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2021.09.30

【実施報告】男性育休義務化に向けて人事が考えるべきこととは?

塚越 学氏/山口理栄氏/新田香織氏

9月30日(木)に「男性育休義務化に向けて人事が考えるべきこととは?」と題したトークイベントを開催しました。講師は、男性育休促進法案の成立の件で、国に働きかけをしていたメンバーの一人である塚越 学氏、育休後コンサルタント(R)として育休復帰社員およびその上司向けの研修を提供している山口理栄氏、多様な働き方が可能な制度や運用、職場の意識醸成を社労士の立場から提案・啓発している新田香織氏の3名です。男性育休、女性活躍推進、社内規定・法律のスペシャリストがそれぞれの視点から、今回の育児・介護休業法、改正の背景、法改正に伴い社内規定・ルールはどう変えるか、男性育休が企業にどのような影響を与えるのかなどについて話しました。当日の内容の一部をご紹介します。

男性育休促進法成立の背景

(塚越氏)まず、男性育休促進法成立までの背景を説明します。私は、男性育休義務化プロジェクトチームの一員として、関わっていました。今回の法案は、自民党「男性育休義務化議連」からスタートし、厚労省労政審のメンバーで法案成立に向けて検討を続けて、2021年6月に国会で成立しました。2020年度の国の目標は13%という目標を掲げました。最初は約5%からスタートし、最終的には12.65%にまで上がりました。産業別では金融、製造、教育・複合サービスなどで増加。大企業だけではなく、従業員数500名以下の企業も増えています。

改定内容のポイント

(新田氏)改定内容のポイントを説明します。まず4月からは、妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別周知、取得意向確認の「義務付け」が始まります。「取得の義務」ではありません。取得するかどうかは労働者が判断します。雇用環境の整備は、育休取りやすくするための研修や相談体制を整えることです。10月からは育児休業が分割して取得できるようになります。また、男性版産後休暇とも表現されている出生時育児休業が創設されますので、産後8週間以内に4週間まで、2回に分割して取得できます。申出は休業の2週間前までです。
会社や人事担当が検討・対応することは、制度周知のための説明資料の作成、規定整備、労使協定、テレワークの普及、育児多目的休暇、不利益取扱いやハラスメントの防止などです。

(山口氏)私は育休後コンサルタントとして、女性が仕事と育児を両立し、キャリアアップするためのサポートをしています。女性が働き続けるためには、男性も育児することが求められます。男性に育休をとって育児をしようということを訴求するためにファザーリングジャパンに入り、一緒に父親支援の活動をしています。

男性育児の個別周知と意向確認の重要性について

(塚越氏)国が男性育児参画推進に力を入れる理由の1つは、少子化改善です。夫の家事育児時間が長いほど、第2子以降の出生割合が高いです。6歳未満児のいる家庭の男性は家事育児をしている時間の国際比較で見ると、日本は1時間23分しかしていません。家事育児をしている男性は3割しかいません。今回の改正で、育児も家事も全くやっていない7割がやるよう期待しています。女性の育休制度と退職率のデータでは、制度を作るだけではなく、制度を周知することで退職率が大幅に減少すると出ています。育休を取るとしたら、上司や会社の後押しがあると取りやすいと言われています。女性については会社からの働きかけはありますが、男性に対しては行われていなかったので、男性に対しても取得意向確認の義務がとても大切です。
国家公務員は、2020年4月から男性育休をスタートしました。最初は16.4%の取得率でしたが、育児計画書、引き継ぎ書を上司と話し合って提出するなどし、2020年第一四半期の実績では育休取得率99%、取得日数平均50日となりました。

(新田氏)個別周知と意向確認の時に、取らせたくないニュアンスで伝えることで育児休業をあきらめてしまうことがないようにしないといけません。また上司に相談があったとき、単に「繁忙期だから」という理由で相手の事情を聴かずに別の時期にしたり、出生時育児休業中の就労を強いることがあれば、ハラスメントになります。

(山口氏)女性は、本人がつわりなどがあるので早めに申請します。しかし、男性は体の変化がないので、なかなか言いづらい。男女関係ない取り組みにすることが大切です。

男性版産後休暇の必要性について

(塚越氏)なぜ産後8週間に新設された理由を説明します。ママの産後ケアに集中させるためです。産後はホルモンバランスが崩れます。パパは家庭時間をしっかり確保し、妻のメンタルフォローと育児家事に軸足を移す必要があります。会社にとっては、職場メンバー家族の命に関わる問題なのです。

(山口氏)女性はおなかに子供がいるので、妊娠中から徐々に自分を親として意識するようになります。一方、男性は子供が生まれてからようやく「父親」になるので、母親とは最初から意識の差があるのです。男性に対して、「あなたがやるとかえって大変になるから育児家事をしなくていい」という人もいますが、それを今やってもらわないと、困ります。この先20年子供を育てるのに、父親と母親の間で育児・家事スキルの差が少ない方が、お互いに助かるからです。意識、スキルの差を埋めるための育休なので、女性もパートナーに育休をとってほしい、と働きかけましょう。

男性育休促進のためには「イクボス」が求められます

(新田氏)男性社員と上司との信頼関係が非常に大切です。男性側も育休を取りたくてもなかなか言えない人もいます。

(塚越氏)女性活躍、イクメン、イクボスは3点セットです。男性側のボスと女性側のボスがいます。両方のボスがイクボスである必要があります。それを職場側で変えてくださいという法律です。2021年は、2022年から始まる出生時育休の準備期間です。トップからのポジティブメッセージの発信や、イクボス養成・イクボス職場づくりなど育休を取得しやすい環境構築、個別の働きかけをしていきましょう。男性育休は働き方改革の起爆剤です。これまで誰も休まなかったところ、誰かがちょっとずつ休むようになります。女性も1年取って終わりという制度ではなく、分割で休めます。男女ともに入ったり出たりするという制度になるので、子供が生まれたら、男性女性関係なくちょっとずつ休むものなんだなというマインドチェンジをした上で職場運営を図ることが大切です。育児だけではなく、自分の病気や介護などの理由で誰かが一時的に抜けても成果が挙げられるイクボス職場づくりをしましょう。

ご参加者の声

・義務としたからには、その義務の遂行についての確認や報告などの体制、制度まで整っているのか、形式的なものにならないようさらに勉強して、趣旨に沿った運用が行われるようにしたい。
・今回のセミナーについて、人事として大変勉強になりました。社員への周知方法等、まずは内部で調整が必要だと感じた次第です。
・ご登壇の皆様がとてもわかりやすい口調でのご説明をしてただき、理解が深まりました。
・男性育休は、産後の女性の健康を守ることに繋がるということに気づきました。

講師プロフィール

塚越 学/山口理栄/新田香織 (つかごしまなぶ/やまぐちりえ/にったかおり)

塚越 学
株式会社東レ経営研究所 ダイバーシティ&ワークライフバランス推進部 シニアコンサルタント
NPO法人ファザーリング・ジャパン理事

公認会計士として監査法人トーマツ(現:有限責任監査法人トーマツ)に勤務し、多種多様な会社の監査業務に携わる一方、Deloitteの講師スキルプログラムをクリアし、人材育成セミナー講師を担当。2008年長男時に育児休業を取得。ダイバーシティやワークライフバランス系プロジェクトに所属し社内イベントや情報発信などを行う。
ワークライフバランスの体現者である佐々木常夫特別顧問の下で、企業・労組・自治体などに対し、講演・ワークショップ・コンサルティングを行う。佐々木常夫著書ベストセラー「働く君に贈る25の言葉」をテキストとした実践講座「佐々木常夫塾」を企画し、プログラム構築、講師を担当。数多くのダイバーシティやワークライフマネジメントプログラムを企画・運営している。
また、長男の誕生を契機にNPO法人ファザーリングジャパン会員として、父親の育児・夫婦のパートナーシップなどのセミナー講師やイベント企画等を自治体、労組、企業などに対して行う。
男性の育休促進事業「さんきゅーパパプロジェクト」リーダーとして男性の育休取得に立ちはだかる個人、職場、風土の壁を打破すべく活動中。
2012年より同法人の理事に就任。
イクボスプロジェクトのコアメンバーとして管理職改革のセミナー講師やコンサルティングを行う。
第一子で1か月間、第二子で1か月間、第三子で8か月間の育児休業を取得。

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山口理栄
青山学院大学 社会情報学研究科 プロジェクト教授
育休後コンサルタント®

1984年総合電機メーカー入社。ソフトウェア開発部署にて大型コンピュータのソフトウェアプロダクトの開発、設計、製品企画などに従事。2度育休を取り、部長職まで務める。
2006年から2年間、社内の女性活躍推進プロジェクトのリーダーに就任。

2010年より育休後コンサルタントとして法人向けに育休復帰社員、およびその上司向けの研修を開始。
個人向けには育休後カフェ®を主宰し、全国及びオンラインで随時開催中。
2017年より育休後アドバイザー養成講座を開始。
同年、育休後カフェを開催するための人材として、育休後カフェ・ファシリテーターの育成を開始。

2021年より株式会社山口企画代表取締役。
2021年7月より現職。

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新田香織
多様な働き方コンサルタント
社会保険労務士法人グラース 代表
特定社会保険労務士/キャリアコンサルティング技能士2級

厚生労働省東京労働局雇用均等室非常勤職員(次世代法担当)(2006-2011年)
厚生労働省委託 育休復帰プランナー(2014、2015年度)
厚生労働省「特に配慮を必要とする労働者に対する休暇制度普及事業」検討会委員(2020、2021年度)
厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル作成事業」検討会委員(2021年度)

誰もがイキイキと働ける職場作りに寄与するため、多様な働き方が可能な制度や運用、職場の意識醸成を社労士の立場から提案・啓発している。
自治体主催の研修、企業内セミナー、執筆の他、公共機関との連携による両立支援コンサルティング、顧問先の社会保険手続き・労務管理を行う。

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