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育成のプロに聞く!人材育成とは

2017.12.11

熱い気持ちで社会に突っ込んでいく!
人材をどんどん育てていきたい(後編)

ヤフー株式会社 コーポレートエバンジェリスト/Yahoo!アカデミア学長
株式会社ウェイウェイ代表取締役
伊藤羊一氏

「人の心に火を点ける」講演・講義を行う伊藤羊一さん。前編では、銀行マンから転職し、オフィス家具・文具メーカーを経てYahoo!アカデミア学長に就任した伊藤さんの、異色の経歴をお聞きしました。後編では、伊藤さんが様々な場所で実施している、Yahoo!アカデミアで重視しているというマインドを鍛えるきっかけを提供するプログラムなどについて詳しく伺います。

文/山岸美夕紀 撮影/榊智朗

――伊藤さんは、弊社から初の著書『キングダム 最強のチームと自分をつくる』を上梓されました。あの人気マンガ『キングダム』のセリフを通して、さまざまな講義や講演、研修などで話されている「マインド」のつくりかた、リーダーの心構えなどをまとめられています。

はい。書籍を作ることには二の足を踏んでいたのですが、『キングダム』をこよなく愛する私としては、この企画をお断りすることはできませんでしたね。

普段はキングダムのセリフを講義や講演、研修などで直接お話しすることはないのですが、昨年のYahoo!アカデミアのプレゼンテーション大会で決勝に進出したプレゼンターたちには、本書の帯にも採用されている「これが将軍の見る景色です」というセリフを贈りました。400名のアカデミア生の前でプレゼンを行ったプレゼンターたちは、擬似的に「リーダーが見る景色」を経験したわけで、この経験は後に必ず活きてくるだろうという意味で語りかけたんです。

――前編でも少し伺いましたが、伊藤さんが学長を務められているYahoo!アカデミアでは、スキルはもちろん、マインドを鍛える研修に重点を置かれているそうですね。どのようなプログラムを行っているのですか?

そうですね、当初はスキル系のプログラムとして始めたものが、実際はマインドのトレーニングにもつながっているというパターンは多いです。

たとえば、各事業のカンパニー長に来てもらって話を聞き、ディスカッションする「事業横断トレーニング」というプログラムがあります。様々な事業の中身を知り、さらにカンパニー長の思考や覚悟を学ぶ、マインドのトレーニングとしても機能しています。

また、新規事業立ち上げ、M&Aや組織統合などのケーススタディを行うプログラムもあります。実在する社内の人間を登場人物にし、経営の意思決定を討議する内容で、これもスキルを学びつつ、事業を行う人間の“覚悟”などを学ぶマインドのトレーニングにもなっています。

さらに、俳優の方を講師に迎え、舞台稽古のようなことを行うプログラムもあります。プレゼンスキルを向上させるために導入したのですが、心に染み付いた癖や垢のようなものをはがしていくことで、現在はマインドのトレーニングとしても位置付けています。

このほかにもたくさんありますが、マインドを鍛える主軸は、『Lead the self~自分を導くリーダーシップ〜』というプログラムです。

――弊社でも提供いただいている研修プログラムですね。

このプログラムは、リーダーシップを鍛えるものではありますが、リーダーシップを発揮するには、まず自分を導けなくてはなりません。そこで、「自分を深く知る」ことからはじめます。

私たちは、それぞれの経験の中で培った「価値観」が軸になっていて、その上に「志」が作られると考えています。

いきなり「あなたの志はなんですか?」と聞かれて、すぐにはっきりと答えられる人は稀でしょう。その志の軸となる“自分の価値観”を正確に把握している人も少ないと思います。

ですので、まずベースとなる「自分のゆずれない想い」「自分の価値観」をあぶりだすために、ワークショップを行うんです。

この『Lead the self~自分を導くリーダーシップ研修』では、4人くらいで1組になって、ひたすら対話をします。使用するのは、それぞれに書いてもらう「ライフラインチャート」です。これは、横軸に時間を、縦軸に幸福度をとって、生まれてから現在までの幸福度を表したグラフ。この“過去”を簡潔に表したグラフを見ながら、グループのほかの3人が「なぜここでモチベーションが下がったのですか?」「この経験を良いと感じたのはなぜですか?」など質問をしていきます。

この質問によって、質問をされる側の人は、「なるほど、あのとき自分はこう思ったから、今こういう考えを持っているんだ」などと自分が知らなかった視点に気づくことができるのです。これを、1人ずつ、4人全員が行います。

――質問する側には、ルールがありますか?

あります。「それはダメですね」とか「私の経験では~」といった意見や主張はせず、あくまでも“質問”を重ねていくことで、話し手の理解を深めていくことが原則です。

自分が質問を受けときはもちろんですが、人のライフラインチャートを通じて違う考え方や想いに触れることで、自己の振り返りにもなるんですね。

次に、こうしてあぶり出されてきた「自分のゆずれない想い」や「価値観」をもとに、“現在”の自分が大切にしているものを確認する作業に入ります。

これも、“過去”について対話したときと同じメンバーで、同じように対話を行います。シャッフルせずに同じメンバーなのは、「さっき話していたあれは、どのように影響しているのですか?」といったように、前の話の続きもできるからです。

――“過去”“現在”について語り合った次は、“未来”ですね。

はい、次の段階で「今、自分の価値観に素直に生きているか」、「変革を妨げている自分の中の壁があるか」、などを対話していきながら“未来”について考えていきます。

この頃になると、メンバー同士の理解が深まっているので、かなり腹を割った話ができるようになっています。たとえば、「マネジメントをしているが、実は心の奥底で部下たちの活躍を妬む自分がいる」など、隠れていた本心を打ち明けることも。

これは強烈な気づきですよね。気づきは自分を変革する大きなきっかけになります。

このワークは、全員が同じ価値観を共有するのではなく、それぞれの揺るがない価値観を発掘し、“志”を見つけていく作業です。ですから、ゴールは人によってそれぞれ違います。基本的に、人は自分の価値観に沿っていなければ本気で行動できないと思うからです。

――伊藤さんの研修によって“心に火を点け”られた受講者たちの生き生きした顔が印象的です。人材育成におけるやりがいを、どのようなところに感じられますか?

講義を受けて「いい話でした」なんて言われるのは全然嬉しくないのですが、「今日から自分をこういう風に変えました!」と言ってもらえると、本当に嬉しいですし、やりがいを感じますね。

また、私は色々な人の話を聴くのが好きなので、たとえば、講師として講義をしているときに、たくさんの受講者たちの人生を聞くことができて、自分の学びになる。それもありがたいですよね。

さらに、現在の活動をはじめてから、「こんな人と対談してみませんか」と声をかけていただくことが増え、同じ思いを持つ人たちとどんどんつながっていくんです。皆さん、年齢や職業、立場が全然違ったとしても、コアとなる部分ではだいたい同じことを言っているんです。「やっぱりそうか」と自分の想いも補強されますし、どんどん知見もたまっていく。それに、世の中には同じ思いの仲間がたくさんいるんだと心強いですね。

そういった中で、私が社会にもっとも貢献できるのは、今手掛けているこの仕事なんだという使命感を持っています。

今後も、きっかけを得て覚醒し、燃えて突っ込んでいく、そんな人材をどんどん社会に送り込んでいけるよう活動していきたいと思っています。

――本日はありがとうございました。

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