイヤリティ:「忠誠」「忠実」→従業員が組織の方針にどう従うか
・従業員エンゲージメント:「約束」「婚約」→従業員が自ら組織に貢献していこう思う意欲(熱意)ある状態

「従業員満足度」と「組織へのロイヤリティ」は、組織と従業員が“上下の関係”を前提としています。一方で、「従業員エンゲージメント」は組織と従業員が“対等の関係”の繋がりを前提としているので、従業員と対等のパートナーとしてのコミュニケーションができているかがポイントです。特に若手に対しては、上下のコミュニケーションになりやすいので注意が必要です。

組織の中でよく行われているコミュニケーションは、短期的な成果や目標・仕事に焦点を当てた「結果を出すための情報交換」です。対等なパートナーとしてのコミュニケーションを行うためには、個人の現状や気持ちや成長や将来に焦点を当てた「対話」が必要です。
対話によって内発的動機づけが起こりエンゲージメントが向上し、自発性や熱意が生まれ、自分に求められている以上のことを進んで取り組むようになります。その結果として、自発的改善やクリエイティブ性、イノベーションが起こりやすい組織に変わります。

【パネルディスカッション】早期離職を防ぐために、組織と個人で必要なこと、やるべきこと

Q.製造現場勤務の社員が早期離職したケースがあれば教えてほしい。
(井上)製造現場の人と話をしましたところ、製造はAIに置き換わってあしまうのではないかという危機感から転職を考えることがあると聞きました。成長予感が見いだせなかったという理由です。このようなご質問の背景には、ご自身の会社で退職者の本音がわからないということがあるのかもしれません。1on1を実施しても、若手社員が本音を話してくれなくて状況が見えない。対話の中で本音をどのように引き出していけばいいのか、世古さん教えてください。
(世古)信頼関係がないと本音は引き出せません。一方で、部下にとって上司は本音を言いづらい存在でもあるので、「本音を引き出さなければならない」とまでは思わなくてよいでしょう。まずは話す場や機会をつくっていくこと。そして、その場を話しやすい雰囲気にしていくことが大切です。さらに、メンバーが話しやすいように、自分から自己開示を行っていくことがポイントですね。
(井上)“本音は上司に話さない”ことを前提に考えて、上司側の自己開示からスタートし、信頼関係を築くといいですね。1on1が雑談にしかならないという声を耳にしますが、雑談だけでも効果があるのでしょうか。
(世古)1on1の目的として、「信頼関係づくり」「目先の成果だけではなく中長期的な成果」「成長促進」「モチベーション向上」「働きがいの向上」と伝えています。雑談がこれらの目的に繋がっていれば、意味のある雑談になると思っています。雑談の内容が業界の話や最新の技術、どんなことに問題意識を持っているかなどの場合は、クリエイティブなことに繋がりますね。ニュースなどの情報のやり取りだけの雑談ではなく、それに対してどう感じたかを深堀していくと、相手をよく理解することができます。
(井上)雑談が信頼関係づくりに繋がれば、本音を話してくれるきっかけになりますね。最近はオンラインで雑談が減っていると思うので、意図的に雑談する場が必要だと思います。

Q.上司は、どのような情報を自己開示すればいい?
(世古)自分の経験談、失敗談、弱みが有効なのでは?現場では上司としてのふるまいが多いと思いますが、これまでに苦労したことや大変だったこと、悩ましいと思っていることを伝えるといいです。
(井上)上司が失敗して成功した話は、若手にとって自慢話にしか思われないことはありますか?
(世古)相手との関係性によります。自慢話に聞こえないように、相手の反応を見ながら、フォローしてきましょう。「相談」という体で話すと、対等なコミュニケーションになり、自慢話と部下にとらえられなくなります。
(井上)自分がいま不安に思っていること、自分が弱点だと思っていることを開示すると、部下も上司に対して「こんな悩みがあるんだ」と身近に感じてくれそうです。

Q.1on1を行う上司に「部下に興味をもってください」と伝えている。しかし、興味を持てる部下と興味を持てない部下がいるという意見がある。うまくマネジメントできないか。
(世古)まず、「興味を持てる部下と興味を持てない部下がいる」ことを自覚することが大切。興味を持てない部下に対する対策を考えていく必要があります。相手がどんな関心をもっているかに興味を持ち、コミュニケーションをとってほしい。部下が好きな「もの自体」に関心を持てなくても、それに関心を持った「動機」に興味をもち、深堀して聞くと、新しい気づきがあるかもしれません。
(井上)離職者インタビューの際に、きっかけや理由を時系列で聞くと、本人が大切なことを話してくれやすい傾向がありました。

Q.入社3年で離職するメンバーが多い。会社(仕事)に対してのモチベーションが低下している事が理由の1つ。モチベーションを維持させるような施策は?
(世古)採用の時点で期待値を上げすぎて、入社前後でのギャップがないようにしておくとか。1年目の社員に対しては面倒をみていると思うが、2年目3年目から人事から手が離れて現場任せになりがち。定期的に人事と面談をしたり、全社でサーベイをとり、どのような理由でモチベーション低下になっているかを把握することが大切です。
(井上)モチベーションの源泉は人により多様。早期離職対策として、管理職、マネジャー、OJT育成者に対する研修を行っています。若手のモチベーションの前に、マネジャー本人のモチベーションは高いのでしょうか。マネジャー本人に、あなたのモチベーションは何?と聞いても返ってこないことがあります。「家のローンのために働いています」と答える人がいますが、そのマネジャーの下で働いている若手のモチベーションは上がりづらいのではないでしょうか。研修では、管理職のモチベーションを言語化するサポートをしています。

Q.1on1を行う際に行う頻度?
(世古)最低月に1回以上とお伝えしています。週1で行っている会社もあります。目的によって頻度を検討した方がいいです。週1の場合、多少業務の進捗を確認して、業務上の不安を取り除いたり、集中して働く環境を整えたりするのも良いです。1回の時間は30分が目安です。
(井上)離職者コメントの“成長予感が持てない”のなどがあるのは、上司のことを知らないからだと思います。1on1を導入して、対話の場を用意しておくと、その場で上司のことを知る機会になり、心理的安全性が高まってきますね。

ご参加者の声

・1on1が雑談になっちゃう問題の解決策として、「目的を明確する」。1on1の5つの目的が参考になりました。
・何より1on1の目的が大事と再確認しました。
・部下が本音を言える「場」を「定期的」に設けていくこと自体が大事、という話が印象に残りました。最も基本的ででも一番大切なところだと感じました。
・『上司のモチベーションを言語化しておくことが大事。』というのが、ツボでした。マネージャーが部下の気持ちに火をつけられるのか、つけるためには自己分析が重要というのはその通りだと思いました。
・早期離職にはきっかけと決めてがあって、その間のもやもや期にいやなところばかりが目に付く・・・とても概念化されていて腑に落ちました。
・モチベーションの低下は周りの人の平均値で決まるという事に対し、非常に合致致しました。
・1on1を実施する際の本音を聞き出すコツや、相手の話に興味を持てなかったとしても因果関係に興味を持つこと等はマネジメント対象者へ指導しやすいと感じたため、早速実践してみたいと思います。
・離職の要因としての「存在」「貢献」「成長」のキーワードが参考になった。
・自己開示のコツは自分の悩みや弱みなどを相談する体で話すことという点が参考になった。
・「モチベーションは一緒に働く人による」「管理職の人々のモチベーションを言語化することが大事」「メンバーのモチベーションを言語化するのが管理職」「尊敬できる上司がいない→上司のことを知らないことが原因」「上司のことを知る時間をつくることが大事」というポイントが印象に残った。
・「上司のこと(人となり)を全然知らない(→尊敬できない)離職者も多い」「“対象の内容”ではなく、その“動機(価値観)”に関心を持つ」というポイントが印象に残った。
・「若手ほど上下関係になりやすいため、組織に貢献しようとする意欲を対等な関係を構築することによって実施することが大切」「部下の関心のあることに関心を持つ」というポイントが印象に残った。
・当社も若手(~3年目)社員の離職率に課題を感じているところでしたので、大変参考になる話がたくさん聞けました。
・マネージャーの1on1の進め方について、非常に分かりやすくお話いただきました。今まで自然なコミュニケーションの中ではぐくまれていたエンゲージメントが、この状況下で「意識的に」やっていかないといけない。このマインドチェンジを管理職に以下に植え付けていくかが重要と捉えました。
・上長は、部下は本音を話してくれないと思っていた方が良い、は自身もマネージャーとして実感がものすごく湧いていますし、なんかふっと楽になれる言葉だなと感じました。

講師プロフィール

世古詞一/ 井上洋市朗 (せこのりかず/いのうえ・よういちろう)

世古 詞一
株式会社サーバントコーチ 代表取締役
一般社団法人1on1コミュニケーション協会 代表理事
株式会社VOYAGE GROUPフェロー/組織人事コンサルタント

月1回30分の1on1ミーティングで組織変革を行う1on1マネジメントのプロフェッショナル。
外資系生命保険会社を経て、「働きがいのある会社2015、16、17」中規模部門で3年連続1位を獲得している㈱VOYAGE GROUPに創業期より参画。営業本部長、人事本部長、子会社役員を歴任の後、2008年㈱サーバントコーチ代表取締役就任。
コーチング、NLP、マインドフルネスなど10以上の心理メソッドのマスタリー。
個人の意識変革から、組織全体の改革までのサポートを行う。



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井上 洋市朗
株式会社カイラボ 代表取締役
一般社団法人プラス・ハンディキャップ 理事

大学卒業後、(株)日本能率協会コンサルティングにて企業の業務効率化などに従事。ストレスが原因で入社2年で退職。
2011年に社会人教育のベンチャー企業でマネージャーを務める。
2012年株式会社カイラボを設立。新卒入社後3年以内で辞めた若者100人インタビューをおこない、その内容をまとめた「早期離職白書」を発行。
現在は多くの企業の若手社員定着率向上支援を行うほか、講演、管理職・OJT担当者向け研修、採用コンサルティングなどを行っている。

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