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育成のプロに聞く!人材育成とは

2017.06.12

風土改革を実現するには
粘り強く継続する取り組みが必要(後編)

習慣化コンサルティング株式会社 代表取締役
米国NLP協会認定NLPマスタープラクティショナー
古川武士氏

「習慣化」のノウハウをビジネスに特化させた、『仕事の高密度化習慣研修』を提供する古川さん。個人の、あるいは部署全体、企業全体の働き方を効率化して「生産性を高める」ことで、結果として残業が継続的に減ることにつながるというこのプログラムは、「働き方改革」を追求する企業から多くのニーズがあります。知識だけでなく、実践を継続させることにこだわったこのプログラムについてお話を伺いました。後編をお届けします。

文/山岸美夕紀 撮影/榊智朗

――前編では、『仕事の高密度化』は、トップ層、中間管理職層、社員層のすべてのニーズにマッチする解決策だとお話しされました。

そうですね、社員個人個人が頑張るだけでなく、トップや中間管理職を変えていって、残業体質を奨励する文化などをなくし、職場のムードそのものを良くすることも必要です。そのためには、それぞれに別の角度からアプローチして、同時に改革を進めることがベストなんですね。

キーとなるのは、部課長クラスです。部課長に向けた『仕事の高密度化習慣研修』の中では、実際の社内の問題点を一緒に解決することも多くあります。

たとえば先日は、システム会社の営業部の部長・課長に研修を行ったのですが、その中で「営業というものはすぐに結果が出てくるわけじゃないから、『早く帰る』ことを言い訳にやらないヤツが出てきて、成績が下がるのは怖い」という本音が出てきました。また、彼らは現在でもすでに早く帰ることを奨励しているそうなので、「業務時間をこれ以上短くする」ことを重視してはいませんでした。そこで、「では、17時半からの1時間を部長と課長で会議を行う時間とし、生産性を高めるための戦略を練ってみてはいかがでしょう」と提案したところ、部長が「いいね、それをやろう」と即決されました。

この後、部下の社員たちにも『仕事の高密度化習慣研修』を受けていただきました。こうすることで、部課長が変えた仕組みやルールについて、理解と納得が得られ、相乗効果が生まれます。

このように、部課長の層と部下の社員層の改革を同じタイミングで走らせることができれば、非常に効果的で、企業全体を変える原動力になると思います。

――現場クラスの社員たちへの研修の中でキモとなるのが「時間簿」ですね。

はい。まず「単位時間当たりの生産性を、極限まで高める仕事のやり方」であるという『仕事の高密度化』の定義や習慣化についてお話しし、理解を深めた上で、最終的に「時間簿」に落とし込みます。

まず、大事なことのひとつに、前編でもお話ししました「帰り時間は絶対に何があっても死守する」という心構えがあります。限りある時間の中で、どの仕事をするのかを考えることが必要なんですね。それを「見える化」するのが「時間簿」です。

やりかたは簡単で、私が作ったテンプレートにその日にどのように仕事をしたか思い出しながら、そのタイムスケジュールを書き出してもらいます。こうすると、自分の仕事の仕方、無駄な点などがよくわかるんですね。

これを毎日、仕事が終わるときに5分間で記録し、次の5分間で「Keep(良かった点)」「Problem(問題点)」「Try(明日の実践)」の「KPT」のフレームワークで振り返り、その次の5分間で翌日のスケジュールを考える。業務の締めくくりに必ずこの15分を設けるということを続けます。慣れてきたら、仕事をしながら並行して時間簿をつけていくことができるようになり、前編でお話ししたように、習慣化すれば意志や根性ではなくラクラク続けられるようになります。

現場の社員の方々でやってもらった結果、提出率は93%、生産性の向上の度合いでいくと、一日平均53分も退社時間が早まったというデータが出ました。つまり1時間近く生産性が上がったということになります。

――目に見えて効果があるのですね。効果測定するにも「時間簿」はわかりやすいですね。

はい。これは、1度目の研修を受けたあとの2週間と、2度目の研修を受けたあとの2週間を比較しての数字ですから、研修を受ける前と比べればさらに生産性は上がっているでしょう。

これは、ただ早く帰ることができた、ということではないんですね。自分の一日の行動をあとから見返してみると、非常にムダで非効率な部分が多くあることに気づきます。それを、似た仕事をひと続きの時間で行う、移動時間を有意義に使うなど効率のいい働き方に改善することで、最短の時間で仕事を仕上げることができるようになるのです。

時間簿でプランを立ててみるとよくわかるのですが、会議や打ち合わせなど動かせない予定を入れた残りの枠って、実はほんの少ししかない。箱が非常に限られているということが、視覚的にわかるんですね。

すると、山ほどあるTo Doリストの中から、何を入れて何を入れないか厳選しなければならない。「箱が制限されている」状態でないとなかなかこの優先順位は決められないんです。人間って“Not To Do”を考えるのが苦手ですから。

To Doリストを箇条書きにした段階では、なんとなくできそうな気がするんですよね。でも、それを実際に上から順につぶしていったら大変な時間がかかる。それでいつも「ああ、またこんな時間になっちゃった」となるわけです。それが根本的な人間の心理ですよね。だから私は、この「高密度化」を突き詰めれば突き詰めるほど、「心理学だな」と思うんですね。

――たしかにそのとおりです。この「時間簿」の提出率の高さも古川さんの研修の特長ですね。

私の研修では、とにかく実践してもらうことに重きを置いています。

まず、研修後すぐに取り掛かってもらうため、研修が終わって席に戻ったらすぐに実践できるように、皆さんのメールにこの「時間簿」のテンプレートを研修時間中に送っておきます。

それから、数人をひとグループにして、毎日、全員がグループメールに出勤簿を送り合う体制を作ります。このとき、グループメールを作る人や時間など細かいことまで研修時間の中で決めてしまいます。

そして面倒だと感じるハードルを下げるため、たとえば最低限の出勤時間と退勤時間だけを記録するのでもいいですよ、とするんです。

これは習慣化のノウハウである「ベビーステップ」です。たとえばランニング60分が習慣化したい目標だとすると、時間がない日には「今日はやめておこう」となりがちですが、たとえば「できない日はウォーキング15分にする」とか「ウェアに着替えるだけにする」という最低限のハードルを設定することで、とにかく毎日続けるようにするんです。

時間簿も、最初は細かくログ取りするのが面倒であれば、8時から18時まで「仕事」とひと言を書くだけでもいい。これだけでも、一週間書き続けてみたら凸凹がわかるので、何か気づきがあります。そうなると自分で「もう少し細かく記録してみようかな」と思えるわけです。

――行動のハードルをとことん下げるなど、習慣化させる仕組みが満載ですね。

研修の時間だけでなく、そのあともお互いに刺激して自然な形で継続できる仕組みを作るということが、私の得意とする分野であり、このプログラムの特長です。

ですから、研修も一回ではなく2、3回と分割して行うスタイルがお勧めですし、研修も金曜日は避け、週の頭のほうで行うことを推奨しているんです。取り掛かるまでに時間が空いてしまうというのは、習慣化にとっては致命傷ですから。

時間簿の考え方というのは、特段に新しいものではないですよね。けれど、やはりこれが基本であり、この基本ができない人が多くいるわけです。それは、いつ、どのタイミングでどのようにつけるのかが決まっていないからですし、理屈はわかるが面倒、忙しいという理由もある。そして、習慣化する方法を知らない。それをお教えして行動定着させるまでが私の仕事です。

こういった改革って0か100かを求めがちですが、私は、風土改革に絶対的な必殺技はないと思っています。

同じ研修を受けても飛躍的に変わる人もいれば、ほんの少ししか変わらない人もいる。それでも、風土が変わっていくにつれて変化していく人も増えていき、それがじわじわと変革につながっていくんです。

改革は、やり始めたらやめない、ある程度、粘り強く泥臭くやり続けることで結果が出るものだと思います。そのための「無理なく続ける習慣」をお伝えできればと考えています。

――私たちも「高密度化」の考えを実践していきたいと思います。本日はありがとうございました。

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