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育成のプロに聞く!人材育成とは

2017.10.02

空気は“読む”ものではなく“つくる”もの
芸人時代に学んだ空気づくりの極意とは(前編)

コミュニケーション・プロデューサー
夏川立也氏

年間200件以上の講演・セミナーの依頼を受ける売れっ子のビジネス・コミュニケーション講師である夏川さんは、実は元祖・京都大学卒のお笑い芸人。桂三枝師匠に師事し、あの国民的長寿番組「新婚さんいらっしゃい!」で10年ほど前説を務めるなどの経験を経た後、起業家に転身、現在は人気講師として活躍されています。ご自身の経験と心理学的な見地から分析された、その場の“空気”をつくる極意などについてお話を聞きました。前後編にわたってお届けします。

文/山岸美夕紀 撮影/榊智朗

――会社経営を経て現在はビジネス・コミュニケーションの講師として活躍されている夏川さんですが、「元祖・京都大学卒芸人」でいらしたのですよね。

はい。もともとお笑いが好きで、在学中から落語家の桂三枝師匠に弟子入りし、テレビ番組「新婚さんいらっしゃい!」で10年ほど前説を務めさせていただきました。前説というのは、収録前にお客様の前に出てお話しし、場をあたためておく役割です。

こういった中で実に色々なことを学びましたが、特に強く実感したのが、「何を話すか」よりも「どんな状況で話すか」が大事だということだったんです。

同じように同じ話をしても、その場の空気次第でまったく反応が違います。いかに自分から相手に働きかけて、笑ってもらいやすい“空気”をつくるか。常々試行錯誤していました。

その後、起業したのですが、仕事上でも芸人のころの経験がかなり活きたのです。「笑いのロジック」は、ビジネスや日常のコミュニケーションにも有効なのだと確信しました。

――その「笑いのロジック」を人々に教えるようになったのは、どのような流れからでしょうか?

最初は、「こうやったら盛り上がりますよ」、「みんな機嫌よく働けますよ」というレベルのお話しで、知り合いの会社を回ったりしていたのですが、そのうちに「営業成績を上げてくれないか」「チームビルディングをやってくれないか」といった依頼がどんどん舞い込むようになったんです。

とある大手の食材配達会社では、月に1回3時間の研修を3年間続けたこともありました。時間の半分は講義、半分はワークという形で行っていましたが、同じメンバーに提供していたので同じ内容を行うわけにはいきません。さまざまな工夫を凝らしたり、心理学などを学んで理論を補強していったりするうちに、今の内容の基盤となるものができていきました。

――年間200本以上もの依頼があるそうですが、どのような企業からのどのようなニーズが多いのでしょうか?

やはり、コミュニケーションはすべての基本ですし、その中でも“場の空気をつくる”という独自の切り口が新鮮だということで、あらゆる業種の企業様からたくさんのご依頼をいただいています。営業、エンジニア、内勤の方など職種も問いませんし、新人研修から支店長、社長、会長といった管理職まで、階層や年代も幅広いです。

――弊社では夏川さんの著書『京大卒芸人が教えるスベらない話し方』に準じて『パワー・コミュニケーション(スベらない話し方)研修』を提供していただいていますが、芸人さんのようなトーク力をつける、というハードルの高いものではなく、信頼感・安心感をもらえるようなコミュニケーションの取り方、空気のつくりかたを身に付ける、という内容ですね。

そうです。スベらない空気とは心理学でいう「ラ・ポール」がかかった状態と表現することもできます。笑いをとるためではなく、お互いの心と心の間に橋を架けるために、「笑いのロジック」が有効だということです。

「言葉自体がコミュニケーションのなかで果たしている役割は、全体のたった7%にすぎない」という“メラビアンの法則”は有名ですよね。人は、言葉以外の要素から残り93%の情報を得ているわけですから、この要素も活用して“空気をつくっていく”ことが必要です。

この空気とは、雰囲気、ムード、流れ、ブーム、ツキなどとも呼ばれ、企業のイノベーションにも関わってくるものですが、私はこれについて長年突き詰めて考え続けてきました。その結果、“空気”は、心の内側の感情から無意識に外に向かって出ているものの集大成で、より良い成果をもたらすポジティブな空気をつくるためには、相手の感情に対する意図的でポジティブな働きかけが有効だと気づいたのです。

――空気を“読む”のではなく“つくる”のですね。

ポジティブな空気をつくることで、取引先ともいい関係を作れますし、職場が明るくなって組織としてのモチベーションが上がり、成果に結びつきます。もちろんプライベートの人間関係もいいものになるでしょう。

そんな空気をつくるメカニズムが、「人は『行動→感情→空気→感情→行動』という四角形の中を回っている」という「四角形のスパイラル」です。

この仕組みは研修の中で詳しく解説しますが、この中の“行動”に働きかけることで、空気というものを生み出すことができるのです。

――実際、夏川さんの研修は、実にテンションが高くて笑いが絶えず、ポジティブな空気にあふれています。最初は堅い空気でも、最終的に、役員クラスの重鎮の方々が初対面の人とハイタッチやハグをし合う雰囲気にまで持っていかれるのを見るとビックリします。

盛り上がる空気は意図的につくれるのだということを、実体験で分かってもらえると思います。その中で、どのようにこういった空気をつくるのかというメカニズムを、心理学的なバックボーンと、自身の様々な経験を交えて解説していきます。

空気づくりというのは、ズバリ言うと“コミュニケーションのシーンの中に行動(アクション)をあえて入れ込む”ことの積み重ねなんですね。研修では、まず受講者の方々に「拍手をしてもらう」などの“プラスのアクションを一斉に”してもらい、それを積み重ねることによって、空気があたたまっていきます。

これは、研修という“非日常”の場だからこその盛り上がりですが、空気というものはどんな関係性にも入ってくるものなので、ビジネスやプライベートなどすべてのシーンに応用できます。

――夏川さんの講演・研修では、レジュメもほとんどなく、スライドもまったく使わないのが特徴的です。

求められるテーマや層によって、「土台(空気づくり)」「方法論」「実践」の3つをバランスよく入れ込んだ内容を組み立てていきますが、展開はその場に合わせたライブ形式のようになります。

芸人出身なので、笑いが取れるところは取るように、ネタの組み立てはしていますし、ワークも多いので、退屈な時間や眠くなる時間がまったくないとみなさんおっしゃってくださいます。

前編はここまでとなります。後編では、実際の研修の内容などをお聞きします。

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