文/大西美貴
まさにVUCA時代ですね。不安定(Volatility)、不確実(Uncertainty)、複雑(Complexity)、曖昧(Ambiguity)で、何が正解かわからない。それだけに一つのことに絞るのはリスキーだと感じています。
興味を持ったことはどんどん試してみるべきだと思うんです。
今の世の中、学ぼうと思えばツールはいくらでもあり、Wワークなども可能な環境が用意されつつある。働き方の自由度はさらに高まるでしょうから、色々と試しながら自分に求められていることを見極め、絞り込んでいくと良いでしょう。
私はよく、「スモール&アジャイル」だと、お話しています。ハードが出揃い、ソフトの割合が上がっている背景を踏まえると、小さく、機敏に試して、ダメなら転換というような臨機応変な動きが必要になります。
予測不能な社会では、これまでの成功例を追いかけているだけでは成長につながりにくいかと。
マネジメントも同様に変革を迫られています。多様化していく社員を束ねるためには、これまでの管理的なやり方ではなく、関係性を重視するスタンスが求められます。いわゆる「羊飼い型のリーダーシップ」と呼ばれるやり方です。
環境を整えて、部下の長所や専門性を引き出すことでチーム力を高めていくわけです。
これまではトップからミドル、現場へという指示系統で顧客に商品やサービスを提供していましたが、羊飼い型リーダーシップの場合は逆三角形、つまり、顧客と現場から生まれた情報をミドル、そしてトップへとフィードバックして価値を生み出す双方向の流れになります。現場の情報を重視して周囲が後方支援するという構造ですね。
組織の図式でいうと、ヒエラルキー型ではなく共通基盤のルールで成り立つホラクラシー型へ。ホラクラシー型は意思決定が個人やチームに分散するので、行動のスピード化につながります。
そうですね。組織全体の目的と価値基盤ありきですが、自律と主体性が求められます。そんなメンバーを束ねるリーダーも必要です。
現場も、ミドルクラスもそれぞれ業務が忙しいだけに、とことん考え抜く機会が持てないですよね。効率を求めるとオペレイティブになってしまうし。
そういう意味では、弊社のプロセス・コンサルティング=「ワークアウト」は、受講者自らが課題を設定し、研修で学んだノウハウを使ってアウトプットする実践的なプログラムです。ゼロから徹底的に考え、主体性を鍛える機会になると評価をいただいています。
ワークアウトはがアウトプットが中心。考え方としては、タウンミーティングが発祥なのです。
そもそも、タウンミーティングは地域住民が意見を出し合って方針を決めていく地方自治の形態ですが、ワークアウトも同様に受講者を主体となって発信するプログラムです。
大きくはインプットのフェーズ、アウトプットのフェーズと、2段階で進めます。
まずは受講者自らが課題を設定します。その目標にたどり着くには何が必要でどう動くべきか。問いを置き、仮説を立て、調査しつつシナリオ化します。
その後、中間報告を経て修正を行い、課題実現に向けて戦略をまとめて、発表へと進みます。
事前に書籍や動画を見てもらって、課題設定に必要な思考を学びながら、現場で実践してみたい課題を設定してもらいます。単なる思いつきではなくイシューを見つけ、エビデンスのある課題となるよう、議論しながらしっかり練っていきます。
そうですね、最終的にはまとめたアクションプランを経営層に向けてプレゼンテーションしてもらいます。
はい、意志決定者である経営陣がきちんと答えを出すのもワークアウトの特徴です。提案の採用・不採用をその場で揉み、提案された企画を実際の事業推進部に引き継いだり、判断材料が足りない場合は追加情報を提出させるなどして具体的な答えを出してもらうところまで進みます。
実題材が多いです。業務に近い営業戦略や新規事業立案、社内のDX推進のためのインフラ整備や風土改革案などケース・バイ・ケースです。受講者のキャリアによりますが、若手の場合は3〜4人くらいのグループで取り組むことが多いですね。
いずれもそれぞれの企業の方針や現状、経営計画をもとに具体的な課題を設定することで、実際の仕事へとつなげていくのが狙いです。
すべてのプロセスで必要な思考法、マーケティングなどのノウハウを提供しながらフレームを示すなどしてファシリテーションしていきます。
実際にアクションできるように戦略に磨きをかけ、実効性を検証しながらコンサルティングします。
ときには、社内から選抜された方がメンターとしてサポートする場合もありますが、第三者的な視点があることで客観性が高まるので新たな発見も多く、より実践的に磨きをかけられると思います。
当事者が自ら考えた課題で問題意識を持って取り組むわけですから、考える力が断然変わってくる。その分実践性も高まります。
課題解決と人材育成を同時に進められるのがワークアウトの大きな特徴です。
具体的なスキルとしては問題解決やロジカルな考え方が鍛えられますし、議論を繰り返すなかで質問力やコミュニケーション力も身につきます。
プレゼンテーションの前には、ドキュメンテーションのポイントをロジカルと演習の両面からトレーニングするので、スキルはもちろんのこと、プレゼンに対する自信もつきます。
主体性が鍛えられて自信がつくのはもちろんのこと、目の付けどころや分析力も変わってきますよ。
研修期間は半年から1年と長いですが、全体を通して実践的な戦略立案、リーダーシップが身につき、経営意識も醸造されていきます。
視野の狭さに気づいて視界が広がったとか、考え方が柔軟になったなど、欠けてかけていた点が強化されたという感想が多いですね。あと、仕事に活きる外部との接点ができたとか。
ワークアウトで時間を共有した人との連隊が強くなって、風土活性につながったというお声もあります。
もう一つ、副次的ですが、採用面でもプラスになっていると伺っています。次世代のリーダー育成に積極的で、新規事業の提案の機会があると、中途採用者に響いているようですね。
多々あります。
早い方は数カ月でリーダーの資質をグンと発揮します。ワークアウトを経験して幹部クラスに昇進された方も多いです。
あるリース会社では、最終プレゼンの前にリハーサルを行うのですが、ワークアウトの卒業生が幹部役となって実感のこもったアドバイスをしてくれます。そんな風に経験が受け継がれていくのもうれしいですね。
いくつもあります。20年担当しているメーカーのIT部門では、BtoBの事業提案が多数成立しています。大手電機メーカーの商品企画チームでもワークアウトを導入していただいていたので、みなさんが目にされている新商品もいくつかありますよ。ブレイクスルーの発想と綿密な経営計画が実を結んだ結果です。
一つはトップダウンではなくミドルの現場発信で組織が動くような社風に変革していきたい会社、二つめは、次世代リーダーへの橋渡しを具体的に進めたい会社。三つめが、新規事業、新たなアイデアを出したいという会社です。
新たな発想を生むには、現場が生き生きとしていないといけないわけで。部下が動きやすい環境をつくって支援できるリーダーも必須です。
そういう意味で、課題解決とリーダーの育成を同時に行うワークアウトは、社員の主体性を伸ばしつつ、継続的に価値を生み続ける組織の改革にも貢献できる。非常に合理的なアプローチだと考えています。
なるほど、よく分かりました。
具体的なお話をありがとうございました。
三坂 健氏の「ワークアウトプログラム」を見る
その企業の次世代リーダー像に即したカリキュラムを構成し、その企業“ならでは”のリーダーを育成します。実践的なビジネステーマを題材とし、受講者が自ら戦略的な観点から課題解決を導くプログラムです。
<学歴・留学歴/その他資格等>
・慶應義塾大学経済学部卒
・早稲田大学エクステンションセンター講師
・国立沼津工業高等専門学校 アドバイザー
<職歴・前職での専門分野>
・株式会社損害保険ジャパンにて法人営業等に携わる
<主な担当実績・分野>
・大手医薬品メーカーにおける新規ビジネスモデル開発
・大手エンターテイメント企業における 課題解決リーダー育成
・大手電機メーカーにおける新規チャネル開発
・大手金融機関 財務コンサルタント育成
・IT関連会社における営業力強化支援
・大手リース会社における企業風土改革
その他、ロジカルシンキング、マーケティング、営業力強化を中心とした
トレーニング実績多数
<執筆担当書籍名>
・「マーケティング戦略策定シナリオ」(かんき出版)
・「ロードマップのノウハウ・ドゥハウ」(PHP研究所)
・「自分マーケティング!」(日本能率協会マネジメントセンター)
・「自分プレゼン!」(日本能率協会マネジメントセンター)
・「ウェイのある強い経営」(かんき出版)
・「30代までに身につけておきたい課題解決の技術」(PHP研究所)
・「30ポイントで身につく!『ロジカルシンキング』の技術」(PHP研究所)
・「印象で得する人、損する人」(PHP研究所) など
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