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育成のプロに聞く!人材育成とは

2017.05.08

“共育”によって、世界の調和を実現する
日本の人財やチーム、組織をつくりたい(前編)

株式会社HRインスティテュート 代表取締役社長
エグゼグティブコンサルタント
稲増美佳子氏

現在コンサルティング会社「HRインスティテュート」の代表取締役社長を務められている稲増さん。グローバル企業のシステム構築経験、海外の留学経験などを活かし、コンサルティング、人財育成に携わっています。そんな稲増さんおよびHRIのビジョンやミッション、プログラムについてお聞きしました。

文/山岸美夕紀 撮影/榊智朗

――稲増さんは、現在代表取締役社長を務める人財育成・コンサルタント会社「HRインスティテュート」の創業メンバーでいらっしゃいます。創業から約25年、どのような仕事をされてきたのでしょうか?

創業当初は、リサーチを含めた経営コンサルティングをさせていただいていました。市場調査、アンケート、インタビューをもとに新規事業のフィージビリティ・スタディを行ったり、既存事業を立て直す戦略シナリオを策定するといった仕事です。

しかし次第に、これっておかしいのではないか、と思うようになって。もちろん、私どもを信頼してお任せくださるというのは非常に有難いことなのですが、市場調査や生の声を聞くといったことは、本来ならその企業の社員がやるべきことですよね。戦略というのは社内で考え抜いて作るべきものであり、そこを私たちがやってしまうと、まったく人財育成にはならない。

理想は、その会社の人財が育って新規事業を創れるようなリーダーになることです。そうすれば、何度も弊社に頼まなくても済むわけですし、そういう本質的な支援ができれば、と考えて作り上げていったのが、弊社の前社長である野口が第一回のインタビューでもお話しした「ワークアウト」というプログラムです。

――魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える、ということですね。

まさにそのとおりです。クライアントのプロジェクトメンバーの方々にノウハウをお伝えして、しっかりとしたアウトプットを出せるようになるまで、私たちが伴走していく、というコンサルティングスタイルに変えていったんですね。

「ワークアウト」は、野口が中心的に、まるで天職のように行っていました。その中で、「プレゼンテーション」「ロジカルシンキング」「対話力」「マーケティング力」など、どうしてもスキルとして必要なことが出てきます。このスキルに関しては切り出しをして、書籍という形にまとめていくことにしました。すると今度は、トレーニングの需要が高まってきたので、トレーニングプログラムを作るということを中心的に行うように。これが、弊社独自のスキル系プログラム「ノウハウ・ドゥハウ」プログラムです。

弊社のミッション・ビジョンは創業当初から変わらず“企業・個人の主体性を挽き出す”ですが、スキルが身につけば自信になり、ますます「自分の可能性を信じて挽き出そう」というマインドになる、そのサイクルを生み出すことができます。

――なるほど、こうしてHRインスティテュートのスタンスが確立されていったのですね。ただ自社の利益だけを追求するのではなく、本当にクライントのためになるものを提供しようという思いは、御社が行われている社会貢献事業につながるものがありますね。

はい、現在、売り上げの一部を使ってベトナムやカンボジアに小学校を作ったり、マダガスカルの病院や学校を応援したりといったソーシャル活動も展開できるようになりました。

私たちの中には、「自分が持っているものはすべて与えられたものであり、そのギフト(贈り物)はほかの人々とシェアするべき」という“シェアリング”の精神が強くあります。

個人や自社がただ儲かればいいという考え方ではなく、ビジネスを通して少しでも社会・世界を良くしたい、という考えが根底にあるんです。給与は一定を天井とし、売り上げの一部はそういった社会活動に充てるということを理解したうえで、弊社のメンバーたちは皆、入社しています。

――ビジネスを通じて社会に貢献するという考え方は、会社を共同設立した前社長・野口氏との共通の想いなのですね。

私が考える弊社の守護神はマザー・テレサで、野口は二宮尊徳だと各々勝手に言っているのですが(笑)、価値観は似ています。

そもそも私が野口と出会ったのは、新卒で入った富士通を辞め、米国サンダーバード国際経営大学院に留学後、日本に帰国して入ったコンサルティング会社ODSでした。第一印象はお互い良いとは言えませんでしたね。野口はなんだか横柄な態度で、私はアメリカ帰りの生意気なヤンキー(笑)。

初めの面接で野口から「で、あなたなにやりたいの?」と問われ、「私は、日本人をもっと国際的に活躍ができる国際人にする教育をやっていきたいんです」と語る場面があったのですが、そのときに野口が、「そうだよね! やっぱり教育だよね!」と意気投合して。教育というものをコアにして、人を変えていくということがすごく重要だよね、と意見が一致しました。

もちろん、学校教育も素晴らしいけれど、この社会を動かしている社会人への教育も大事です。留学中にも、グローバルビジネスの世界で活躍している日本人が少ないことを感じていたので、ビジネスマンへの教育に携わりたいと思い、人財育成・コンサルティングの会社を立ち上げるに至りました。

実は、世界における日本企業のポテンシャルは非常に高く、世界をリードしていく力があるのに、本当にもったいないと思っているんです。

――日本人・日本企業はその潜在的なポテンシャルを活かせばもっと活躍できるのでしょうか。

今はインターネットの台頭、SNS の登場で、ますます世界は“小さな村”になりつつあります。どんなに企業がきれいごとを言っていても、カカオ農園で子どもを働かせている事実が明るみに出れば支持されません。本当の意味でクリーンな企業が生き残る時代になってきました。

そんな「小さな村」化した世界で新たに必要となってきた概念が、もともと島国という小さなコミュニティで培われてきた日本の思想ややり方に通じるんですね。

たとえば、1995年くらいから広まってきたCS(顧客満足度を追求する)とか、CSR(企業の社会的責任)なんて、日本には昔からある考え方ですよね。堺の商人の「売り手良し、買い手良し、世間良し」の“三方良しの精神”そのものじゃないですか。島国である日本では、変な噂が立ったら逃げようがありません。その信頼で何百年という長い間、商売を続けていくことができたんです。

MBAなんていうのも、要は“寺子屋”や”藩校“です。今米国で大流行のマインドフルネスという考え方ももとは東洋思想。そういった、海外で流行しているマネジメントトレンドは、私たち日本人が持っている理念や思想、価値観がおおもとになっているものが多いことに気がつきます。

――なるほど、SNSなどが広がることによって、日本ならではの価値観が企業におけるグローバルスタンダードになりつつあるのですね。

そうですね。弊社では、現場に競争優位性をもたらすその企業ならではの強みを「ウェイ」と呼んでいますが、これらは日本のウェイと言えます。

でも、こういった価値観・強みが、今はすべて海外から逆輸入されている。人に押し付けようとしない謙虚なところも日本人の美徳かもしれませんが、これからはもう少し「世界にシェアする」という視点を持って、自国の持つ良さ、強み、優位性を発信していくべきではないかと思います。

さらに私は、グローバルカンパニーは経済だけでなく、これからは世界の平和・調和をリードしていく存在だと思っています。

まず前提としてグローバル化は世界の調和を保つことにつながると考えているのですが、19世紀から20世紀初頭に先頭に立ってグローバルネットワークをつくって活動していたのは、やはり政治よりも自由度の高いNPO、NGO、そしてキリスト教やイスラム教といった宗教法人でした。

しかしこれからは、柔軟に多様性を受け入れ、本社を置く場所も自由である、合理的なグローバルカンパニーが世界の調和をリードしていく。“ビジネスがベターワールドを創っていく”その流れはすでにできあがっているのではないでしょうか。コー円卓会議からのダボス会議というのもまさにそういう意味合いですよね。

――たしかにダボス会議では、優れたビジネスリーダーが中心となり、世界情勢の改善に取り組んでいます。

多様性を受け入れて調和していく、対立はあっても、それを武力ではない“力”に変えるにはどうしたらいいのか。それを発信できるのはグローバル企業ですが、企業や人にその力をつけるのは“共育”です。つまり、“共育”が世界をつくっていく。

ちょっと大きな話になりますが、弊社も、そういった世界をリードする人財や組織をつくる一助になればという気持ちで、人財育成に携わっています。

前編はここまでとなります。後編では、研修の詳しい内容などをお伝えします。

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