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育成のプロに聞く!人材育成とは

2017.08.21

AI導入で生まれる心と時間の余裕で
新しい価値を創造していく(後編)

株式会社働きごこち研究所 代表取締役
ワークスタイルクリエイター
藤野 貴教氏

AIの台頭によって人の仕事が取って変わられる……人工知能時代にそんな危機感を持つ人もいるかもしれませんが、AIは悲観的に捉えるべきものではなく、人間の仕事をラクにしてくれるテクノロジーになり得るものだと、長年“人の働き方”に携わってきた藤野さんは解説します。「人工知能の進化と働き方の変化」を現在の研究テーマとし、多くの研修やセミナーを行う藤野さんにお話を伺いました。後編をお届けします。

文/山岸美夕紀 撮影/榊智朗

――前編では、AIにロボット的な仕事を引き受けてもらうことによって、人間は人間らしい働き方を取り戻す。人はラクになり、幸せになるというお話を伺いました。

はい。AIも万能ではありませんから、苦手な分野というものがあります。それはやはり、人間にしかない、身体的、感情的、直感的な部分です。これが人間の強みになります。

AIに代替できない人間の価値から考えていくと、これからの人の働き方は「AIの使い方を考え、AIやロボットに仕事を教える人」と、「人間特有の身体・感性を生かしたコミュニケーションをする人」の大きく2つの方向にシフトしていくと分析できます。

たとえば、コールセンターの現場では、顧客の問い合わせに対して音声認識して膨大なデータベースから最適な答えを見つけて自動で提示してくれるAIサービスをすでに導入している企業もあります。オペレーターは、これにより生まれる時間と心の余裕で、人間らしい対応・コミュニケーションを増やすことが可能になるでしょう。この「ヒューマンタッチ」な対応は、顧客満足度の向上と、売り上げにもつながると思います。

製造現場で言えば、今は「指示やその確認」といった業務コミュニケーションが大半を占めているかと思いますが、ここに「褒める」「励ます」「感謝する」といった感情コミュニケーションを増やすことによって、社員のモチベーションが上がり、生産性が向上することが考えられます。

――テクノロジーの導入によって生まれた時間と心の余裕で、新しい価値をつくるということは、そういうことなんですね。

このような感情コミュニケーションや、一見ムダに見える遊びの時間、成果に囚われずに行う自由な発想の時間というものこそが、AIに代替できない人間の直感的で感性的で身体的な力なんです。

しかし、実はこの“人間らしい働き方”というのは、昭和の時代においては当たり前のようにあったものなんですよね。成果主義やIT化の中でいったん日本の企業から失われつつあったそれらのものが、AIの登場でまた復活してくる。ということは、今遅れている企業でも、そのアナログ感がAI時代においては逆に強みになる可能性もあるかもしれません。

――弊社でも提供される「人工知能時代の働き方」研修は具体的にどのようなプログラムでしょうか。

まず入り口としてテクノロジーの進化や潮流を「知る」というステップがあり、さらに上級編として「使う」「作る」というステージがあります。

一般的な企業研修では、前編でお話しした、テクノロジー導入のボトルネックになりがちな30代後半から50代くらいの中間管理職の方々を中心に、「知る」から「使う」の入り口くらいまでのプログラムが主流です。

まず、現在のAIの最前線や国内外のテクノロジーに関する潮流などを知ってもらい、テクノロジー情報格差を埋めていきます。一日にわたるプログラムであれば、ここから「今の仕事の中で人間がやるよりもAIが代替すべきだと思う仕事」を、以下の3つの視点を頼りに、個人・部署のレベルで考えてもらいます。

1つ目は、この仕事、毎日同じことの繰り返し。AIに学習させられないだろうか?という「面倒くささの視点」。

2つ目は、本当は丁寧にやれたほうがいいのだが、人間がやると工数がかかりすぎてあきらめていることはないか?という「あきらめの視点」。

3つ目は、社内にはどんなデータがあるか? どんなデータをAIに学習させればいいか?という「データの視点」です。

――AIを知ったうえで、有効的な使い方を考える。AIがいっきに身近なものとなりますね。

はい。そしてさらに上級の「使う」「作る」の段階まで進めるプログラムが、テクノロジーアイデアソンの「Think to make!」というプログラムです。

今とてもご要望が多いこのプログラムでは、実際のAIに詳しい外部のエンジニアたちを加え、社員が出すアイデアに「それはこういったAI技術で対応できる」「それは今のテクノロジーではまだ実現不可能だ」「代わりにこんな方法もある」といった具体的なアドバイスをどんどん出していくという形です。これにより、「いつまでに」「どんな方法で」「いくらくらいのコストと工数をかけて進めるのか」という具体的なプロジェクトが出来あがっていきます。こうして作り上げたプランはそこで終わりにせず、実際に社内で役立ててもらうことができます。

――研修で終わらずに企業内での実践にまでつなげるのですね。具体的に実践された例は、どのようなものがありますか?

約半年の「Think to make!」のプログラムを提供したある大手メーカーの例を挙げると、製造部の生産計画、設備導入、人員計画をそれぞれ担当するメンバーが一緒になって、「採用業務へのAI活用」「社員の能力をデータ分析し、適正配置を行うタレントマネジメント」「社員からの問い合わせを受けるヘルプデスクの自動化」という3つのテーマで導入案を作り上げました。そして、コストまでを含めたその資料を役員にプレゼンしたのです。

その結果、社員と外部のAIエンジニアが協働しながら実行するプロジェクトが採用され、動き出しました。それまでAIテクノロジーに関する知識がほとんどなかった彼らが、具体的で実践的なプロジェクトを創り出し、次世代リーダーとして企業を動かしているのです。

――このプログラムから次世代リーダーが育っていったのですね。テクノロジーの知識のないところから、半年でそこまでのプロジェクトを生み出すようになるとは驚きです。

実は、私の研修の一番のポイントは、“発想する技術”「クリエイティブシンキング」なんですね。クリエイティブで人をワクワクさせる発想、人の働き方を“楽しくする”方法を生み出す技術を教えています。

大切なのは、この“ワクワク感”です。企業であれば「AIを導入しなければ遅れをとってしまう」、個人であれば「働き方を進化させなければAIに取って代わられてしまう」といった危機感を感じてもらうのも大事ですが、危機感をあおるだけでは人は動きません。その方向に「変わりたい」、「変わったら楽しそう」というポジティブなエネルギーが生まれなければ人は行動しませんし、人を動かすリーダーも生まれないと思っています。

今後も、組織開発・人材育成コンサルタントとして、次世代リーダーの育成と、すべての人が楽しく幸せに働くことができる社会づくりをお手伝いできればと思っています。

――本日はありがとうございました。

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