学ぶ。みがく。変わる。
HOME セミナー・イベント開催レポート 【イベント報告】パラダイムシフト 新しい世界をつくる本質的な問いを議論しよう
2021.01.29

【イベント報告】パラダイムシフト 新しい世界をつくる本質的な問いを議論しよう


登壇者:ピョートル・フェリクス・グジバチ氏(プロノイア・グループ株式会社 代表取締役)
ゲストスピーカー:青野慶久氏(サイボウズ株式会社 代表取締役社長)
ファシリテーター:星野珠枝氏(プロノイア・グループ株式会社 シニアコンサルタント)

1月29日(金)、ピョートル・フェリクス・グジバチ氏の新著『パラダイムシフト 新しい世界をつくる本質的な問いを議論しよう』の出版記念HRセミナーを開催いたしました。ゲストにサイボウズ株式会社 代表取締役社長青野慶久氏をお招きし、コロナ前後の劇的な状況を踏まえ、この時代にこそ必要なパラダイムシフトとは、どのように変化のタイミングを見極めるかなどについてお話しいただきました。イベントの内容を一部ご紹介します。

まずは、星野さんからご挨拶。
現在、コロナをきっかけに「パラダイム」、この言葉が社会的なキーワードになってきているのではないかと思います。パラダイムというと様々な解釈があります。働き方が変わっていく、生き方、暮らし方、教育など生活の中で価値観、信念が刻々と変化していく。人が集まり、積み重なって一つの潮流になる。そのような中で、今私たちは大きな変化を迎えているのではないでしょうか。
本日は、青野さんをお迎えして、企業はどういうパラダイムの中でチームを編成していくのか、人と人との関わりの中で情報をどういうふうに受け取り、どんな新しい価値を生んでいくのかなどについて伺います。

セッション「パラダイムシフト-新しい世界を作る本質的な問いを議論しよう」ピョートル・フェリクス・グジバチ氏

この書籍は、私たちはどこからきて、どこに向かうのか、それを伝えるために、人生・生き方・働き方・学び方・投資について、多様な分野で活躍されている21名の方へインタビューを行い、まとめたものです。

さて、本日、本質的な問いを議論をする前に2つお願いがあります。
1つめは「好奇心を持ちましょう」ということです。業務には関係ない、同意できないということがあるかもしれませんが、好奇心を持ってください。
2つめは「集中しましょう」。人間は集中するとフロー状態、つまり夢中な状態になります。賛成できなくても、夢中になって内容や違和感に向き合っていくことは、これからの働き方や生き方の中で、必要不可欠な姿勢です。

まず「なぜ正解は間違っているか?」という質問から入ります。正解は不正解かもしれないということを頭に入れて、自分の仕事、自分の人生を振り返るきっかけになればいいです。

最近は、コロナで在宅になり、どう健康管理をすればいいかを考えるようになりました。ヨガやランニングなど新しいことが習慣になったり、栄養バランスを意識した食事をするようになったかと思います。
しかし何かを買うとき、自分の消費がどう環境に影響を与えているかはなかなか考えないようです。でも考えたら恐ろしい事実があるかもしれない。
たとえば、ウェアのほとんどはポリエステルでできています。つまり、プラスチック、石油。プラスチック、石油というと、環境問題ですね。
こういった連鎖を自分の人生で考えていく習慣はほとんどないかもしれません。環境問題や社会問題を私たち自身が作っているかもしれないのです。

会社員が働いている組織がどんな前提で動いているかはあまり考えていません。市場資本主義の常識は、「均衡のとれた仕組み」「価格は価値で決まる」「経済的合理性」に囚われているということに気づけば、みなさんの働き方も変わるでしょう。

ここで気づいていただきたいことは、「問題は解決の糸口であり、解決または問題である」こと。自分が解決しようとしている問題をさらに悪化させているか、あるいは解決策が問題になってしまっていないかということを疑っていただきたいのです。
コロナは敵だという報道が多いですが、一体何が敵なのか?人間が社会問題だけはなく、地球で環境問題を起こしているからこそ、ウイルスが増す。都市化が進んでいるからこそ、病気に感染したり、広げたりしてしまう、という見方もあるのです。
問題の質を間違ってしまうと、解決策も間違ってしまうことに気づいていただきたい。問題が複雑になると解決策が増えるんですね。分析して、問題の本質を見極めて解決策を選ぶようにしてましょう。
最近は特に複雑な問題やカオスな問題が増えています。コロナは複雑な問題です。どんなルートで感染したかわからないし、ワクチンという解決策もまだです。コロナのような複雑な問題に、明らかな問題の解決策を当てはめてしまうと、カオスな世界に落ちてしまいます。

正解は不正解かもしれない!自分の発言の裏にある意図や、裏の影響に気づいていただきたいのです。人間の行動の裏面にあるのはバイアスです。無意識なバイアスは、先入観、情報が足りない、大衆、ストレスなどで発生します。言葉を省略したり、一般化、歪曲化によって、バイアスが起きる。適度・適切なバイアスは必要不可欠ですが、バイアスが大きすぎると社会の問題に繋がります。
世代によってもパラダイムはあります。「昭和おやじの話を聞くな」というのもありますが、昭和おやじが悪いわけじゃない。彼らの努力でインフラが整ってきたのです。それらをいかに受け入れて、繋げていくかが大切です。

<青野さんへの質問タイム>本質的な問い

Q.青野さんにとって「なくしたいパラダイム」、「残したいパラダイム」「創造したいパラダイム」は何ですか?

<Answer>
わたしは昭和型の人間で、長時間労働も好きで、古い考え方にも馴染みがあります。「新入社員はまず掃除だ」「日本人にはがんばリズムがある」「根性が必要だ」というような。ですから「頑張ることが素晴らしい」という思い込みは、なくしたいパラダイムです。「頑張る」を辞書で調べると「耐える」と「努力する」という意味がくっついています。苦しみ、涙を流しながら「耐える」のは必要なのか?頑張るのをやめるとサボらないのか?サボることが本当に悪いのか?頑張りすぎて、今度は疲弊するという問題が生まれないか?など考えています。

Q.パラダイムを阻むバイアスは何ですか?「価値あること」はなんでしょうか?

<Answer>
まず、バイアスがあると気づくことが大切です。自分にもジェンダーについてバイアスがありました。母が専業主婦の家庭で育ったので、「夫が仕事、妻は家事育児」というバイアスがありましたが、妻から指摘されたこともあり、それに気づいて現在は家事も育児もしています。

パネルディスカッション

■組織としてバイアスがかかっている理由は?
それは情報不足からくるものです。たとえば、ジェンダーの話をしても、女性活躍推進や男性の役割分担の話題になりがちですが、男性女性だけではなく、LGBTQもあります。性別は実際には女性男性だけじゃないとわかっていても、見ようとしていない。性は多様で、スパッと分かれるものじゃないと理解していれば、違った角度で考えることができます。もっとたくさんの情報を共有することができれば、バイアスを外しやすくなるのではと思います(青野さん)。

■情報の平等性、公平性はどうでしょうか?
どの情報が正しく、どれがフェイクニュースなのかを見極めないと大変なことになります。情報の質が大切です。誰が質の高い情報を持っているのか、周りに自分と違う情報を持っている人のネットワークを持っていおくことが重要です。
また、経営者が情報を共有しないという問題もあります。情報の格差からピラミッドが生まれてしまいます。
サイボウズも従業員が1000人を超えたので、まさにインフォデミックです。情報を早めにオープンすることを大切にしています。たとえば、事業戦略案が決定してからオープンにすると、経緯や情報を知らないメンバーからいろいろな解釈が生まれてしまうんです。事業戦略を考え始めた頃から共有すると、どういう流れでその戦略にたどり着いたのかみんな知っているから混乱が起きない(青野さん)。

■チームや組織で同調圧力が働いた時、どんな介入をされるか?
サイボウズでは、説明責任とともに、質問責任という考えを非常に大切にしています。おかしいなと思ったら質問しなさい。後になって「実はあのときおかしいと思ってたんだよ」というのはだめ。オープンなところで議論し、できるだけ同調圧力が悪いほうに行かないようにしています(青野さん)。

■自分が欲しいものを問い続けるということでメンバーに期待していることは?
人生は有限であって、死ぬときに自分が何を手にしていると幸せだと思うのか?こういう問いが必要です。サイボウズでは、あなたは何年後に何をしていたいですか?どの場所で働きたいですか?いくら欲しいですか?など問い続ける機会をつくっています(青野さん)。

日本は、わびさびや言わない美徳などハイコンテクストの文化があります。日本の素晴らしい伝統の良さでもありますが、会社に行って、「自分はどういう仕事をしたい?」「どういう目標をたてたい?」「上司にどういう会話をされたい?」などと言わないで、何年も仕事をしていたらもったいないですね(ピョートルさん)。

■率直に欲しいものを伝えていくために、オンラインの働き方で工夫していることは?
全員在宅ワークでちょっとした雑談が失われました。雑談部屋を作ったり、ビデオ会議を繋ぎっぱなしにしたり工夫しています。グループウェアに仕事と関係ない情報を書いてもいいことにしたら、グループウェアへの書き込みがコロナ発生前の5倍になりました。ちょっとした情報も開示して、信頼関係や心理的安全性を作っていくことをデジタルで取り組んでいかないといけませんね(青野さん)。
僕は心理的安全性という言葉を2015年から広めようとしています。心理的安全性が保たれると、自分らしくいられます。さらに、意見の建設的な対立が推奨される状態になります。自分らしくだけではなく、人間らしくチャレンジしていく、お互いに高めあえる関係を作って、フィードバックや反対意見も伝えていくというのが、日系企業は残念ながら弱いんです(ピョートルさん)。

■これからの企業・組織のニューパラダイムは?
いい会社を測る指標ですね、これまでは業績などでしたが、これからは幸福という指標。その会社で働いている人が幸せなのか、というパラダイムシフトが起こるといいですね(青野さん)。
何のために会社が存在しているか疑うべき。株主が唯一のステークホルダーだという考え方をなくし、自分たちの提供するサービス・商品がお客さんの成功に繋がっているのか、どう社会に繋がっているのかを総合的に考えられる仕組みじゃないと無理だと思います(ピョートルさん)。

ご参加者の声

・パラダイム認識が経営サイドと社員間で異なるために苦労することが多かったので、無用な対立を生まないコミュニケーション方法について参考になりました。
・聞き手に解釈させない組織を作りたいとあらためて思いました。質問し易い環境作り、ニューノーマル時代の雑談タイム作りなど、チャレンジしたいと思います。
・情報をオープンにすること、建設的に議論を行える心理的安全性の大切さをあらためて分かりやすく解説いただき理解することができました。自社もこうした理解を踏まえて活動できる組織にしていきたいと思いました。
・質問責任という考えはとても新鮮でした。これからの時代には重要な考え方ですね。これからの組織のパラダイムも業績から幸福にシフトしていくのだと思います。いずれにしても正解を疑うという姿勢が大事で、コロナにより価値観が変わっていく中で、そのことは強く意識します。興味深く拝聴させていただきました。
・人事担当者としてだけではなく、一人の人間として人生における価値(自分自身の)が何なのか?本質は何か? 最近ここについて考えることが多かったため、大変共感できる部分や参考になるお話が多かったです。
・ピョートルさんと青野さんのそれぞれの視点での対談も興味深かったです。正解が不正解な時代、パラダイムを変えていく必要には共感しました。
・青野氏の「質問責任」という言葉、考え方、是非、社内に紹介したいと思いました。
・もっとも勉強が必要な経営企画部員や人事部員が、日々の業務に追われて自分の領域を広げる勉強になかなか取り組めないため、今日の資料を共有して頭を揺さぶる一石にしたいと思います。
・会社のダイバーシティを推進するうえでアンコンシャスバイアスや心理的安全性の確保の大切さを社内に展開したいと考えており、今日のお話は参考になりました。

講師プロフィール

ピョートル・フェリクス・グジバチ (ぴょーとる・ふぇりくす・ぐじばち)

プロノイア・グループ株式会社代表取締役、株式会社TimeLeap取締役。連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者。ポーランド出身。
モルガン・スタンレーを経て、グーグルでアジアパシフィックにおける人材育成と組織改革、リーダーシップ開発などの分野で活躍。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。2019年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。
ベストセラー『ニューエリート』(大和書房)ほか、『0秒リーダーシップ』(すばる舎)、『PLAY WORK』(PHP研究所)など著書多数。

お問い合わせ
facebook
pagetop