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育成のプロに聞く!人材育成とは

2022.05.16

2030年はパラレルキャリアの時代。
できることを磨き、できないことを補強し、
仕事の幅を広げる。

株式会社HRインスティテュート 代表取締役社長 シニアコンサルタント
三坂 健氏

2021年より(株)HRインスティテュート(HRI)の代表を務める三坂 健さん。経営コンサルティングを中心に、組織・人材開発、新規事業開発など、さまざまな支援を行う傍ら、自治体や高等専門学校への学習支援にも注力されています。コロナ以降ますます不透明感を増す社会で、いかにスキルを磨いていくか、個人、そして組織の筋力アップについてお話を伺いました。

文/大西美貴

――社会人デビューは損保会社だったそうですね。コンサルティングの仕事に転身されたのは、きっかけがあったのでしょうか。

損保会社では大手建設会社への営業を担当していました。やり甲斐はありましたが、当時は不況で建設業界も大変な苦境にあえいでいて。暗い空気の中でもどこかに突破口があるのではと、経営や企業支援に興味を持ったんです。

もともと、父が早くに他界していることもあり、限られた人生でやりたいことをやらねばという価値観もあり、コンサルティングという仕事について調べ始めました。

そこで目についたのが、HRインスティテュートの創業者である野口吉昭の本です。モノトーンが多いビジネス書の中でカラーの装丁は圧倒的に目立っていて、書籍の導入部分はフルネームで挙げられたメンバーの名前とともに感謝の気持ちがあふれていた。「これだ!」と。自分の考えていた経営がここにあると、すぐにHRIにメールを送って直談判し面接にこぎつけました。

そして2003年に入社しました。最初は経営陣の補佐的役割で、自分で担当を持ち始めたのが2005年くらい。以降は組織開発と人材育成、経営戦略のご支援、研修などを担当して、2021年の1月に代表に就任させていただきました。

――ベトナムや韓国をはじめ海外進出にも携わられたとか。

ちょうどグローバル化が叫ばれたころで、教育会社もどんどん海外へという状況でした。HRIもその機運に乗って年に一度、海外でボランティア的な支援をするという活動を行なっていたんです。そのツアーでベトナムとつながりができ、現地で学校を建設するプロジェクトを立ち上げました。政府や民間企業ともパイプがつながって2010年からダナン市で人材育成支援の事業を始めて。韓国でも2010年に会社を設立しています。いずれも道筋を作って、担当者に引き継ぎ事業化しています。海外でのビジネスは思いと力のある現地の方との出会いが要ですね。

――以前の仕事にはない「人を育てる」という点に新たなおもしろみを感じられた。

そうですね、世の中はすべて人で回っていると思うんです。経営がうまくいく、いかないも、人が育っているかで決まる。ビジネスの重要なテーマである人材育成に密接に関わりたいと。

マクロトレンドを考えても、ビジネスのファクターは物資的なものから非物質的なもの、サービス的なものへとシフトしています。ハードはもう出尽くしていて、上乗せするサービスのクオリティによって差別化できるという市場で、人に対する投資に興味を持ったというのもあります。

――近年は本も次々と出されています。

実はコンサルタントになった動機のひとつに本の執筆もあったんです。子供のときから読むのも書くのも大好きで。HRIはこれまで120冊を超える本を出版していて、入社したらすぐ書いていいと言われて(笑)。

本や文章って、じわじわとした影響力があって内的動機につながることも多いでしょう。人生のなかで、少しでも人の気づきや感動に立ち会いたいという気持ちが強くありました。

――教育だけに限らないですが、いまの世の中、コロナのこともあってますます先行き不透明になっています。

本当に予測不能です。ただ、経営では原理原則と変化対応が重要というように、根本は変わらないのかなと思っています。

人が、楽しい、嬉しいと感動する気持ち、好きとか嫌いという心の動きは普遍的にある。そこへアプローチすると人は変わっていくんです。メディアがテレビ全盛からYouTubeやストリーミングサービスに変わっていっても、素晴らしい映像が人の心を動かすという原則は変わらない。ただ、必要とされるツールや仕事の割合は変化し続けていくでしょうね。

――例えば8年後の2030年、仕事環境はどんな風に変わっていると思いますか。

リアルに思うのは週休3日になっているのではないかと。ベルギーでは今年半ばには試験的に週4日勤務制が認められる見通しですね。欧米各国は時短に前向きです。日本でもスローながら時短は進み、生産性は上がっている。今後もワークシェアが求められて、労働が均等に分散していくでしょう。

ただ、週4日働き、残り3日の自分時間をクリエイティブ、あるいは戦略的に使える人とそうでない人で、富の分配が変わってくるのが2030年ではないかと見ています。

――日々の暮らしや充実感の格差も広がっていきそうです。

自分の子どもにもよく話すんです。ひとつのことだけをやる時代ではないから、ゲームばっかりしてないで2つ、3つ、色々なことに目を向けろと。絶対聞いてない様子ですが(笑)。

先日出会った20代の青年は公認会計士で、将来、監査法人の社外役員とゴルフのレッスンプロを両立させたいと、仕事とレッスンに励んでいました。こういう若い人も出てきていますね。求められていることと趣味との両方をビジネスにするという人生設計もありだと感じました。

――まったく異なる名刺を2つ、3つ持つ人も出てくるかもしれませんね。

ある意味、一つのことに絞るのはリスキーな時代かもしれません。

オンラインやとリモートワークが進んで、学びたい人にはかつてないほど環境が整っています。平日に早く仕事を終えて、大学の講座で学ぶこともできる。厚労省もリカレント教育を支援しています。

「多動力」と言われるように、マルチに興味あることに取り組んでいくのも一つの方法だとも思います。

――昔は、「一つのことを10年やれ」などと言われましたが。

いまは色々やってみて、その上で絞っていく「試す力」が重要でしょう。単に手を広げるだけでなく絞る。試した中で深掘りしたいと思うことをどう見つけていくかが肝心です。

――これだと思うことが見つからない人も多いようです。

確かに仕事のタネを見つけていくのは難しいです。その場合、「求められること」を優先するのはどうでしょう。ふと思うと、同じような仕事が多いなと思うことはありませんか。

――あります、やりたいこととは違うけど、気づけば同じような依頼が多いとか。

それです。頼まれることが自分の強みなんです。視点を変えてそこに気づけば、得意分野が増えます。

私自身も何冊か本を書いていますが、自分の書きたいテーマと編集者が言う「三坂さんはこれ」と言うテーマが異なるときがあって、求められているなら書いてみようかと柔軟に受け取るようにしています。

時代はどんどんジョブ型になっていますから、頼られている部分を見極め、先鞭をつけて磨いていく努力が必要でしょうね。

一方で、自分ができないことに着目するのも一つの方法です。まずは、得意なことと苦手なことを仕分けしてみるんです。できることを磨き、できないことを補強するという2つのアプローチで進むと仕事の幅を広がります。

――ビジネス研修ではよく自分の「will must can」の重なる部分を見つけろといわれます。

いま自分が持っている武器は、「can」つまり「求められること」からヒントが得られるし、業務の中で磨きをかけられます。研修などでスキルアップさせるのもいいでしょう。

一方で、不得手なことは「will」がないと気づかないままになるんです。

――どうなりたいかがが分からないと、不足している点に気づかないと?

そうなんです。自分はどうありたいか、どんな風に働きたいか、どんな形で社会に貢献したいかなど、理想を考え、現状と照らし合わせることで、磨くべきポイントが見えてきます。

コンプレックスと向き合うことにもなりますが、新しい発見もあるはずです。

求められることで自分を磨く、なりたい自分に足りない部分を補う、この両面から取り組むことでフィールドを拡げることができるでしょう。

――組織としては不透明な時代に向けて、どのようなことを強化していくべきだと考えますか。

この会社ならおもしろいことができそう、新しいことができそうだというメッセージをトップや管理職が発信していかないと、人は集まってこないし育たないかもしれません。優秀な人を集めたいなら、トライアルできる環境をつくるべきです。

――優秀な人材を集め、育てるのはどの企業でも苦労の種です。

難しい課題ですよね。

人を育てる方法としては、仕組みづくりが重要だと考えています。もちろん組織の目的や方向性と重ね合わせた上の話ですが、社員の能力を引き出す仕組みをつくってしまうわけです。

――法律ができれば人は動かざるを得ないのと同じですね。たとえば長々とやっていた会議を1時間で終えるなど枠組みを作って、効率化を促しながら鍛えていくとか。

そうですね、ハードルは高いですが、リスク管理しつつ我慢もして、いかに社員をサポートしていくか。企業によってその比重は違うでしょうけど7:3くらいで、3〜4割は試させる余裕を持ち、6〜7割は仕組みによって動かすような割合が良いだろうと思います。

――三坂さんご自身は、今の会社で求められていることとやりたいことは一致していたのでしょうか。

私はどうやら人より分かりやすく物事を説明できるらしいんです。

以前はベンチャーを立ち上げて戦略的に人材とお金を集めてと、考えていたんですが、投資家を魅了するようなギラギラ感が出せない(笑)。

それよりも、いろいろアイデアを出しながらコミュニケーションをとって、人をつなげたり束ねたりして、場をつくるのが役割だろうと感じています。

――分かりやすく話すために、気をつけているポイントとは?

まずはシンプルに、相手の聞きたいことをしっかり答える。長く喋りすぎないで必要最小限の言葉にする。そして、少しゆっくり話すようにもしています。あとは、時事ネタなどエピソードを交えることが多いですね。

本を書くときに分かりやすい「例え」を出すように、伝えたいテーマに身近な出来事を結びつけるとイメージしやすくなります。

――コンサルティングをされる前から、話すのは得意だったんですか。

思えば、ベースは子どものときに身についたのかもしれません。転校が多かったもので、場に馴染もうとして、一生懸命状況を見ていたんですよ。

分かりやすく話すためには、物事を俯瞰するというポイントがあって。この場に集まった人はどういう前提で、どういう役割があって、どんな気持ちで臨んでいるのか。俯瞰して見ることで、求められていることが分かってきます。

――そうして長いところでは13年もコンサルティングを担当されている企業があるとか。

ありがたいことです。とくに次世代のリーダー育成というテーマは評価をいただいています。

単にロジカルなだけではなくパッションとセットで、情熱を持って取り組んでもらえるというお話しはよくいただきます。研修では、3時間のセッションがあっという間だったというお声をいただくのもうれしいですね。自分でも時間が長く感じる研修は受けたくないので、受講者の心根に寄り添ったスタンスを心がけています。

――時間の使い方にこだわりをお持ちだとも伺いました。

時間命(笑)。かなりこだわっています。

ひとつ挙げると、仕事は15分刻みで考えるようにしています。目標はひとつの仕事を15分で終わらせる。

――短いですね。15分だと、私は何も終わらない(笑)

そう、なかなか終わらないんです(笑)。でも、あえて挑むんです。

たとえば、原稿の確認や所感を頼まれることが多いんですが、そういうことってつい後回しにしがちでしょう。けれど、15分で終わるなら、いまやってしまおうという気持ちになります。

――空いた時間にひとつ仕事を済ませられる。

15分で終わらないことも多々あるんですが、「15分で終える」と決めると、初動が早くなるんです。「後でやろう」にならない。仮に30分かかったとしても、なぜ15分で終わらなかったのか、次はどうしたら短縮できるかが検証できます。

――なぜ15分なんですか。

スキマ時間です。15分くらいだと結構空くんですよ。教育学者の斎藤孝さんも15分あれば喫茶店に入って仕事を片付けようと仰っています。一種の効率アップの方法ですね。

あと裏技もあって、パソコンを開いたらもう作業だと捉えるんです。考えるのはその前にする。企画書でも原稿チェックでも、前倒しで思考しておけば、スムーズに作業できます。

――時間の使い方以外に、普段の生活で心がけていることはありますか。

色々ありますが、常にミーハーでいようと心がけています。

基本的に外的な刺激って、人、街、いまならweb含めて本、この3つから得られると思っているんです。街を歩いて色々な物を見て、人にあって話す。

こうしてインプットするんです。流行っている映画や映像は、コンサルだったら絶対チェックすべきだと思っています。

――では最後に、これからの目標を教えてください。

自分の強みを生かしてみなさんのご支援をすることができてありがたい仕事だと思っています。一生のうち、仕事に費やす時間は結構なもので、私自身も悩んで葛藤して、周囲の人や本に何度も救われているので、微力ながらお手伝いは続けていきたいですね。

いま、HRIとしては毎年400社近くのクライアントとお仕事させていただいて、主に大手企業が中心ですが、これからは個人も起業していく時代でもあり、投資を含めた個人へのご支援も考えたいですね。

あと非現実的ですが、映画をつくってみたいです。もちろん裏方ですよ。YouTubeで学ぶ人も増え、最近は学びと娯楽を融合させたedutainmentが注目されているし、主体性を引き出したり、何かのきっかけになるようなエンタテインメントが作れたらと。実は中学のころから映画製作には興味があるんですよ。

ぜひ実現していただきたいです。

本日はありがとうございました。

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講師プロフィール

三坂 健 (みさか けん)

株式会社HRインスティテュート 代表取締役社長 シニアコンサルタント

<学歴・留学歴/その他資格等>
・慶應義塾大学経済学部卒
・早稲田大学エクステンションセンター講師
・国立沼津工業高等専門学校 アドバイザー

<職歴・前職での専門分野>
・株式会社損害保険ジャパンにて法人営業等に携わる

<主な担当実績・分野>
・大手医薬品メーカーにおける新規ビジネスモデル開発
・大手エンターテイメント企業における 課題解決リーダー育成
・大手電機メーカーにおける新規チャネル開発
・大手金融機関 財務コンサルタント育成
・IT関連会社における営業力強化支援
・大手リース会社における企業風土改革
その他、ロジカルシンキング、マーケティング、営業力強化を中心とした
トレーニング実績多数

<執筆担当書籍名>
・「マーケティング戦略策定シナリオ」(かんき出版)
・「ロードマップのノウハウ・ドゥハウ」(PHP研究所)
・「自分マーケティング!」(日本能率協会マネジメントセンター)
・「自分プレゼン!」(日本能率協会マネジメントセンター)
・「ウェイのある強い経営」(かんき出版)
・「30代までに身につけておきたい課題解決の技術」(PHP研究所)
・「30ポイントで身につく!『ロジカルシンキング』の技術」(PHP研究所)
・「印象で得する人、損する人」(PHP研究所) など

【インタビュー】2030年はパラレルキャリアの時代。できることを磨き、できないことを補強し、仕事の幅を広げる。

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