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育成のプロに聞く!人材育成とは

2017.07.03

スキルだけでは人はついてこない
リーダーに必要な“心の姿勢”を伝えたい(前編)

株式会社モリヤコンサルティング 代表
リーダーシップコンサルタント
守屋智敬氏

2万人以上のリーダーに「リーダーシップ研修」を実施し、現場で起きている課題を解決する「組織開発コンサルティング」も数多く手がけてきた守屋さん。一昨年に独立した守屋さんのこれまでの歩みと、大きく変化してきている企業の課題などについてお聞きしました。

撮影/榊智朗

――まず、守屋さんのキャリアのスタートをお教えください。

大学院では、現在の仕事とは直接のつながりはない建築を学んでいました。そのときに、阪神淡路大震災で被災し、見ず知らずの方々に本当に助けていただいた経験をとおして、街が復興に取り組む中で、そこで暮らす人々の環境づくりに携わりたいと思い、都市計画事務所に入社しました。

そんなある日、駅前のショッピングセンターをつくるプロジェクトを任されたリーダーに出会いました。彼は「ここに訪れるお客様を幸せにしたい」「お客様の喜ぶ顔が見たい」という一心で本気で動いていた。その姿を見た時に、感銘をうけ、こんな風に企業で頑張っているリーダーを応援したいと感じたんです。この出来事がきっかけとなり、コンサルの世界、やがては研修講師の世界に飛び込むことになりました。

――転職されたHRインスティテュート(以下HRI)さんは、当時創業6年目くらいの時期だったのですよね。

はい。当時は、代表である野口吉昭さんをはじめメンバーは皆40歳前後で、私だけが20代。しかも皆さん10年以上のキャリアを持つベテランコンサルタント。その中で、私だけがコンサルティングの基本すら知らない素人でした。いま考えると、よく採用してくれたなと思います(笑)。マーケティングや戦略の考え方も知らない私でしたが、「何より想いが強い。想いがあればスキルはあとからついてくる」とのことで採用に至りました。実は、このときの言葉が、いまの私のプログラムの根幹となっています。やはり、意志や想いがあれば、スキルはあとからついてきますし、たとえ能力がなくてもそれをサポートしてくれる人が現れる。そういうことを最初に学ばせていただいた会社ですね。

――HRIの中ではどのような仕事をされていたのでしょうか?

入社して数年は、アンケートやインタビューなど企業の現場調査を行い、課題をまとめたうえで、責任者や経営者に報告するというスタイルの、いわゆる純粋なコンサルタントの仕事に携わりました。寝る間もなく調査報告書や提言書をつくる日々でした。

数年が経過し、会社の方向性が徐々に変化するにつれ、戦略分析や論理思考、プレゼンテーション、課題解決コミュニケーションなどいわゆる「ビジネススキルの研修講師」としての仕事も増えてきました。やがて、多くの受講者からの相談を受ける中で、スキルも大事ですが、やっぱり人って“気持ち”で動くところが大きいということを感じ始めるようになったんです。いくら論理的思考で話せたとしても、メンバーとの人間関係や信頼関係が築けていなければ、チームはうまく動きません。

そういった、メンバーの一体感を醸成するための心理的な側面にアプローチしていきたい、という気持ちが大きくなり、心理学の領域にも学びを求めるようになっていったのです。そうして、それらを取り入れた独自の「内面から変化を起こすリーダーシップ」のプログラムを提供するようになりました。

――人が動くときの「心」に着目したのですね。

はい。たとえば、「メンバーが自発的に行動してくれない」といったリーダーの悩みがあるとします。

でも、実際に彼らがメンバーに伝えていたことは、「自発的に行動しなさい」と一方的に言うだけで終わりということが実は多い。でも、それでは人は動かないですよね。

――たしかに、子どもに「勉強しなさい!」と言うだけでは、やらないどころか、やる気を削いでしまうということがあります。それに似ていますね。

そうなんです。メンバーに自発的に行動してもらうためには、「やりなさい」という声かけではなく、行動を促す働きかけやフォローが必須です。人が動くメカニズムというものを、人は意外と知らないのです。たとえそれを知っていたとしても、とっさの行動のときは意識できていないものなのです。

自分の行動の問題点に気づいていないリーダーたちからすると、自分はちゃんと伝えたのに動かないメンバーたちが悪いという「他責」になりがちです。多くの人は、悩みの原因が周りの状況やメンバーにあると思ってしまっています。「伝えた」かどうかではなく、「伝わっている」かどうかはあまり意識できていないことが多いと思います。

リーダーシップ研修では「自分の働きかけに課題があったのだ」ということにまず気づいてもらい、「少しずつ変わろう」「少しずつ変わってみたい」と思ってもらうことからスタートします。そして、自分が変わっていくことによって、周囲の人々との関係性が変わってくるということを理解してもらいます。

研修プログラムにはテキストもあるのですが、ほとんどがその場の対話の流れで作り上げられていきます。「問い」を立て、質問を繰り返し、対話をするという時間を大切にしています。問いをたてることによって、どこに変われない理由、変わらない壁があるのかということをご自身で考えてもらいながら答えを出していくというスタイルです。考えるきっかけを提供していくという形です。そのほうが受講者にとって切実な課題と向き合うことができ、腹に落ちるからです。

――人数の多い集合研修の場合でも、やはり対話形式を多く取り入れているのでしょうか。

そうです。不思議なもので、悩みには個別性があるのですが、それを突き詰めた末にたどり着いた「本質の問題」には、共通していることが多いんです。企業には組織風土や文化があります。深いところで本質的な問題を共有し、共通の課題認識ができること。それが集合研修の意義や価値を感じるところであり、1対1のコーチングとはまた違ったダイナミズムだと思います。

――新任マネージャのための「リーダーシップ研修」や、経営幹部、管理職のための「組織開発研修」、経営層や次世代リーダー対象「長期育成プログラム」ほか多くのプログラムを手掛けていらっしゃいますが、共通する内容はありますか?

はい。リーダーの思考や判断のベースにある“心の姿勢”“無意識のとらわれ”に目をむける時間を大切にしているという点は、どの研修でも共通していることです。

著書『シンプルだけれど重要なリーダーの仕事』にリーダーの心構えについては詳しくまとめたのですが、人に行動を促すための働きかけというのは、たとえば、「メンバーには同情ではなく共感の心で寄り添う」ということや、「メンバーの行動に対しては、必ず感謝の言葉でフィードバックする」など、非常にベーシックなことばかりです。

ともすれば「そんなこと知っているよ」「当たり前のことじゃないか」と思いがちですが、「では実際にできていらっしゃいますか?」と問いかけると「できていない」と答える方がほとんど。その当たり前だけれどできていないことを再認識いただき、どうしてでてきていないのかを内省していただき、最終的に「変わりたい」と思っていただくことが私の研修のゴールです。

しかし、変わると言っても、なかなか人は変わることは難しいものです。ですので、大きく変わろうとせず、足元のできることから着実に実践して少しずつでも変わろうとすることがリーダーとして成長していくために何よりも大事なんです。実際に導入いただいた企業の人事ご担当者さまや受講者の皆さんからは、受講した翌日から実践できることが多く、効果が見られたという声を多くいただきます。

――当たり前だけれどできていない基本に立ち返る、ということですね。なぜいま、基本に立ち返ることが必要なのだと思われますか?

この10年で企業の課題は様変わりしました。10年ほど前までは、企業の課題解決の手段としては何か“新しいものを外から取り入れて活かす”ということが主流でしたが、ヒト・モノ・カネが不足している現在は、“すでにあるものを最大限に活かすことが”必要とされています。その中でも“人の潜在能力”に注目した能力開発、マインドチェンジというものは、世界的な流れにもなっているのです。そこに、潜在意識というテーマは密接に関係してきます。

前編はここまでとなります。後編では、大きく変化する企業の課題や、守屋さんが取り組んでいる最新の取り組みなどについてお聞きします。

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